100話 VSクロエ③
「獅子連打!」
獅子の形をした魔力を手に込めて、カエデはクロエに殴り掛かる。
クロエは全て躱していくのだが、獅子を型どる魔力により、少し大袈裟に躱していく。
武闘会の時より、明らかに違う強さに少し驚いているようだ。
「シェミィもそうだったけど、カエデも前より速くなってる、何をしたの?」
「家族みんなの力だって言えば分かるかな!」
「シェミィも言ってた、家族か……」
避けながらも少し考えてしまうクロエ、俺からしてもそっちの皆も家族のようなものだと思うのだが……
「考え事なんてさせない!」
カエデは更にスピードを上げて、クロエの意識を自分へと向けさせる。
「っ……シェミィ同様、油断は出来ないか」
ようやくクロエもナイフを使い、避けるだけではなくガードやカウンターも織り込んでくる。
『カエデ!俺もクロエの背中から獅子連打を使う!避けられたら俺ごとクロエに向かって投げつけてくれ!』
「っ!?」
『り、了解!』
先程の加護を活用しカエデに魔力に込めた声を届けると、少し驚いたようだがすぐに返事が帰ってきた、初めての試みだったが上手くいって良かった。
実際、これはかなり使えるかもしれない……一種のテレパシーみたいな使い方が出来るからな。
俺はクロエの背後へ回り込んで仕掛ける。
「獅子連打!」
「っ!」
クロエも俺が背後に迫っていたのは分かっていた、俺の獅子連打をギリギリで右上空へジャンプして避け、カエデにぶつけようとした。
しかし、そんな事故を起こす俺達じゃない。
俺達は魔力で繋がっていて声や感情も全て届く、細かい位置や殴る場所も届けてある。
「ご主人様!」
「良いぞ、やれ!」
「でぇぇりやぁぁぁぁ!」
カエデは俺の獅子連打をスレスレで回避し、その腕を掴みクロエの方へと投げ付ける。
「!?」
「はぁぁぁぁ!」
俺とカエデの連携は上手く決まり、ナイフがクロエの腹へと届いた……と思ったのだが、当たる瞬間にクロエの姿が影となり消えた。
「!?」
これには見覚えがある、これは……影楼!?
『後ろ!!!』
「!!」
すかさず背後にアイスウォールを展開、その瞬間にガキン!と武器が当たる音がした。
「いいね、この氷はやっぱり厄介」
「獅子風連弾!!」
カエデは風連弾で追撃する、クロエも振り返り全てナイフで弾いていく。
クロエに攻撃が全く入らない、でも逆にこちらへも攻撃は届いていない。
クロエは素早い、1度速度に乗らせたら間違いなくコチラがやられるはずなのだが、してこない。
きっと、クロエもそう思ってスピード戦術にしてこないのもあるだろう、俺達の力に合わせてくれている……そんな気がする。
「これだけ出来るなら良いね。満足したし、これを使って終わらせよう……被纏猫、獅子王」
クロエが四つん這いになり、被纏がライオンの形になっていく。
『獅子……ライオンか』
『今までの被纏猫の中で、1番やばそうな雰囲気……だね』
『だな、気を付けろよ』
『了解』
今はクロエを真ん中に挟んでいる状態の立ち位置だ、俺はクロエの背中を見ているのだが……がら空きのはずなのに隙を見せているようには見えない、今攻撃を仕掛けても返り討ちにされそうな気がした。
「フーッ!」
クロエは真っ直ぐカエデに向かっていくのだが、速い。
超高速タックルがカエデを襲う。
「!」
警戒していたので、腕をクロスしてギリギリガードは間に合ったのだが、威力が高く吹き飛ばされる。
「きゃぁぁぁ!」
「カエデ!!」
「余所見していいの?」
「!?」
カエデを吹き飛ばしたと思っていたら、いつの間にか俺の目の前に来ていた……双牙が俺を噛み砕かんとした所で寸止め。
「これで終わり」
「あ、あんな一瞬で双牙を……」
「コウガ達3人も、いずれ出来るようになる。私の特訓でコツは掴んで欲しい」
お互い被纏(装纏)を解いて、クロエはヴィーネを呼んだ。
「ヴィーネ、みんなに魔力ポーションを」
「かしこまりました。しかし、クロエが獅子王を使うとは思いませんでしたよ?」
ヴィーネは全員に魔力ポーションを配りながら話す。
「ん、実力を示すならアレが1番」
「確かにそうですが、アレはクロエの最終奥義……見せて宜しかったのですか?」
「ん、みんなは敵にならない。信じてるから」
「……そうですか。クロエの感覚は間違えませんから、信じるとしましょう」
ヴィーネは詠唱を開始すると、全員が収まる範囲に魔法を展開した。
「自然の癒しよ、かの者達を救たまえ!エリアヒール!!」
身体に出来た傷や痛みがすぅーっと引いていく、魔力ポーションも飲んだので万全に近いくらいまで回復した。
「これが範囲治癒魔法か」
「はい、多分ですがコウガ様も取得可能かと思います、これ以上の高等魔法は使えないので教えられませんが……どうしますか?」
これがあれば1人1人しか救えない場面があっても、まとめて回復させられる。
みんながやられる所は見たくないが、あの操られたドラゴン達を相手にする以上無事では居られないだろうからな……備えあればってやつだ。
「頼む、みんなが生き残る確率をなるべく上げたい」
「かしこまりました、クロエの特訓の合間に練習致しましょう」
こうして範囲治癒魔法を教えてもらう約束をし、クロエ主導の元特訓へ。
2日……またしても2日だ、これでもっと強くなってメイランの同郷達を助ける。
そして、あのフードの男を……倒す!
「カエデ達を特訓した場所があるからそこへ案内する、付いてきて」
ついて行った先は玄関に近い所にある何の変哲もない広場、クロエがしゃがんで地面に手を触れると、急に魔法陣が発動する。
「みんな、集まって」
俺達全員、魔法陣の中へと入る。
「転移、秘密基地」
「「「「!?」」」」
カエデとシェミィ以外はこの事を知らないので驚いたが、クロエが転移魔法を使ったように見えた。
そして着いた先には……クロエと瓜二つの人が何人も並んでいたのだった。
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