99話 VSクロエ②
クロエと対峙する俺とカエデとシェミィ、それぞれ装纏と被纏を展開してお互いの出方を伺い合う。
先陣を切ったのは、シェミィだった。
元のステータスは危険度Bのストームキャットに加えて、俺達の魔力が混ざり合い更なる底上げされている。
(通常時)
STR E
VIT F
INT C
DEX D
AGI C
(被纏時)
STR D
VIT D
INT C
DEX D
AGI B
「んっ、行く!」
シェミィがクロエに迫っていく。
「被纏猫、白虎」
纏った魔力が虎へと代わる。
俺とカエデはシェミィの変化に驚くが、クロエは動じる様子はなく知っていたようだ。
俺やカエデが知らない内に習得していたらしい。
後に聞いた話、今日覚えたばかりだそうで、この白虎には更なるステータス変動があるという。
(白虎時)
STR E
VIT D
INT D
DEX C
AGI A+
STRとINTを犠牲にAGIを激的に上げるんだそうだ。
これによりシェミィは、最速であったカエデすら凌駕するスピードへと到達する。
そのスキル無しのスピードは、スピリムを掛けてアクセルブーストをしたカエデよりも少し速い。
「ふっ!」
「っ!」
シェミィの連撃をしっかりと全て弾いていくクロエだが、表情を見るに余裕はあまり感じられず真剣顔だ。
クロエが集中して対処出来るくらいのスピードらしい。
それにしても、シェミィのナイフ捌きが上手い、何処で覚えたのか?と思ってしまう。
しかし、その疑問はすぐに解消される事になった。
「シェミィ凄い、私の見込み通り強くなってる」
「ん、当たり前!このナイフ捌きだってパパの動きを見て学んだ!このスピードの制御や動き方はママの動きを見て学んだ!そして2人と私の魔力を、この身体とナイフ込める!これが、パパとママみんなの力!!」
シェミィがそう言い放った瞬間、俺達3人全員の頭の中に機械音の声が聞こえだす。
『加護、家族の力を取得しました』
「「!?」」
俺とカエデは急な加護の取得に驚くが、今までよりも強固で深い繋がりを感じれるようになった。
これにより、シェミィはスピードだけではなくナイフ捌きすら更に速くなっていく。
「っ!?」
シェミィの変化を感じ取ったクロエ、まだ強くなるのかと笑みを浮かべた。
「……いいね!楽しい!!やっぱりあの時の感覚は間違ってなかった!」
2人の攻防が激しくなっていくのを見ている俺とカエデ、本来の戦いなら加勢する所なのだが……
「ご主人様」
「あぁ、分かってる。シェミィが1対1をやってみたいっていう気持ちが伝わってくる」
体内にあるシェミィの魔力から、感情や思っている事が伝わってくる……こんな感覚は初めてだった。
恐らくは、この新しい加護のお陰だろう。
「これは命のやり取りではなく特訓だ、シェミィがやりたいって言っているなら、親として見守ろうか」
「だね、シェミィ……」
カエデが無事を祈るように両手を合わせる。
「私の速さに付いてこれるとは、さすがシェミィ。私の身体を参考にしただけある?」
「ん!この身体凄く身軽、クロエをイメージにして良かった」
「でも、あくまで私の身体を参考にしただけ、本物には敵わない」
「分かってる、でも……パパとママを助けられるのなら、どんな手段を使ってでも強くなってみせる!甘えてばかりじゃいられない!」
こうして会話している中でも、2人のナイフはガキンガキンと音を立てて弾きあっている。
正直、ストームキャットの姿より何倍……いや、10倍以上も強いんじゃないか?
「なぁカエデ」
「なーに?」
「俺達より強くない?」
「うん、思った。武闘会前の特訓でも強いなとは思ってたけど……今はそれ以上だね。でも、私達の為にって言ってくれてるんだし……いいんじゃない?」
「それもそうか」
こうして、授業参観で子供の成長を眺めるかのように緩い感じで話しているが、お互い装纏を纏って戦闘モードだ。
装纏したままゆっくりした事は今までなかったが、装纏姿のカエデもカッコよくて可愛いんだよな。
そうしている間にもクロエとシェミィの攻防は続いていたが、クロエに余裕が生まれてきている。
「んっ、楽しい時間もそろそろ終わり、あの2人ともやりたいから」
「っ……」
「被纏猫、覇威虎」
クロエも同じく魔力を虎へと変化させるのだが、シェミィは白虎に対してクロエは覇威虎。
これはAGIを犠牲にSTRを大幅に上げるスキルだ。
何故これらが分かったのかと言えば、気になって装纏猫を詳しく鑑定してみたのだ。
攻撃スキルやステータス変化スキルが豊富で、多くは猫科系の動物がモチーフにされているとの結果が出た。
しかし、扱える人は限りなく少ないらしいのだが……ここに居る4人は技違いとはいえ被(装)纏猫を扱えるんだよな……
「行くよ」
クロエは先程よりは素早くなくなっているものの、これでもカエデの理論上最速よりも速いスピードでシェミィに迫る。
真っ直ぐ突っ込むのではなく、左右にフェイントをかけつつだ。
「はっ!」
「っ!」
クロエの攻撃に合わせてナイフで受け止めるのだが、一撃が尋常じゃない程重くなっており、地面を抉りながら後方へと押し込まれる。
「むっ!?」
「まだまだ行く!」
一撃に重きを置いた覇威虎と元々の素早さを活かしてシェミィを追い込んでいく。
避ける事も許されず、白虎を使えどスピードで勝つことも出来ない。
避けれないので連撃をガードするも後方へ追い込まれ……背中に柵が当たった瞬間、シェミィの首へとナイフが迫り寸止めされる。
「私の勝ち」
「……負けた」
クロエはシェミィの首からナイフを離す、その瞬間に影に入り俺とカエデの元へと帰ってくる。
「パパ……ママ……ごめんなさい」
明らかに落ち込んだ様子で謝りに来る。
「クロエ相手に良くやったよ、凄く強くなったな」
「シェミィは私達の自慢の子供だよ!」
「んっ……ありがとう」
するとシェミィは猫の姿へと戻ってしまう。
「魔力が少なくなったか」
シェミィは小さく頷く、多分シェミィ自身が魔力消費を抑える為に姿を戻したのだろう。
「シェミィ、私達の影で休んでて、後はパパと一緒に頑張ってくるから」
「にゃう」
シェミィは素直に従って影へと潜る。
「ん、次はどっち?2人同時でもいいよ?」
「なら、2人で行かせてもらう」
「だね、いこうご主人様!」
「いいね、シェミィ以上に楽しませて!」
お互いに武器を構えて同時に動き出す。
倒せなくてもいい、強くなるきっかけを掴みたい。
クロエとの勝負も、終盤へと差し掛かる。
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