スペースデザイン事業部
スペースデザイン事業部-1
カフェの階段を上がると無垢のフローリング資材のショールームが現われる。オフィスはショールームを突っ切った奥側にある。修学旅行の時、初めて古材を見た場所だ。今はショールームとオフィスは壁で仕切られている。
ここが、「スペースデザイン事業部」。
無垢のフローリングと古材を中心に建築用の木材を卸す木寿屋では異質なチームかもしれない。木寿屋の取り扱う資材を使ったリフォームや注文住宅のデザインを請け負う部署だ。
「おはようございます!」
オフィスのドアを開ける。
スチール製の机が、五つ並んでいる。
すでに
木寿屋の本社は桂川沿いにある。観光地である石塀小路のこのオフィスは、社長の
美葉は高校を卒業してすぐに木寿屋に就職した。仕事をしながら独学で建築デザインを学ぼうとしていた。しかし、入社してすぐに独学では限界があると悟り、通信制の美術大学で建築デザインを学んだ。
見奈美は美葉と同じ通信制の大学に今年から通い始めたのだ。
「美葉、制服通勤は百歩譲って良いとしてもやね、メイク位してきなさいな。社会人としてのたしなみやで。」
そう言って眉をつり上げるのは
「お願いしまーす。」
美葉は佐緒里に姉のような親しみを感じていた。鞄からポーチを抜き出すと、キャスター付きの椅子を足で漕いで行き、佐緒里の前に顔を差し出す。佐緒里は肩をすくめて美葉のポーチからメイク道具を出し、ちゃっちゃと手を動かした。
「そんなんは、家でしてこんか。」
「だって、佐緒里さんにしてもらう方が確実に早くて仕上がりも良いんですもん。」
片倉には小言を言われなれている。
片倉は美葉と同期入社だが、その時すでに十年の職歴があった。保志の知り合いらしく、スペースデザイン事業部立ち上げにあたり、スペースデザインの実務と美葉の教育を請け負うことになった。今では、美葉もプロとしてデザイン部門で働いているが、未だに未熟者扱いをする。
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