第1話 心に決めた人ー3
早速、
正人の顔に画面が切り替わる。正人はひきつった笑いを浮かべていた。押し寄せてくる女性達にタジタジと後ずさりをしていたが、おもむろに後方にひっくり返る。持っていたシャンパンが顔にかかった。
「あーあー」
そう言いつつ、皆が笑う。差し出されたハンカチで顔を拭く姿が、やけに可愛く見える。
男性のお笑いタレントが長い髪の女性を呼び出していた。
「今のところ、誰がお気に入りですか?」
タレントに聞かれ、女性がはにかんだ笑みを浮かべる。
「正人さんかな。綺麗な顔とおっちょこちょいなところがギャップがあって素敵。でも、悠人さんも素敵です。完璧で頼りがいがあって」
女性のコメントが、番組の演出意図を明らかに反映していると美葉は思った。正人の転倒をわざと映すことで容姿とのギャップを際立たせる。そうすると、悠人の爽やかさで頼れそうな姿が対照的に目立ち素敵な人物に感じさせるのだろう。
「正人はテレビで見ると十倍おもろいな」
保志はそう言いながら缶ビールをグビグビと飲んだ。
陽汰が壁にもたれている。その隣に、背の高い女性がやってきた。モデル顔負けのスタイルの良さだ。小さな顔を黒髪のショートカットが縁取っている。大きな瞳の綺麗な女性だが、陽汰に話しかけること無く、隣の壁にもたれてスマートフォンを触りだした。
二人並んで、スマートフォンを触る姿はとても奇妙だった。おもむろに二人はお互いのスマートフォンを翳し会い、またそっぽを向いてスマートフォンを操作し始めた。
「どうやら、LINEでお話ししているようですね」
男性タレントが、小声で言い陽汰にマイクを向ける。陽汰はくるりと後ろを向いた。その向こうに、健太が女性に声を掛けている姿が映っていた。
画面がいったんスタジオに移り、出演者達のコメントが流れる。
「健太、ぜんぜん映ってないじゃん」
「……こっからじゃね?」
健太は憮然とした表情で答える。
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