家族に捨てられた僕、従姉妹のお姉さんに拾われ愛されてます。

猫のストーカー

第1話 裏の…売、人?

こう君、今日からここが君の家だよ」


 僕より身長の高い女性が、こう言う。


 幸とは僕の名前だ。

 僕はこの名前が嫌いだ。


 幸せという漢字でありながら、今まで幸せなんて1度も感じたことがないからだ。


「はい、わかりました」


「むぅ、反応薄くないかい?」


「わぁ、素晴らしいお宅だぁ」


「棒読みの反応をどうもありがとう

 さぁ上がって」


 女性がそう言って、僕の背中を押し家の中へ入れる。


 俺は靴を脱ぐと、丁寧に揃えて端っこに置く。


「付いてきて!」


 僕は女性の後ろを付いて行く。


「こっちが洗面所でトイレがこっち、リビングがこっちね」


 女性が家の中を案内してくれる。


「何か聞きたい事はある?」


「では1ついいですか?」


「もちろん!なんでも答えてあげるよ!」


 僕はずっと疑問に思っていたことを聞く。


「どちら様ですか?」


 僕がそう言うと、女性はポカーンとしていた。


    ◆時は少し遡る◆


 僕は、いつもの様に日が昇る前に起き、全員分の朝食を作り、家の掃除をしていた。


 俺が廊下を雑巾で拭いていると、階段から弟の拓也が降りてきた。


「ちっ、階段の下に居んじゃねーよ!」


「がはっ」


 そう叫んで拓也は、僕の横腹を勢いよく何度も蹴る。


 理不尽だ。

 掃除をしろって言ったのはそっちだろ。


「拓也、どうした」


 階段の上から、腹の奥まで響くような低い声が聞こえてきた。


「父さん!おはよう!」


「おはよう…ございます」


 僕は、横腹が痛み、声を出すのが辛いが、言わないと更に酷い仕打ちを受けるため、踏ん張って声を出す。


「あぁ、おはよう拓也。

 それでどうしたんだ?」


 父親は拓也に挨拶を返す。

 もちろん僕には挨拶なんて無い。


「聞いてくれよ父さん!

 朝気持ち良く起きて階段降りたらこいつが居たんだよ!

 朝から最悪だ!」


 拓也がそう言うと、父親が僕の方を見る。


 僕はギュッと目を瞑った。

 いつもこういう時には、すぐに僕を殴ってくるからだ。


 だが、この日は違った。


「今日ぐらいは我慢してやれ、もうすぐここから居なくなる」


「え!本当!?」


「あぁ」


 そう言うと父親は洗面所へ向かって行った。


「よっしゃぁ!!

 だってよ!家畜ぅ!」


 家畜とは僕の事だ。

 この家で僕は人間扱いをされない。


 拓也は、雑巾を摘んで僕の顔に擦り付ける。


「あ〜あ、残念だね〜

 捨てられないように頑張ってたのにね〜

 ま、俺にとっては得でしかないけどっ!」


 拓也が僕の腹を殴る。


「あがっ」


「あがっ!だってさ!ははははは!」


 僕は殴られても反抗をしない。

 何をされるかわからないからだ。


 前に1度、反抗をした時は冷蔵庫の様に寒い場所に縛り付けられ、ベルトで打たれ続けた。


「はぁ、それじゃ、頑張ってね〜」


 拓也が嫌味ったらしくそう言って居なくなる。


 僕は親に捨てられるというのに、何も感じないし、何も思わない。


 まぁ、いつかはこんな日が来るとは思っていた。



 そうして、父親が仕事に出る時に玄関に呼び出された。


「ここまで育ててやった俺たちに感謝しながらここに行くんだな。

 9時までに出て行ってなかったら半殺しにするからな」


 そう言って紙切れを渡される。


 恐らくこの場所で裏の売人に売り払われるのだろう。


「はい、今までありがとうございました」


「ふん」


 そう言って父親は玄関から出て行った。


 父親が出て行って30分後位に、僕は指定された場所に向かった。


 指定された場所に着くと、そこは人気ひとけの無い裏路地などではなく、人通りの多い駅前だった。


 僕が、駅前で突っ立っていると、駅員さんに話しかけられた。


「君、どうしたんだい?もしかして迷子?」


 駅員さんは、僕を小学生か中学生だと思っているのか、子供扱いをするように話しかけてきた。


 まぁ、間違えられるのも無理はない。

 僕は150cm辺りしか身長が無いからだ。


「凄い痩せてるね。ちゃんとご飯食べてる?親御さんを待ってるの?」


「いえ、知り合いを待っています。」


 僕は誰が来るのかは知らないが、面倒くさいので、こう答えた。


 すると、駅員さんは少し驚いた表情をしたが、すぐに元の顔に戻った。


「本当に?ネットで知り合った人の家に行こうとかしてない?」


「はい」


「一緒に待ってようか?」


「いえ、大丈夫です」


「本当に大丈夫?」


 しつこいな。


「あっ!いたいた!」


 僕が、この駅員からどうやって離れようか考えていると、どこからか女性の声が聞こえてきた。


「ごめんね〜、待たせちゃったかな?」


 女性が屈んで僕と目線を合わせそう言う。


「………綺麗な目」


「えっ?」


「いえ、なんでもないです」


 つい呟いてしまった。


「あ、待っていた人が来たようだね」


 駅員さんがそう言う。

 すると、駅員さんに向かって、女性が深々とお辞儀をする。


「すいません!ありがとうございました!」


「いえいえ、迷子とかじゃなくて何よりです

 それでは」


 そう言って駅員さんは駅の方へ戻って行った。


「ふぅ、さぁ行こ!」


 そう言って女性が僕の手を引く。



 ◆こうして現在に至る。



「あれ!?自己紹介してなかったっけ?!」


「はい、ただ「さぁ行こ!」としか言われてません」


「いや〜ごめんごめん、じゃあ改めて、私の名前は山崎やまざき 灯音あかね、22歳。気軽に灯音で良いよ!

 幸君とは従姉妹で最後に会ったのは…幸君がまだ赤ちゃんの時…かな」


 僕に従姉妹が居たのか…

 初めて知った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 読んで下さりありがとうございます!


 しばらくこっちを更新していこうと思います。

 よろしくお願いしますm(_ _)m

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