102話 時空間の扉②
特訓開始して4時間経過、この時間は時空間基準なので、実際には外では24分しか時間が経っていないはずだ。
俺は各種被纏猫を扱う方々と、模擬戦のオンパレードだった。
被纏猫・双牙
疾風弾
白虎
これらが俺も見た事があるスキルだったが、まだまだ知らない被纏猫が沢山あった。
裂破爪(被纏魔力で作られた鋭い爪で切り裂く)
雷迅(雷のように瞬間的移動が可能になる)
虎豹(被纏魔力でヒョウになることができる、遠視付きでAGIがUPする)
雷豹(電気を纏うヒョウとなる、雷属性を持っていると使える)
獅子奮迅(短時間全ステータスUPする)
影猫(自分の影分身を作る)
etc
ほんと、被纏猫の9割くらいは猫関連のスキルだった、一部に猫とは関係ない属性攻撃や補助スキルもある。
それぞれのスキルを見せてもらったり、攻撃なら受けてみたりして特徴とイメージを頭の中へ叩き込み、対策もしっかり学んでいく。
カエデやシェミィが、どの被纏猫を習得しても良いように。
ーーーカエデ&シェミィside特訓開始ーーー
「シェミィ、頑張ろうね!」
「ん!いっぱい習得してみせる」
更なる被纏猫スキル習得へと意気込む、私とシェミィ。
私達に被纏猫を教えるべく、猫人族の方達8名が集まってくれた、中にはメイちゃんの姿もある。
「カエデ、シェミィ、まずは私から教えるわね」
「メイちゃん!お願いします!」
「よろしくお願いします」
前回、私はメイちゃんから双牙と疾風弾を学んでるけど、実は使っていないだけでシェミィも疾風弾を教えて貰って習得している。
私が1番最初に双牙を教えて貰ってたんだけど、その間にシェミィは擬人化する力をクロエちゃんに引き出してもらっていたんだよね。
だから、シェミィは双牙が使えない。
「まずは、裂破爪から行きましょうか」
メイちゃんが被纏を使ったので私もシェミィも被(装)纏を展開する。
「裂破爪は猫爪を具現化し、敵を引き裂くスキルよ、こうやってね!」
メイちゃんが手に魔力を流していくと、大きい爪が出来上がる。
何でも引き裂きそうな、とても鋭利な形をしている爪。
ストームキャット状態のシェミィの爪よりも大きくて鋭そうかも?
そして、その爪を斬撃として飛ばしたりする事も可能らしいね。
「どういうイメージで発動するのかの説明が難しいのだけど……2人が分かるように言うならば、シェミィの爪を思い浮かべるといいんじゃないかしら?」
「あっ!私も思いました!」
「ん?私の爪?」
シェミィは自分の手の爪を見るが、今は人型なので普通の指と爪である。
「シェミィ、1度擬人化解いてくれる?」
「ん!」
シェミィは擬人化を解いてストームキャット状態になる。
「カエデ、シェミィの爪をしっかり見てイメージを頭に叩き込んでほしいの。出来たら魔力操作してみてくれるかしら?」
「分かった!」
カエデはシェミィの爪の特徴をしっかりと確認していく。
頭の中にイメージが固まってから、右手に装纏魔力を流していくと魔力が爪のような形となっていく。
しかし、鋭利な爪とはとてもいえない出来上がりになってしまった。
「んーっ、難しい」
「スキルとして取得するまでしっかりとイメージしなきゃだから、繰り返しやってみましょうか!シェミィも、自分の今の爪のイメージをしっかり持ってから練習しましょう!」
「にゃ!」
シェミィも擬人化で人の姿に戻ってから練習を始めた。
ーーーセシルside特訓開始ーーー
マスターの近くで特訓を始めた私だったが、近くで繰り広げられる被纏猫のオンパレードに驚きを隠せない。
1つでも強い被纏猫に、あれだけ種類があるとは……これらをカエデが取得すれば、そのスキルを行使出来るマスターも相対的に強くなって大幅強化は間違いない。
足でまといにならないように、私も強くならねばな。
私の先生となるゼルさんから声がかかる。
「セシル、お前の刀技術を見せてもらえるか?」
「もちろんだ、模擬戦やるのか?」
「いや、演武をしてもらう」
「演武?」
演武の意味が分からなかったので聞いてみると、刀の演技をするんだそうだ。
抜刀、そして敵を切るかのように刀を振る、更にスキルの発動、それらの組み合わせて技術力を示すらしいんだ。
集中力、1振1振りごとのキレ、そして技構成などを見られるとの事。
「なるほど、その演武が乱れれば集中力が足りない、キレが悪いなら純粋な実力不足、技構成はその場でのスキル選択の判断力、色々見られる訳か」
「そうだ、本来なら人に見せる為の演武で技構成は事前に決めて演技する物なのだが、見方を変えてアレンジしてやればこうして特訓にも役に立つ。これで悪い所や癖が浮き彫りになったり、己に足りない物が見えたりする」
なるほど、よく考えられているな……これなら実力を見るにはもってこいかもしれない。
模擬戦で刀を合わせる事も大事かもしれないが、第3の視点から見る事で何かの発見があるかもしれないしな。
「一理あるな。1度手本を見せて貰えないだろうか?」
「いいだろう、よく見ておいてくれ」
ゼルは抜刀姿勢になり、目を閉じて集中する……
目が開いた瞬間に抜刀、そこから一振り、二振りと刀が振られる。
一振りごとにフッ!やヒュッ!といった風を切る短い音が聞こえる。
私も刀を扱う身だ、これがキレが良い証拠だと即座に分かる。
キレが悪いと、こんな短くて綺麗な風切り音は鳴らない。
素直な感想を述べるなら、その太刀筋はとても美しい。
「縮地、蓮華」
ゼルがそう呟くと、スッと瞬間的に前方へ身体が移動し、蓮華と呼ばれるスキルを発動した。
移動の滑らかさに、刀が美しく踊る3連斬……その鮮やかさに、私は目を奪われた。
父から刀を教わっていた時の、綺麗な太刀筋を思い出させてくれる。
そして、一通り演武を終えて納刀する。
「こんな感じだ、分かったか?」
「あぁ、手本が素晴らしいお陰でよく分かったよ」
「……褒めたって優しくしないぞ?」
「分かっているさ、尊敬しているんだよ。同じ刀使いとしてな」
「そ、そうかよ」
少し照れながらも、褒められて嬉しいのか顔を背けてしまう。
「そ、そんな事言ってないでさっさとやるぞ」
「うむ」
ゼルと同じく抜刀姿勢になり、目を瞑りながら「ふぅー」と息を吐いて精神を統一させる。
強くなる、そして皆を守る矛となる為……私は呪われた刀を手に、鮮やかに舞うのだった。
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