小さくなったはなちゃんの願望
「まあ……!」
「本当に小さくなっちゃたんですか……!?」
小さくなったはなちゃんを前に、ロゼちゃんとルナちゃんが目を丸くする。
「一体何事だ!?」
「こ、これは……!」
そこへ駆けつけてきたプレアデスの領主様とベイルガードさんとワイツ君も、驚愕で言葉を失ってるようだった。
「実はその――」
後からやってきた三人にも僕から事情を説明すると、大人二人はあごをなでて神妙な顔に。
「ううむ、まさかそのような不思議なことが起こるとは……」
「はなちゃん殿は本当に不思議な存在であるなあ」
一方ロゼちゃんとルナちゃんは、小さくなったはなちゃんとじゃれあっていた。
「うふふ、これなら前よりももっと間近で遊べますわ」
「小さくなった姿も可愛いです~!」
「ピャオ」
二人に遊んでもらえてはなちゃんも心底嬉しそうな様子。
「もしかしてはなちゃん、このために小さくなりたかったの?」
「ピュオ」
小さくなったはなちゃんの即答に、僕はなんだか可笑しくなってしまった。
するとここで腕をグリグリと回しながらはなちゃんに歩み寄ったのはワイツ君。
「へっへーん、今のお前になら負ける気がしねえぜ!」
「ちょっと待ってワイツ君、もしかしてはなちゃんにケンカを売る気!?」
あたふたとしてしまう僕をよそに、ケンカを売られたはなちゃんはちんちくりんな鼻をブンブン回してやる気上等って感じ。
「ピゅロロロロ……ピャオオン!」
「うひゃあ!?」
その突進をまともに受けたワイツ君が、一メートルほど吹っ飛ばされて尻餅をつく。
「痛っつ~! なんだよお前、チビになってもつえーのかよお!?」
「ピャオ!」
「小さくなったからってはなちゃんに喧嘩を売るからそんなことになるんですよ、ワイツくん」
「うう~」
小さなはなちゃんに抱きつくルナちゃんの冷ややかな目に、ワイツ君もぐうの音が出なかった。
「ははは、ワイツよ。自分よりも弱そうな者に喧嘩を売るのはどうかと思うぞ」
「父ちゃんまで~!」
ベイルガードさんにたしなめられてムキになるワイツ君に、みんなはどっと笑う。
どんまいワイツ君。
するとはなちゃんが僕の足元にすり寄ってきたんだ。
「ピュロロロロロ……」
「そっか、はなちゃんもこうして甘えたかったんだね」
すりすりと身体を寄せて甘えるはなちゃんを、僕は優しくなでてあげる。
この世界に来てからこのかた、はなちゃんもずっと頑張ってきたもんね。
「そうだセッタちゃん、ブルーマッシュとレッドマッシュをもう少し分けてくれないかな?」
「いいですけど……」
「ありがとう、セッタちゃん」
そんなこんなでブルーマッシュとレッドマッシュを分けてもらったところで、僕たちはヒアデス村のとある民家に一晩泊めてもらうことになった。
「小さくなったから一緒に入れるね」
「ピャオ!」
嬉しそうに鼻をあげるはなちゃんに、僕は微笑ましくなってしまう。
「それじゃあまた明日~!」
「うん、ルナちゃん。また明日!」
女の子のルナちゃんたちが別の民家に向かうのを、僕は笑顔で手を振って見送った。
簡素な夕食をご馳走してもらった後、僕ははなちゃんと一緒にベッドに入る。
「こうして一緒に寝るのもいつぶりだろうね」
「ピュオ」
この世界に来るまではぬいぐるみだったはなちゃんをいつも抱いて寝てたっけ。
そう思うとなんだか懐かしいな~。
「お休み、はなちゃん」
「ピャオ」
そうして僕は小さなはなちゃんを抱いて眠りについたんだ。
翌朝、僕は一緒の部屋で寝てたワイツ君の驚く声で目を覚ます。
「な、何だよこれえ!?」
「ん……どうしたのワイツ君? ――ええっ!?」
寝ぼけ眼を擦っていたら、僕の目に信じられない光景が飛び込む。
元の大きさに戻ったはなちゃんが、部屋の真ん中で佇んでいたんだ。
「ブロロロ……」
「どうしたのはなちゃん!?」
居心地悪そうな感じで身体を揺らしながら喉を鳴らすはなちゃんに、僕は口が開いて塞がらない。
「どうなってんだよこれ! はなちゃんの奴、小さくなってたんじゃなかったのかよ!?」
ワイツ君の言うのもごもっともだよ、だって昨日の夜は確かにはなちゃんも小さかったもん。
僕たちの騒ぎで駆けつけてきたのは領主様とベイルガードさんだ。
「一体何事だ!? ――これは……!」
「まさかはなちゃん殿が一晩で元の大きさに戻ってしまうとは……」
部屋の中で突っ立っているはなちゃんに、領主様たちも口をあんぐりと開けている。
「なんでこんなことになっちゃったんだろう……?」
「もしやあのキノコの効き目が一晩で切れるものだったのでは?」
「そういうこと、なのかな~」
領主様の推測を受けて僕はあごをなでて納得。
あのブルーマッシュの効き目が切れると元の大きさに戻るんだね。
だけどもし布団ではなちゃんを抱いてる最中にキノコの効き目が切れて元の大きさに戻ってたら……、想像するだけでぞーっとしちゃうよ。
……今のはダジャレじゃないからね?
「しかし困ったな、これでははなちゃん殿を部屋の外に出せないぞ」
「そっか! このままじゃはなちゃんが部屋から出られないんだ!」
ベイルガードさんの発言に、僕ははっと問題に気づかされてしまう。
部屋の扉ははなちゃんがくぐれるほど大きくないんだ。
オロオロしてたらワイツ君が腕を肩に回してこんなことを言い出す。
「あの青いキノコをもう一回そいつに食わせればいいんじゃねえの?」
「あ、そっか」
そうして借りてるもう一度ブルーマッシュを食べさせて小さくなったはなちゃんと一緒に、僕たちは外に出た。
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