第2話 成程…わからん

「まぁ、簡単にまとめると、幸君のお父さんから私のお父さんに親権が渡って、私のお父さんは今海外に居るから、私が幸君の面倒を見る事になったって事だね!」


 なるほど…

 でもなんで灯音あかねさんのお父さん、僕の叔父に親権が行ったんだろう?


 あの人ならもっと酷いところに渡すと思ったんだけど…


 それに、この灯音と名乗る人物も信頼できるとは限らない。

 一応警戒しておこう。



「ちょっと失礼」


「あ─」


 僕が、何故叔父に親権が行ったのか、実は全てこの灯音あかねと言う人物の嘘なのか様々な可能性を考えていると、いきなり着ていたTシャツを脱がされた。


「うわ、酷い…」


 灯音あかねさんが僕の体を見てそうつぶやく。


 僕の体には、いくつもの傷や痣、火傷のあとが浮んでいた。

 それに加えて、日本の男児とは思えない程に痩せこけている。


 すると、灯音あかねさんが指先で傷を撫でてくる。


「いっ…」


「ごめん!大丈夫?!」


 灯音あかねさんが慌ててそう言う。


「大丈夫です」


「良かった。でもちゃんと痛覚があるようで何より!

 こう君みたいな境遇の子は無痛症って言って、痛覚がしっかりと機能してない事が多いから」


 無痛症…聞いた事がある。

 確かどんな痛みも感じないんだよね…


 僕からしたら無痛症であって欲しかったよ。

 そうしたらもう少し苦しまずに済んだかもしれないのに。


 すると、灯音あかねさんが傷の手当を始めた。


「ごめんね、ここじゃこの程度の手当しか出来ないけど」


「すいません」


「すいませんじゃなくてありがとう、でしょ

 それと敬語も無し!

 これから一緒に暮らすんだから!」


「わかり…わかっ、た」


「良し!じゃあどうする?何かやりたい事ある?」


 やりたい事…

 強いて言うなら─


「─思う存分寝たい」


「えっ?そんな事でいいの?!ほら、もっとゲームをしたいとか沢山食べたいとか無いの!?」


「はい」


 それに、この人が嘘を吐いているとしたら寝ている間に事を済ますだろう。

 気持ち良く寝ている時に殺してもらった方が、心地よく死ねるだろう。


「う〜ん、まぁ幸君がそれで良いなら良いけど…」


 そう言って灯音あかねさんは、リビングの奥にある部屋へ僕を連れて行く。


 そこには大きなベッドと、クッションがいくつか置かれていた。


「ごめんね、幸君の分のベッド頼んだんだけどまだ届いて無いんだよ。

 だから私のベッドで寝ていいからね!」


 そう言った灯音あかねさんがベッドに僕を座らせる。


「え、僕は床で良いんですけど…」


「だーめ、ちゃんとベッドで寝て!」


 僕が立ち上がろうとすると、灯音あかねさんが僕を抑え込む。


 なるほど、このベッドに仕掛けが施されているのか…

 ならしょうがない。


「わかりました」


僕はフカフカのベッドの中に入る。


「寝付くまで傍に居なくて大丈夫?」


灯音あかねさんがそう言う。


「僕これでも16ですよ」


「え゛!?」


「え?」


もしかしてもっと下だと思われてた?


「い、いや、わかってたよ?」


目を泳がせた灯音あかねさんがそう言った。


「ほら、早く寝なさい」


灯音あかねさんが僕に布団を掛ける。


「それじゃ、おやすみ」


「はい」


そう言って灯音あかねさんが最大限まで部屋を暗くして出て行った。


僕は、灯音あかねさんのいい匂いに包まれていた。


「これ寝れるかな…」


そう心配になるものの、フカフカのベッドが気持ちよかったのか、気づいたら眠りについてしまっていた。

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