駒子の茶室
駒子の茶室-1
呆気にとられていると、いつの間にか車を降りた
どうしてここに、と問いかける前に女性の声が涼真を呼んだ。
「今日は、無理言うてすいません。早速お越し下さってほんまにありがたいことです。」
七十を越えていると思われる駒子は小柄ながら姿勢が良く、流石に
駒子は
「あら、
「今日は、駒子さん。」
美葉は丁寧に頭を下げた。少しでも行儀が悪いと、こっぴどく叱られる。
でも、なんの用事だろう?問いかけるように涼真を見上げると、あ、と小さく声を上げた。
「大切な話をしていたら、肝心なこと伝え忘れたな。師匠が茶室を建て替えるので、美葉ちゃんに設計をお願いしようと思ったんや。」
「茶室ですかぁ?」
応じた自分の声が頼りない。駒子が鋭い視線を投げてきた。
「設計を担当してくれはるの、美葉さんやの?涼真さんじゃなく。」
「ええ、もう僕はデザイナーの座は美葉さんに譲りましたので。」
駒子は明らかに不満そうな顔をした。
「茶室には、色々な決まり事があるんですよ。茶道に精通してはる涼真さんやったら、安心してお任せできると思ったんですけど……。」
分かっているから、声が頼りなくなったのだ。でも、自分も茶道を五年あなたのところで習ったのだと言いたい。
「改めて、お勉強をさせて下さい。設計をさせていただいたら、きっと茶道の腕も上がると思いますので。」
両手を身体の前で合せて、頭を下げた。
「僕からも、どうぞよろしくお願いいたします。家の看板娘を仕込んでやってくださいな。」
涼真も隣で頭を下げた。
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