第2話 魔術の大会とは

「聞いたよ。君たち今度、子ども魔術大会に出るんだって?」 


 魔術の大会は自分の腕を試す、とてもいい機会だ。

 え? それでその大会のことについて僕に質問しに来たの? 


 なんだ、『競技魔術大会』に出るのは初めてか。じゃあ、説明するね。


 魔術の大会は、己の術を競い合う魔術師達によるトーナメント方式。一対一か、二対二の対戦だ。

 そして試合の内容だけど……これは知ってるね? 


 競技用の広いフィールドをはさんで向かい合った魔術師達が、魔術を撃ち合って対戦相手を倒す。ああ、倒すって言っても命をとったり、気絶させたりするわけじゃない。


 魔術師の前には、それぞれ『シルド』と呼ばれる透明な防御壁が張られている。

 そして相手の前に張られたシルドを先に破壊した魔術師が、その試合の勝者だ。だから例え負けてもケガをしたりはしないから、全力で相手にぶつかるといい。




 切れかけた電灯がチカチカと照らす教室。

 年若い先生は、集まった十数人の子ども達を相手に軽快に講釈を続けます。


「そうやってトーナメントを勝ち進んでいけば、栄えある優勝カップを手にすることができる。うん、君たちにもできるよ。初めての大会で緊張すると思うけど、優勝目指して頑張って。僕も応援しに行くよ」


 しかし得意げに話し終えた先生に、生徒の一人は禁断の質問をしました。


「ねえ、先生。先生はいつ魔術の大会に出るの?」

「え?」

「子ども魔術大会と一緒に大人の魔術大会が開催されるけど、先生は出ないんでしょ? 魔術師のくせに」

「……あ、ああ」

「おい、エリー。魔術師のくせになんてやめてやれよ。先生は魔術の修行中なんだ。優勝できるようになるまで大会には出ないんだよ」

「ふええ。意識が高いんだね」


 瞳を輝かせる子ども達の話を聞く先生は、


「あっはは……僕のことより、みんなは自分達の大会に集中して。じゃあ今日はこの辺で。気をつけて帰るんだよ」


 ひたすら苦笑いで生徒達を送り出します。

 はーい、と教室を去っていく子ども達。

 先生はホッと胸を撫で下ろしかけて、そして、


「ねえ、先生。今度の大会にはスオウも帰ってくるんだよね」


 帰りがけの子どもの一言に、口を半分開いた笑顔のまま固まったのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る