――アカネ――

 目を覚ましたとき、世界は恐ろしいくらい瑞々しがった。


 私は確かに死んだはずなのに。


 気が付き、目を開いたとき、目の前に広がる光景はものすごく明るく世界のすべてが細部まで手に取れるんじゃないかというくらいはっきりとした輪郭を持っていた。


 ……ヒロト。


 大好きな彼の名前を呼ぶ。


 だけど、返事はなかった。


 目に見えるものはものすごくはっきりしているのに、音がなかったのだ。


 ぼんやりとした、青い光をたどりながら進んでいく。


 ああ、どこかで見た光景にそっくりだ。


 そう思ったとき、いても立ってもいられなくなる。


 涙が溢れてくる。


 大きな熱い雨粒が、自分の目からこぼれ落ちる。


「……ヒロト」


 もう一度、彼の名前を呼ぼうとしたとき誰かの声が聞こえた気がした。


 私は、青い光をたどりながらその声の方へ向かった。

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