101話 時空間の扉
「こ……これは」
クロエと似たような姿を持つ人が数人並んでこちらを見ていた。
「メイちゃん!」
「カエデ!どうだった?武闘会は」
その並んでいた内の1人が、カエデと面識があるようだ。
「ご主人様と戦ってきたよ!負けちゃったけどね」
「負けちゃったのね……私の教えた疾風弾はちゃんと使えた?」
「うん!でも、疾風弾を返り討ちにされたよ」
「あら、アレを返り討ちにするなんて、凄いのね貴方のご主人は」
「もちろん!自慢のご主人様だもん!」
「あらあらー羨ましいわぁ」
2人できゃっきゃと話をしているが、状況が上手く飲み込めず困惑する俺達。
気が付くとシェミィも別の人と話していた。
「クロエ、これは一体……」
「簡単に言うなら、ここに居る皆は私の故郷に居た猫一族、住処を追われたから匿ってる」
「クロエの故郷……」
「ん、半年くらい前になるけど、武力国家が私達を戦力として引き入れようとして来たから、断ったら襲われた」
「戦力として引き入れ?」
「見てわかるように私の一族は猫人族、でもここに居るのはかなり特殊な一族で、この種族の中でも戦闘特化な珍しい一族、それを武力国家は狙ってきた」
猫人族自体がそもそも珍しいのでクロエとシェミィ以外では見た事ないが……その猫人族の中でも戦闘特化な一族か。
「ここの皆と私の能力を集めたら、被纏猫の技が全て集結する……それを国家が狙ってきたんだと思う」
「なるほどな……」
武力国家と言えば、トライデント王国に居た時にクラマスから言われたな……俺の能力も欲しがる可能性があると、クロエの故郷の話を聞いて納得した。
「その話はまた今度、取り敢えずカエデとシェミィは前回同様、未習得の被纏猫をなるべく取得してもらう」
あの時も思ったが、そんな短い時間で技なんて身に付くものなのか?
「クロエ、そう言うがあと2日だぞ?とてもじゃないが間に合わないぞ」
「心配ない、ここには時間軸を弄った空間がある。そこは実際の1分がその空間だと10分になるから、いっぱい特訓出来る」
それって某超有名アニメにある、あの部屋じゃないの?短い時間で大量の修行が出来るという……
でも、カエデとシェミィが急成長した理由がハッキリと分かった、その部屋を使っていたんだな……
実際のカエデ達の特訓時間は、初日が朝食終わりから夕飯までだったから10時間……要するに100時間、4日以上の特訓時間となる。
2日目も使っていたとしたら、1週間以上の特訓を2日でした事になる。
「その空間を今回は全員で使ってもらう、コウガは私の一族全員と戦って、全ての被纏猫のイメージと対策を身に付けつつ戦闘力を上げてもらう」
……なるほど、カエデが被纏猫を取得すれば、俺も使えるようになる。
そしてシェミィとも個人的な絆を結ばれればシェミィの技も使えるようになるだろう。
そうなれば、使いこなすには被纏猫の技イメージが必要となる、その為の特訓か。
「分かった」
「私達は前と一緒だね、ご主人様に会えなくて少し寂しかったけど、今回は一緒だから寂しくないね!」
「ん、パパとママと一緒嬉しい」
知らない間に長い時間会えてなかった事になるんだよな、この2人からすれば……
そんな素振りを見せなかったから分からなかった。
「そして、セシルは手持ち沙汰になっている人と戦って自分の技を更に昇華してもらう。ゼルという刀使いも居るから後で紹介する、そのゼルを中心に特訓して欲しい」
「承知した」
「そしてメイランとソルトは、基本的には私が主体となって技のバリエーションを増やしてもらう。2人は技のレパートリーが少な過ぎる上に力を生かしきれていない。ソルトはまだ技術はあるけど、メイランはまだまだドラゴンに頼りきってる……このままじゃコウガ達の足手まといになる」
「「……」」
2人はクロエの言い放つ厳しい言葉に黙り込んでしまう、言い返せないのは自分でもそれが分かっていたからなのだろう。
「厳しい事言ったけど事実だから、実際に2人は私に数秒で退場させられている、そんな事ではドラゴン族みんな救えない。だから私が2人の力を引き出す、しっかり付いてきてほしい」
「……分かったわ、悔しいけどその通りだもの」
「っすね、ご主人の足手まといにはなりたくないっすから……」
2人は悔しさを噛み締めつつも、クロエに従う。
「ん、それじゃ行くよ。メイ、ここに居る全員に通達!家事係以外は全員、特訓用装備を身に付け時空間の扉へ!」
「承知しました!」
メイと呼ばれる人がクロエからの通達を受け取ると、被纏を纏い秘密基地を駆け出す。
速い……カエデ並の速さだ、ここに居る人はみんなこれ程の力を有しているのか!?
流石は戦闘特化な一族……クロエの生まれ故郷なだけあるな。
クロエの指示に従い歩いていると、目的の時空間の扉とやらに辿り着く。
「この中に入ったら時間感覚が変わる、今は昼前だから……7時間この中に入る事にする。70時間だから、2日と22時間を主が作ったこのタイマーで測るからこれが鳴ったら全員退室、いい?」
「了解」
「全員揃ったら行く、準備しておいて」
各自身体を解したりアイテムや装備の確認をしたりしていると、クロエの一族がぞろぞろと集まってくる。
「セシル、彼がゼル」
猫人族の中でも高身長でイケメン風な男だ。
髪は長めで腰には刀が差されている。
「俺がゼルだ、よろしく」
「よろしく頼む」
2人は握手を交わす。
そうしている間にも猫人族が15人近く集まり、クロエが人数を確認する。
「よし、全員揃った。いくよ」
クロエは時空間の扉を開く、この扉が閉じられた瞬間から時間経過が遅くなるとの事だ。
俺はカエデ達みんなの顔を見る、全員が覚悟を決めたようで頷いてくれる。
『頑張ろうね、ご主人様!シェミィ!』
『ん!』
『おうとも!』
猫人族の皆が先に扉の中へ入っていき、俺達が最後に入る。
最後尾で入ってきた俺を見て外を確認したクロエ、入りそびれた人が居ないか確認してから扉をそっと閉じた。
「ん、それじゃ各自散らばってやろうか。メイランとソルトはこっちに、ソルトは脚技か……ならカイザス!こっちに来て」
クロエがカイザスと呼んで、来たのは武闘家の猫人族だった。
「彼は武闘家で脚技も少しだけ心得がある、彼から指導してもらいつつ、私からも伝授出来るものをしていく」
「了解っす!」
「メイランはドラゴンで教えられる人が私以外に居ないから全て直々に教える、しっかり付いてきて」
「分かったわ」
クロエの判断で次々と役割と振り分けをされていく。
「カエデとシェミィはペアで被纏猫取得に、彼女達にスキル教えられる人はそっちに行って、そこで手が空いてる人や教える事がない人はコウガとセシルの相手してあげて、ゼルも頼んだよ」
「分かった」
振り分けが済んだので、ある程度散らばって特訓開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます