駒子の茶室-3
飛び石は三畳ほどの建物に続いていた。
「
「お客様が身なりを整えるところですから。お荷物を置いていただくところですし、それなりに広さも必要でしょ。一つの部屋を区切って寄付と
寄付は茶事に来た客が、茶事には不要の物を風呂敷に包んで置いておいたり、足袋に履き替えたりと身なりを整えるところだ。
寄付を抜けると、屋根付きのベンチのような建物がある。屋根には瓦が敷かれ、板の壁には四角い窓が開けられている。壁は黒ずんでシミが滲んでいた。
「腰掛け待合もいかにも古くてお客様に失礼でしょ。」
駒子が眉をしかめる。身支度を調えた客人が、
駒子の茶室の蹲は一抱えほどの大きな石をくりぬいて作られている。竹を斜めに切り落とした水道から水がちょろちょろと流れ、波紋を作っている。苔むした石が水に濡れて清々しい。
「蹲は、このまま使いましょう、師匠。」
涼真が、ねだるように言った。ふっと、駒子の頬が緩む。
「そうやね。あんたらよく、ここで水遊びしてましたね。その思い出が残ってますからね。」
美葉は上目遣いに涼真を盗み見た。社長クラスになると、遊び場が茶室になるのかと感心する。
その時だった。
駒子の、小さな身体がぐらりと揺れ、人形のように倒れた。
美葉の脳裏に、母の血の気を失った足が浮ぶ。
「師匠!?」
涼真が駆け寄り、駒子の肩を叩く。何度も名を呼び、口元に耳を付けて呼吸を確認している。
「美葉ちゃん、救急車呼んで!」
叫ぶ声が聞こえたが、意味が頭に届くまで時間が掛かった。
「早く!」
その声でやっと我に返り、鞄からスマートフォンを取り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます