105話 特別な武器
ピピピピピ!
ピピピピピ!
時空間にタイマーの音が鳴り響く。
外の時間で7時間、中の時間で2日と22時間が経過した事になる。
「ん、時間」
クロエが時空間の扉の元へ向かい、扉を開いた。
この扉が開くと時間経過は外と同じになる。
「みんな、一旦特訓を止めて外に出る!」
クロエの掛け声で、全員時空間から退室していく。
そして誰も残っていないか確認して、クロエは扉を閉じた。
「ん、取り敢えずは7時間お疲れ様。みんなしっかり休息を取って、明日は朝の9時から夜の7時までやるから、そのつもりでよろしく。解散」
猫人族のみんなも各家へと戻っていき、俺達もミツキの家に転移するのだった。
ミツキの家に戻り、玄関を開くとミツキとヴィーネが出迎えてくれた。
「コウガさんに皆さん、おかえりなさい!お疲れ様でした!」
「ありがとうミツキ、取り敢えず2日と22時間ほど頑張ってきたぞ」
「皆さんの顔を見たら分かります、凄くくたくたそうですから」
俺が見ても分かる、クロエ以外のみんなの顔がもう疲れたって顔をしていた。
「夕飯の準備が出来ていますので、食事に致しましょう。お風呂もいつでも入れるようにしていますので」
「ヴィーネもありがとう、有難く入らせてもらうよ」
「はい。ではコウガ様、お風呂後でもいいので少々お時間貰えますか?」
「ん?何をするんだ?」
「エリアヒールの伝授をしようかと、お時間は取らせませんので」
「分かった、頼むよ」
「かしこまりました」
エリアヒールの伝授してもらう約束をして、みんなで夕飯を頂いた。
そしてお風呂なのだが……今日は珍しく女性陣と男性陣と分かれてお風呂に入る事になった。
ーーーーカエデ視点ーーーー
今日は女性陣でお風呂、私はいつも通りご主人様と入るんだとばかり思ってたんだけど……ミツキさんがご主人様に話があるって言うから分かれて入る事になっちゃった……少し残念。
「ママー、身体洗ってー」
「はーい、じゃあ終わったらママの背中もお願いね」
「ん!」
シェミィの身体を綺麗に撫で洗いしていく。
ご主人様曰く、猫の尻尾も敏感で付け根は特に刺激が強いから気を付けるようにと言われている。
「んっ、ママも上手」
「ありがとうシェミィ、はーいバンザーイ」
「バンザーイ」
脇も洗い残しがないように、しっかりと洗う。
「いやー、カエデもママらしくなってきたっすね」
「そうかな?」
「そうね、最初に出会った頃は普通の少女って感じだったもの」
あー、村から逃げて来た時の話ね。
そう言えば、あれからまだ1ヶ月くらいしか経ってないよね、あっという間だったなぁ……
「そうっすね!あんなに傷だらけだったのはびっくりしたっすけど……思えば、自分達の繋がりってあれから始まったっすよね」
「だね、あの後すぐにご主人様とも出会えたもんね」
「コウガ様がまさか空から落ちてくるとは、びっくりしたわよね!」
「確かにね!」
初期奴隷組でワイワイと話していると、セシルちゃんとレインさんもこちらの会話に入ってきた。
「皆は似たような時期に出会ったのか?」
「そうっすね、本当に数日違いでみんなと出会ったっす。ご主人の奴隷入りしたのは割と時期が違うっすけどね」
「そうなのね。そう言えば貴方達の成り行きは武闘会前に聞いたけど、そっちの主様との成り行きは聞いてないわね、良かったら教えて貰えない?」
「いいよ!じゃあ私からね!」
私から始まり、シェミィ、メイランちゃん、ソルトちゃん、セシルちゃんの順番で成り行き発表会をするという、ちょっとした女子会になるのだった。
ーーーーーーーー
女性陣がお風呂に入った頃合いを見て、俺は錬金室にお邪魔していた。
「コウガさん、まずはこれを持ってみてもらえますか?」
そう言って手渡して来たのはナイフだった。
「俺の武器か?」
「はい、まだこれは試作段階ですが、握った感触や重さの違和感がないかどうかも確かめて欲しいんです」
「了解」
ナイフを逆手で持ち、数回振りかざしてみる。
「うん、軽過ぎず程よく重みがあるから振りやすいな」
ナイフを回転させて通常持ちで突いてみたり、放り投げてキャッチしてみたり、色々な想定をしながら使用感を確かめた。
「良い感じだ、これくらいの差の違和感ならすぐ慣れると思う」
「なら良かったです、それともう1つ仕込んだ物があるんです」
「というと?」
「この世界で現状最も硬いと言われるデライト鉱石と言う物がありまして、それを使ってナイフを作ったのですが……この鉱石は凄く魔力を通しやすいのと、魔力吸収効果もあるんです」
「魔力吸収効果?」
「はい、魔力を吸収しナイフ内に溜め込む事が出来るんです。これに俺が仕掛けを組み込み、溜め込んだ魔力やコウガさんがいつもやっている風魔力を、ナイフ内外で循環出来るように作りました」
魔力を溜められる、そして循環させられる……
っ!?まさか!?
「……属性武器に、なりえる!?」
俺がそう言った瞬間、ミツキがニヤっと笑みを浮かべた。
「嘘だろ、もう完成したのか!?」
「いえ、まだ試作段階ですが……これがちゃんと完成すれば、革命は間違いないですよ!このデライト鉱石は今まで加工が不可能と言われていましたが……神から授かったチート級錬金で頑張りましたよ……!」
まさかここまでしてくれるなんて……
「凄いぞ!ありがとうミツキ!!」
俺は思わずミツキに抱き着いてしまった。
「わっ!?こ、コウガさん!?」
「本当にありがとう、こんなに早く試作とはいえ出来上がるなんて、早速明日試させてもらうよ!」
「……いえ、今から試して欲しいんです、そして修正や本仕上げを明日中にして渡したいんです。それに女性陣は30分くらいじゃ出てきませんからね」
「なるほどな、分かった!動き回るなら裏庭がいいか、行こう!」
「はい!」
お風呂前のひと運動だ、違和感や変な所があればしっかり伝えなくちゃな。
ミツキには感謝してもしきれないな……いつか、大きな問題が片付いたらミツキに何か恩返しをしよう。
俺は、心の中でそう誓った。
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