第15話 シェミィの過去
「ん……?ここは……?」
知らない景色が目の前に広がっていた、周りは木々に囲まれていて、目の前に高さが30m程になる崖があった。
自分の身体を見てみると薄透明になって浮いている、幽霊になった気分。
「これは……また夢っぽいね」
ご主人様の前世を見た時と似たような感じなのだと理解した、だが前みたいな誰かの目線って訳ではないみたい。
「ここは何処だろう?浮いてるなら上からみたら分かるかな?」
身体が浮いていたので上に行きたいと思えば動いてくれた、意識すれば好きに動けるみたいだ。
上に浮き上がって見渡してみると、かなり遠目にトライデント王国が米粒より小さくだが見えた、手前付近に私の村のトーラン村が見える……全壊の状態だった。
「かなり遠目にトライデント王国、近くに私の村が見える……位置関係的に、ここは私の村から北にある山脈ね、見た感じあのドラゴンが村から去った後……かな」
案外近場だったので場所把握はすぐに済んだ、自分の村の状態を見てしまったが為に気分は良くない、下に降りてこれからどうするか考える。
「ここから夢が始まったってことは、ここで何かがあるって事よね」
近場をウロウロしてみると、崖の麓に洞窟があった、何故か中が気になり入ってみる。
「夢だからなのか洞窟内がハッキリ見える、この奥に何かがいる気がする」
ゆっくり奥を目指す、分かれ道も無く真っ直ぐ進むと大きい図体の猫みたいな魔物が見えた。
「あれは……!シェミィ!?」
身体の大きさからして魔物状態のシェミィ、ストームキャットが眠っていた、本来のシェミィは今自分を背負ってトライデント王国に帰っている最中のはず。
「という事はこれは……私が村から逃げた後からシェミィと出会うまでの間の夢……いや、記憶って事ね」
もしかしたら触れている対象の事に関する夢を見れる……これがテイマーの力?
しかし、それだとご主人様の件ではおかしい部分がある、ご主人様は人間だから……いや、向こうの世界のかえでとご主人様の繋がりを考えたら100%おかしいとは言えないかもしれない、かえでは犬の姿をしていた、だからテイマーの能力範囲内のはず……ご主人様を通して向こうのかえでと繋がったと考えたら変ではない気がした。
「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「!?」
そんな事を考えていると外から大きい咆哮が聞こえた、シェミィもこの咆哮を聞いて目が覚めたのか起きて外に走り出した。
「この咆哮……まさか」
私もシェミィを追い掛けるように急いで外に出ると。
「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉ!」
「にぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ドラゴンとシェミィがいがみ合っていた、ドラゴンを見てみると左目が閉じられたままなのに気付く。
「ドラゴンのあの目……間違いない、お父さんが傷付けたから目を開けられないんだ」
お父さんの一撃は効いていたみたいだ、このドラゴンと対峙する時は左側メインに攻めるといいかもしれない。
そう考えている内にドラゴンが動き出した、口から炎のブレスを吐き出すがシェミィは避けて、隙を見て引っ掻くが深くは爪が入らないようだ。
「ドラゴンの鱗、かなり硬いみたいね……」
ドラゴンと対峙する時の為に情報を頭に叩き込んでいく、起きた時に覚えていれば良いけど……
シェミィが風の刃を身に纏って解き放つも、ドラゴンに有効打を与える事が出来ずに困っているようだ
「多分このドラゴン……危険度Aランクね、Bランクのシェミィじゃ勝てない…」
「やっぱりこのドラゴンには、この程度じゃ勝てないみたいだねぇ」
「!?」
声がした方を見てみると、頭から目が隠れる直前まで深く被られたフード姿の人がドラゴンとシェミィの戦いを見ていた。
「そろそろドラゴン以外にも手駒が欲しかったんだよねぇ……おい!このストームキャットを叩き潰せ!」
ドラゴンがストームキャットに向かって尻尾を振り回す。
「ドラゴンが……人の言う事に従っている!?どういう事!?」
カエデは混乱していた、何が起きているのか理解するのに少し時間が掛かったが、とある予測を打ち立てた。
「もしかして……このドラゴンはテイムされている?いや、ドラゴンの様子を見るにテイムされている風には見えない、まさか……操られている!?」
ドラゴンが操られている……そしてシェミィとの対峙……もしかしてあの時のシェミィも操られていた……?
色々考えている内にシェミィが追い詰められていき、シェミィがドラゴンの攻撃に当たってしまい倒れてしまう。
「シェミィ!!」
私の声は届かない、記憶だから。
シェミィは倒れて起き上がろうとするが起きれずにもがいている。
「ふふ……ようやく終わったねぇ」
フード姿の人がシェミィに近付いていく、そして顔の目の前でしゃがみ込んだ。
「お前も俺の手駒になるんだねぇ」
魔力が増大したのを感じた、するとシェミィは立ち上がりフード姿の人を見つめるが襲おうとはしない、するとフードの人が命令した。
「ふむ、何だか魔法の掛かりが悪い気がするが一応成功したねぇ。じゃ、お前はテラー大森林を支配するんだねぇ!」
「にぃぃぃぃぃ!!」
シェミィは声を上げながら走り去った、完全に意識が失われる前だったのか悲しい顔をしていたシェミィ。
そしてそのフードの人はドラゴンに乗り、山脈のから北東方面へと姿を消した、向こう側へ行くには山脈を超えるか東側から回っていく必要がありそう、遠回りで西側でも一応行くことは可能かな。
「シェミィ……私達と出会う前にこんな事があったんだね……」
私は涙を流す、こんな事許す訳にはいかない……
私は決意した、ご主人様とシェミィと共にあのフードの人を止めると、そしてあの憎かったドラゴンを……救う事を。
そして、私は短い睡眠から目を覚ました。
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