番外編 大統領と王子のエロい生活
薄い胸の上でカイ王子の顔が揺れている。心臓部の上にある痣を、時折掠めながら舌が肌の上を這った。
「ねぇシルビア。下着のサイズ上げた方がいいよ。痕ついちゃってる。ちゃんと食べてるんだね、肉付きが良くなったみたい。」
「ちがっ・・・太ってないしっ」
「えー?そうかなぁ?だってホラ、こんなに膨らんだよ?」
「ひっ・・・!」
「反応良くなったね・・・まあ、元々シルビアは感じやすいタイプだったからかな。・・・ふふ、俺が開発しちゃった。」
嬉しそうに含み笑いをして、また肌の上を軽く齧った。その度に震えて反応するのが面白くて仕方がないみたいに。
シルビアの片脚にショーツがひっかかったままだ。ストッキングがくるくると丸められてドーナツみたいにされ、ベッドの下に放り出されている。
ベージュのスーツはきちんとハンガーに掛けられて、クローゼットのドアに吊るされていた。
王子が動く度に、いやらしい音が部屋に響く。
「サッシャ、音、いやだ、恥ずかしいから。聞こえないようにして。」
「恥ずかしいから、いいんじゃない。」
「いやよ、恥ずかしい」
「恥かしがるあんたを見てると興奮すんの、俺。」
「悪趣味っ」
「普通だろ。女房の可愛いとこ見て滾っちゃうの、どこも変じゃない。」
「いやだってば、駄目」
「いーの。」
体の奥の、秘められた場所をいじられ、高い悲鳴を放った。
「大丈夫大丈夫。・・・奥さんは上手だよ、すぐに気持ち良くなる。」
指の腹をこすり合わせるようにそこを刺激され、全身が揺れる。下半身に痺れが走った。
「だめ、そこ、本当にだめっ・・・!」
半泣きで訴える。
顔の上に引っかかっている下着が取り払われた。視界が開けた、と思った瞬間目の前にあったのは、若い夫のドアップの顔で。唇が唇に重なる。肉厚な舌が口の中を蹂躙していくと、全身から力が抜ける。
「ん、んー・・・」
「んー、可愛いよシルビア。ほんっと俺のキスに弱いよなぁあんた。・・・ああ、もう、泣いちゃってる。よしよし、いい子だね。」
「ないてなんか・・・」
「いいじゃん、気持ち良くって泣いても。こういう理由で泣くんだったら嬉しいじゃん。俺に縋りついてくるみたいでさ。あんたが俺の事離したくないんだって感じられて、大好きなの。」
「・・・だって、本当、だもの。」
「うん?」
吐息にようやく声を混ぜたような、かすかなシルビアの声音だ。
「あたしサッシャが大好きだもの。離れたくないもの。・・・あたしの身体がそうするのは、あたしの心がそうしてるのと同じよ。」
普通の夫婦みたいに一緒に暮らせなくても。
いつも離れていて、思い通りに会えなくても。
それでも本当はいつだって一緒に居たいと思っているのだ。離れていても、いつだって会いたいと願っている。寂しい思いをさせていないかと案じる心は、実は自分が寂しいから産まれる気持ちだ。ただいつもそれから目を逸らして、平気な振りをしているだけだ。
呆気にとられたような顔でカイ王子が金色の眼を丸くする。
「・・・サッシャ・・・?」
「もう、シルビア、あんたって本当可愛い事を言う。もう、今日は俺ゴムなしでしちゃうからね!」
夫が珍しくも赤面している。彼が恥かしそうに言いながらも、慌てて服を脱ぎ始めた。
シルビアには、どうして彼が慌ててるのか赤面してるのか、不思議だった。
「いいよ・・・?だって夫婦じゃない。今までだって、別にかまわなかったのよ。」
「あんたまだ妊娠したくないかと。」
「そんなこと言ってないわよ?サッシャの子供だったらさぞ綺麗な子だろうなって想像したりしたわ。」
「それ、先に言ってよ。」
なんとも情けない声で、けれどもとても嬉しそうに王子が言い返す。
「だって貴方ってば言う間もなく始めちゃうんだもの。」
それはそうだった。
でも、そこは責めないで欲しい。若い夫である王子は言葉にせず思う。
色々話してしまうと、年上の妻に拒絶されるような気がして、つい性急になってしまうのだ。何かしら言い包められ、タイミングを失ってしまうのが怖い。
早く自分のものにしたくて焦ってしまうのは若さゆえなのか、それとも年下だからこその負い目なのか自分でもわからない。
裸になってから、王子が再び覆いかぶさりこめかみに軽くキスをした。
「行くよ・・・?」
柔らかく耳元で囁く。
カイ王子の身体がすり寄ってきて、シルビアの手がすぐに届き、安堵した。
「やっぱ、ナマでやるのって・・・サイコーだね。」
呼吸を整えながら耳元でそんな事を言う。上から覆いかぶさって抱きしめてきた彼を、両手で抱きしめ返す。
「うん・・・あたし、嬉しい。」
「俺も。」
彼女にぴたりと自身を添わせて、王子はにっと笑って見せた。
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