104話 変身を自由に使えたら

 それぞれが練習を始めて2日が経った、扉の向こう的には約5時間くらい経過したといったところか。


 被纏猫の予習とイメージ練習もバッチリになった俺は、メイランとソルトの様子を見た後に、シェミィとカエデの特訓風景を眺めたりセシルの対戦相手になったりとしていた。

 カエデのシェミィの特訓を見る理由は何の被纒猫を覚えるかを確認できるからだ、覚えた被纒猫をいち早く練習できるように。

 そして何故セシルの対戦相手になっていたかといえば、いずれセシルとも絆で繋がって俺も刀を使う機会に恵まれるかもしれないからだ。

 セシルからスキルの特徴や癖、刀の扱い方を対戦しながら学んでいく……俺はみんなの力を借りて使いこなす戦い方だからな。

 何より刀って……使えたら格好いいから、な?分かるだろ?


「いくぞ、マスター!」

「あぁ、来い!」


 セシルは抜刀の構え、俺はナイフを両手に持って出方を伺う、姿はカエデの狼人族姿だ。


「抜刀、飛翔閃!」


 抜刀からの飛翔閃、セシルの初手によくやる流れだ。


「アイスウォール!」


 そして俺もいつも通り氷の盾で飛翔閃を防ぐのだが……


「縮地!崩月!」


 セシルの身体がスッと俺の目の前まで移動し、アイスウォールをぶった斬られた。

 どうやら短距離ではあるものの、相手に詰め寄る系のスキルを習得していたようだ。


「くっ……アクセルブースト!」


 一時距離を取るために加速スキルで離れようとするが……


「逃さない、影楼!」


 セシルの姿が影のようにフッと消える、こう言う時は大概視界外からの強襲のはずだ、読み取れ……気配を、魔力の流れを……

 頭上から僅かな魔力の流れを察知、上か!

 俺はナイフ2本でクロスにし、刀の斬撃を受け止めきる。


「流石だ、読まれたか」

「セシルだけじゃなくクロエも使っていたからな、気配や魔力の流れを読み取れるように練習したんだよ」

「マスターは頑張り屋だな」

「みんなを守るためだ」

「ふっ、そうだな。私もだよ」


 刀を弾き返し、再度俺とセシルは向かい合ってそれぞれ構える。


 こうして戦ったりしていて思ったのだが、セシルの力を使う際に刀も使うのであれば、戦闘時の空間魔法にも有用性が生まれてくると思った。

 どういう事かって?それは武器の入れ替えだ。

 俺は基本ナイフや身体を使いながら戦うがゆえに、刀を入れておく鞘が邪魔になるケースが多くなるのではと思ったんだ。

 それならば、装備の切り替えに空間魔法を使うと一瞬で変えられる……ナイフや刀をいちいち鞘に戻さずとも切り替えられる、ツバキがやっていた闇の空間の手元バージョンような感じだと思ってくれたら良い。

 そして……今なら変身も気軽に出来る。

 俺は狼人族自慢のジャンプをみせる、その途中で空間魔法でナイフを収納し。


「……変身」


 俺はメイランのドラゴン族姿に変身した、こうした咄嗟で変身する場合での武器を切り替えや収納に便利だ。


「むっ……!」


 俺の変身を見て更に気が引き締まったのか、セシルの俺を見る目が鋭くなった。

 今までにこんな動きなんてしたことがないからな、警戒を強めてくるのは仕方ないことだ。

 表向きにこうして変身しながら戦ったり出来なかったがゆえに、今気にせずやれる内に慣れておきたい。

 俺は口からブレスを吐き出し、セシルの周囲を囲む。


「なっ!?」


 セシルが動き回るのを防ぐ為に炎で動きを制限させてもらった、これで逃げられない。

 この炎を攻略するか、影楼で俺の元へ移動する必要があるが、空を飛んでいる俺に影楼を打って避けられると待っているのは……数mの身動きが取れない自由落下である。

 そんな隙を見せると負けるのは、向こうも分かっているはずだ。

 俺は炎を攻略される前に火球をいくつも作り出し、セシルへと放つ。


「くそっ……抜刀、流水!」


 水を生み出し、刀へ纏わせて火球を受け流していくのだが……俺は無詠唱のファイアーボールも織り交ぜて攻撃の手を緩めず連打する。


「ぐうぅっ、防ぎきれないっ……」


 狐であるので火に対して耐性を持っているセシルも、こうも連発されては徐々にダメージも蓄積されていく。

 これでは以前の武闘会と一緒の展開となる。


「……仕方ない!」


 ファイアーボールと火球の合間を見てスキルを繰り出す。


「影楼!」


 炎に囲まれたエリアからセシルの姿が消える、次はどこだ?

 と、思っていると下から魔力を感知。


「下!?」


 下を見ると、地面を激しく抉ると同時にセシルがすごい勢いで飛び上がってきていた。

 地面に飛翔閃を放ち、その爆発と振り抜いた刀の力で飛び上がることに成功させていたのだ。


「凄いことをやってくれるな!」


 俺はアイスウォールで盾を張り、ギリギリ防ぐことに成功した。


「防がれたっ!?」

「これで終わりだ、変身」

「!?」


 俺は空中でソルトの砂狼族に変身、そして……


「サマーソルト」


 空中で月を描くように反り返りセシルに3連撃を放つ。


「がっ、がはっ……」


 腹に思いっきり3連撃が入り、苦しさに顔が歪むセシル……最後に。


「月落とし」


 地面へと振り落とされる脚が、セシルの背中へと繰り出され……地面に叩き落された。


「があぁぁっ!!」


 セシルは苦しい顔をしながらも、近くに居た猫人族の人にポーションを貰って飲みつつ、回復魔法を掛けてもらって身体の治癒をした。


 俺は何をしたかったのかわかっただろう、ソルトの習得した技の試し打ちをセシルとの戦いでしたのだった。

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