第10話 報告と成長

 ギルドの中に入るといつもと変わらぬ賑わいをみせていた、空いている受付いくと受付嬢がこちらに気付き声を掛けてくれた。


「コウガさん、お帰りなさいませ」

「クエスト終わらせてきました」


 討伐証明になるスライムの魔石と魔力草を取り出してカウンターに置く。


「確かに、これにてクエスト達成ですね。報酬と魔石分の報酬で5000ノルンです」


 銀貨5枚5000ノルンある事を確認し、ストレージへ入れる、やっぱゴブリンより多少安いか……まぁ気にしても仕方ない、スライムについて言わねば。


「ありがとうございます、あとスライムのクエストについてちょっと気になる事がありまして……」

「はい、何でしょう??」

「テラー大森林の奥地に生息するスライムが森入口付近で出てきました、しかも1匹のようなはぐれのスライムではなく6体群れて、で」


 ギルド職員の眉が僅かながらピクっと動いた。


「本当ですか!?依頼だとスライムが増えてきたとの情報でしたが……仮にそれだとすれば数が多くなったじゃなく住処から追い出された……?」


 ギルド職員が少し考える顔して何やらぶつぶつ言い始めた。


「もしかしたら奥地に何か強い魔物が住み着いた可能性も否定できませんね……グランドマスターに話を通してみます、御二方こちらに来てもえますか?状況を本人達から聞きたいでしょうから」

「分かりました」


 受付から少し離れた個室へ案内される、VIP室みたいな部屋でお偉いさんのグランドマスターと初対面、2人共緊張してしまっていた。

 コンコン。

 ドアがノックされる。


「失礼します。コウガさん、カエデさん、こちらがギルドマスターのジャスパー・クルムンド様です」

「おう、俺がギルマスのジャスパー・クルムンドだ、ジャスパーでもギルマスでも好きに呼んでくれ」

「初めまして、俺はヒムロコウガ、隣の彼女はカエデです」

「は、初めまして」


 カエデが緊張でガチガチになって緊張するのも分かる……この男のプレッシャー……凄いぞ。

 こっそり鑑定してみる。


 ジャスパー・クルムンド 称号ギルドマスター

 レベル70


 レベル70!?凄いな……くっそ強い、対人に鑑定したのは初めてだったが名前と称号とレベル以外は見れないようだ。


「話はちらっと聞かせてもらったぜ、スライムが奥地ではなく森入口に出現しただと?」

「はい、そうです。スライム10体討伐クエストを受けたので、テラー大森林へ赴いたのですが、入ってすぐくらいに6体のスライムと遭遇しました、その後も奥地に行くことなく5体のスライムに遭遇して終わりました。奥地に強い魔物が巣食った可能性があると判断し一旦戻って報告に……」


 スライムにベタベタにされた事とお昼ご飯を挟んで報告に来たのは黙っておく。


「なるほどな……分かった、奥地に巣食った魔物の姿が分かりゃなお良かったんだが……お前らはまだ新人だ、これで充分だろ。よく報告してくれた礼を言うぜ」

「いえ、役に立てたようで良かったです」


 聞いた話、テラー大森林にはDランク以上の魔物は現状居ないらしく、Dランク程度だとスライムもこうして逃げてくる事はないらしい、ギルマスのジャスパーさんが報告書とギルド依頼書にペンを走らせ、書き終わると傍に居た受付嬢に2枚手渡した。


「明日朝、調査隊を組んで調査と可能なら討伐を行う!レイア!明日朝に動けるDランク以上の冒険者を集めろ!」

「はい!」


 あの受付嬢はレイアさんって言うんだな、覚えておこう。


「お前達にもいずれこういう依頼に関わるかもしれん、勉強がてら見学するか?」

「いいんですか!?」

「あぁ、もちろん安全第一で敵が危険だと分かればすぐお前達を守ってやる、安心しろ」

「勉強させていただきます!、良いよなカエデ?」


 俺はカエデの方をちらっと見る、黙って聞いていただけだったからか、名前を呼ばれて耳をピンと立ててビックリしたようだが頷いてくれた、耳ピンしたの可愛かった。


「そうね、これから依頼こなしつつ旅に出るんだし……経験するのは大事だと思うわ」

「決まりだな、遅れるんじゃねぇぞ?」

「分かりました!よろしくお願いします!」


 俺達はギルドから出て道具屋へ向かった、明日の準備する為だ。


「戦わないとはいえ、何があるか分からない。しっかり準備はしておこう」

「油断大敵、ね」


 お互いに向き合い頷く、ポーション類や状態異常治しの薬、そしてスライムの事があった為に身体を拭くためのタオルもストックしておく。


「あと何が要る?」

「ねぇ、今思ったんだけど……ご主人様は杖しか持ってないよね?自己防衛や近接用の短剣とかナイフ的なのもあった方がよくない?」


 確かにいざと言う時に、あるのと無いのとでは段違いに生存率が変わる、持っていて損は無いだろう。


「そうだな、武器屋行って2本ほど買っていくか」

「そうしましょ」


 道具屋で買い物を済ませ武器屋へ。


「どんな短剣やナイフにしようか」

「短剣なら純粋に切る武器だけど、ナイフなら投擲ナイフとして使えたりメイン武器として使える物もあるわよ」

「切ったりするだけでいいなら短剣、投げたりして臨機応変な戦いもしたいならナイフってわけだな?」

「簡単に言えばそうね、どうするご主人様?」

「手に馴染むやつにするさ、使いやすい方がいい」


 ナイフや短剣は他武器に比べあまり高くない代物だったので助かった、手に馴染む少し大きめのナイフを見つけたのでそれにした、2本で3800ノルンだ。

 武器屋の裏に武器を試す用の広場がある為、そこでナイフを振ったり投げたりしてみる。


「投げるには多少大きくて重いか?ただ近接用武器としては良さそうだ、ただこれ使うなら鍛えないとなぁ……」

「ご主人様って確かSTRがGだったよね、多少上げた方が良さげね」

「普段からもナイフ練習しつつ寝る前に毎日筋トレするか……」


 このナイフトレーニングが後々で主役級に役に立つ事になるとは2人はまだ知らない。


 日も沈みかけてきたので宿に戻り2人でゆっくりする、湯浴みも終わらせてるので、カエデの尻尾の手入れをしてカエデを快感でふにゃふにゃにして楽しんだ後、夕飯を食べた、2つの意味でご馳走様でした。

 宿主に裏庭で素振りしていいか聞いてみると、他のお客さんに迷惑が掛からないならとOKを出してくれた、これで余った時間も鍛えられそうだ。


「宿の裏庭、誰も居ない時なら武器を振る許可貰ったから素振りしてくる」

「私も身体動かそうかな、何かのきっかけで役に立つスキルとか覚えたりするかもだし」


 宿屋の裏庭は少し広めで、端には菜園もある。街灯もある為真っ暗ではないのは助かる、2人が練習する分には困らない広さだしな、俺達はお互いを巻き込まないようにそれぞれ離れた場所で練習する。


「ふっ!はっ!」


 ナイフを縦切りや横切り、敵の攻撃をナイフで受け止めるような仕草をして、その行動を身体を馴染ませていく。


「うーん、ナイフの握った感触はしっくり来るんだが何かが違う……」


 ナイフを扱い慣れてないだけだと思うが何か違和感がある。


「普通にナイフ握ってるからじゃない?切りつけるのを主軸にするなら逆手持ちで握ってみたら?」

「逆手持ちか、一応両方で握れるように練習しておくか」


 逆手でナイフを握ってみる、よくアニメとかでナイフ使いが握ってるような感じだな。


「こっちの方がカッコイイな」

「そう?普通だと思うけど……私は私で身体強化の特訓するわね」


 カエデがそう言って身体に身体強化をかけて動き回る、脚に力を溜めて解き放つと更に速いスピードで駆け抜ける。

 そして止まったと思ったら思いっきり地面を蹴り後ろへ宙返り。


「す……凄いな、さすが狼人族の身体能力だ、負けてられない」


 コウガも負けずにナイフを1時間くらい振り続ける、そろそろ終わろうかと思った所で2人の脳内にスキルが浮かぶ。


「「えっ」」

「こ、ご主人様どうしたの?」

「カエデこそどうした?」


 お互い驚いた顔して目を合わせた。


「私はスキル覚えたの、アクセルブーストってスキル」


 アクセルブースト、身体強化で脚に力を溜めて走るのを繰り返したおかげでスキルとして会得したようだ、脚への力を溜める行為を省き素早く駆け抜けられるようになったらしい。


「俺は剣術F級習得してSTRがGからFに上がったみたいだ」


 俺は剣を使う人がみんな習得する剣術を手に入れた、剣類の扱いが上手くなるやつだな。


「お互い成果あってよかったわね!」

「だな、汗かいたし、そろそろ終わってもう1回湯浴みしようか」


 宿の部屋に戻り湯浴みをする、お互いの背中を拭きあって尻尾も綺麗に梳いてあげる、気持ちよくてふにゃふにゃになったカエデと一緒にベッドに入って眠った。

 カエデが眠りについた時に耳をさわさわしたのは内緒だ。



 そんなことされているとは思っていないカエデは、また夢を見たようで……?

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