ロリと忍者とTSっ娘 1
どうも、性格が悪い元黒幕の小悪党です。真実を知ったレッカにぶっ飛ばされるより、顔も知らない悪の手先に惨殺される可能性の方が高くなってしまった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。コレが因果応報ってやつか。
それはさておき、帰宅して早々に困ったことがある。
「…………」
「……何で突っ立ってんだ。風呂沸いてるぞ」
ワケあって匿うことになった謎の白髪少女が、脱衣所でボーっとしたまま動かないのだ。
とりあえずタオルで軽く髪と体を拭いてから、風呂に入るよう指示を出して、彼女の着替えを持ってきたらこの有様だった。
「一人で入浴したこと、ない」
「じゃあ今まで風呂どうしてたんだよ」
「チエにやってもらっていた」
「母さんか……」
そりゃまぁ子供の入浴は保護者が手伝って然るべきだけど……ちょっと待てよ。
この場合の保護者って、もしかして俺ってことになるのか?
「おまえ、いま何歳?」
「十一歳」
「反応に困る歳だな」
頭を抱えたくなった。十一ってことは小学五年生くらいになる。それくらいの年齢ってもう一人で風呂に入る時期なんじゃないのか。
世間一般で言うロリっ娘の枠に入るのは間違いないが、温泉に行く時でも、父親に付いていって男風呂に入るような歳ではない。
小5って普通は恥じらいを持って、異性を意識し始める時期だと思うんだけどな。
「……いや、これまでの生活事情を考慮しなかった俺が悪いな。とりあえず服は洗濯機に入れて、先に風呂場いってて」
「わかった」
白髪少女が身に着けている衣服は、おそらくは母さんが買い与えたものだ。
こんなオシャレな長袖のシャツとスカートを、悪の組織の研究所で着られるわけがない。
二ヵ月ほどあのマッドサイエンティスト両親と逃亡生活を続けていたのだろうが、洒落た服を買う余裕があったという事は、意外と普通寄りの生活水準だったのかもしれない。
「……」
「どした。固まって」
「服、自分で脱いだことない」
「ウチの両親ちょっと甘やかしすぎじゃね……?」
いや分からんけど。もしかしたらクッソ壮絶な過去があって、この歳で着替えできないレベルで甘やかされても、まだまだ足りないくらい不幸な人生だった可能性もある。
でも一人で一般的な生活ができないのは、コイツ自身も困るはずだ。一応今の保護者は俺だし、他の人間に文句ばっか言ってないで、普通レベルの日常生活は俺が教えてやらないとだな。
「見ててやるから、俺の言うとおりにやってみ」
「お手本を」
「……わるい、よく考えたらスカートの脱ぎ方とか知らないわ。スマホ持ってくるから、ちょっと待ってて」
家の前で拾った名前も知らない少女を目の前で脱がせて全裸にさせるの、はたから見れば言い逃れできないレベルで犯罪チックだな。怖くなってきた。
絵面的な問題とか、俺の気持ち的な意味でも風呂の世話は女に変身した状態でやってやりたいが、今は変身解除後のインターバル時間だから無理だ。
この様子だとどうせ一回じゃ風呂も覚えられなさそうだし、手間かけずにこのままやろう。
「キィ、質問がある」
「両親と違って俺は苗字呼びなんだな……で、何?」
「キィはどうして体操着を着直したの」
「俺も脱ぐ必要はないだろ」
「入浴の際に服を着てはいけないと、チエが言っていた」
「何事にも例外はあるんだって覚えときな。お姫さま」
「れいがい……」
コイツを洗うのに俺がわざわざ全裸になる意味は無いと思う。確かに俺もずぶ濡れにはなったが、後で入れば済む話だ。
「……っ」
「おいおいおい俺のズボンに手をかけるなよ、急にとち狂ったなこのロリっ娘」
「良くないことは正せと、ユウキが」
「その親父の言葉は俺も聞いたことある。問題は何が良くないことなのかって話だ」
「服が濡れてしまうのは、悲しいことだとチエが言っていた。悲しいのは、良くないこと。このままだと、キィの服が濡れてしまう。なので」
「なので、じゃねぇんだわ。母さんが言ってた濡れて悲しい服ってのは、お前が着てたオシャレな服のことだろ。俺の体操着は濡れていいの」
「むむっ」
「お願いだから納得してください」
もしかしてこの女の子、かなり面倒くさいタイプなのかしら。
だが見た目や境遇に反して、言われたことだけに従って動くんじゃなく、割と自分の意思をしっかり持って行動してる部分はキライじゃないわ。頭を撫でてあげよう。
「へっぷし」
「あぁもう……風邪引くからほれ、入った入った」
「わがった」
お鼻もチーンってしてあげた方がいいなコレ。てか寒いなら寒いって言ってくれ。
とりあえず片手でシャワーを使い、バスチェアに座った少女に浴びせつつ、俺はポケットからスマホを取り出した。
「……シャワー、あたたかい」
「よかったな」
「キィ。質問がある」
「なんぞ」
「どうしてお風呂場に、スマートフォンを持ち込んでいるの」
温度高めのシャワーを頭からかぶりながら、こっちを振り返る少女。わっ、お湯かかった……。
「撮影? じどうぽるの?」
「逆に何でそっちの知識はあるんだよ……。そんなんじゃなくて、長い髪の洗い方とかケア方法を調べてんの」
俺の美少女モードは変身するたびに完璧で清潔な状態になるため、しっかりと女状態で髪や肌を気にしたことはなかった。
そんな偽物でただの贋作でしかない俺と違って、この少女は正真正銘モノホンの美少女なので、これからの事も考えるとこういったケアは必須になるはずだ。
「コレもいずれ自分でやって覚えるんだからな。ほら、ちゃんと前向いて」
「はい」
これからどれ程の期間この少女を世話する事になるのか、そういった多少の不安を胸中にしまい込みつつ。
少女の持つ白皙で艶めかしい肌をなるべく視界に入れないようにしながら、俺は彼女を文字通り洗濯したのであった。
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