第6話 準備
「んーっ……良く寝た」
俺は身体を起こしてグッと背中を伸ばす、隣に居るカエデを見るとすやすやと寝息をたてていた。
「まだカエデは寝てるようだな、やっぱ可愛いなぁカエデ、この狼耳がピコっと動くの堪らない、ちょっとだけ触ろうかな……」
軽く狼耳に触れてみる。
「んんっ……すぅ……すぅ」
「はぁぁぁぁぁ……可愛い……」
ってイカンイカン、欲望丸出しは嫌われそうだな、控えよう……
今日は冒険者として仕事していく為に午前中に装備とアイテムを整えて、採集と魔法の練習してみよう!
着替えている最中にカエデが起きたのに気付いた。
「おはようカエデ」
「んんーっ……おはようご主人様」
猫が伸びをするように四つん這いになり身体を下げつつお尻を上げて伸びーっとする、可愛い。尻尾も機嫌よくふぁっさふぁっさと揺れている
「ご主人様早起きだね」
「今日はたまたま目が覚めちゃってさ。今日は午前中に装備とアイテムを揃えてから採集クエスト行きたいんだけどいいか?余った時間に魔法も使った事ないから試してみようと思うんだ」
「分かった!私魔法はさっぱりなのよ、だけど採集なら任せといて!知識はあるからしっかり教えてあげるわっ!」
「頼もしいな、頼む」
お互いの身支度を終えてから食堂へ向かって朝食を食べる、今日はベーコンエッグとパンとポタージュスープだった。
「ん〜っ!美味しい!特にこのスープ美味しい」
「そうだな、今度真似してみるか」
「料理作れるの!?」
「あぁ、ずっと1人で暮らしてたからな、こっちの食材と向こうの食材の違いを把握出来れば、俺の世界の料理も再現可能かもしれない」
カエデの目が輝き出す、耳と尻尾がピンと伸び、こっちに身を乗り出してきた。
「ほんと!?私食べるの好きなの!ただ料理はあまり上手くなくて……」
「今日は準備する時間ないから、明日のお昼ご飯用に簡単な物作ってあげるよ」
「やった!楽しみにしてるね!」
カエデがルンルンと上機嫌にしながら朝食を食べ進める。
カエデは食べるのが好きなんだな、一緒にいられる間に美味しい物食べさせてあげよう!クエスト終了後に食材買いに行かなきゃね。
「そういえば、俺の魔法にあるストレージって時間経過とかあるのか?」
「ストレージ!?確か収納スキルだよね?良いスキル持ってるの羨ましいなぁ……ご主人様が持ってるスキルってストレージ以外に何があるの?」
「えっと、氷魔法のアイスショットとアイスウォール、鑑定に危険察知があるよ」
「鑑定スキルあるんだ、なら自分のスキルを鑑定出来たはずだからストレージを確認してみたら?あと謎スキルも鑑定してみようよ!」
「自分のスキルも鑑定出来たんだな……試してみるか」
ステータス画面を開き各スキルに鑑定掛けてみる。
アイスショット(氷塊を形成し放つ)
アイスウォール(氷の壁を作り出す、魔力の消費が多ければ多い程大きく作れる)
ストレージ(容量は全体で2階建ての家相当、10個のスペースがある為振り分け可能、各スペースに時間経過ありと無しを設定可能、使えば使う程スペース数が増えていく)
??(???……)
鑑定(目に映る物の詳細を確認出来る)
危険予知(敵意を察知する事が可能)
動物愛好家の加護(動物等から少し好かれやすくなる)
「おお、見れた!ただ?スキルは鑑定しても分からないな……」
「そう上手くはいないみたいね」
「ストレージは分かったぞ、ステータスを鑑定結果を写して見せてあげるから見て」
「え、ご主人様……そんな軽々とステータスを見せるのはどうかなと思うのだけど……」
ステータスは確かに他人に見せるのはよくないだろう、だけどカエデなら大丈夫だと思ってる。
「カエデならいい、みて」
「……分かった、じゃ失礼して……ストレージは時間経過の有り無しを決められるのは有難いわね、やっぱり??スキルの詳細すら分からないね……うん?動物愛好家の加護?」
「そう、転生する時に貰ったんだ。転生前は動物の毛を綺麗に整えたりする仕事をしていたんだ、この仕事を選ぶくらい動物が好きだったんだよ」
トリマーとしても個人的な好みとしても、カエデの尻尾を櫛で毛繕いしてあげたい……櫛ってこの世界にあるのか?あるならカエデに頼んで尻尾を毛繕いしてあげよう。
「そうなのね、動物に好かれる……良いなぁ……」
「加護の動物等に好かれるって書いてるけど、獣人には効くのか?カエデはどう感じる?」
「しっ、知らない!さぁ!ご飯も食べたし早く買い物に行くよ!」
急に動き出したのでコウガからは見えなかったが、少しだけ顔が赤くなるカエデであった。
まずは武器屋へ、中に入るとカン!カン!とハンマーで何かを叩く音が鳴っていた、音のする方へ行ってみるとドアがあり、ドアに張り紙がされてあった。
『御用の方は中へ、中は熱いのでお気をつけください』
と書かれていた、中に入ると鍛造場になっており長剣を叩いてる人が居た、その人の特徴を見るにドワーフっぽく見える。
「おう、いらっしゃい。今ちょっと手が離せないんでな、数分待っててくれ」
「分かりました、武器が欲しいので好きに見て回ってますね」
「あいよ!買いたい武器が見つかればカウンターに置いといてくれ、終わり次第勘定するぜ」
店内を見て回る、俺は物理スキルが皆無で魔法メインなので杖のコーナーへ行き、比較的安めの魔力の杖を手に取った、魔力消費が抑えられるらしい。
「この杖で良さそうだな、魔法練習するなら魔力消費を抑えられるのは効率がいい」
「うん、それ良いと思う!私は素手で戦うから武器は要らないからね」
「分かった、なら防具だけはちゃんとしてくれよ」
「買ってもらうのは少し気が引けるけど……魔物を舐めたら大変な事になるのは分かってるから、お願いするね」
本人からは聞いていないが、ガルムさんからこっそりカエデの成り行きを聞いている、ドラゴンに村を壊滅させられたのだ、何とか逃げ延びて今に至るのだと。
魔物を舐めたら大変な事になるってのは恐らくその事だろう……
杖をカウンターへ持っていくとドワーフの店主が武器を打ち終わってこっちに来た。
背は小さいが体付きがガッチリしててこれぞドワーフ!な姿をしている、目の上にズラしてるゴーグルもよく似合っている。
「待たせて悪かったな、武器屋のドンだ。初心者用のこの杖で良いんだな?」
「はい、魔法を練習したいので!」
「あいよ、2000ノルンだ」
2000ノルンを手渡し杖をストレージに仕舞う。
「ほう……ストレージ持ちか、商人が羨ましがりそうだな」
「やっぱり便利ですね、荷物が少なくなっていいです」
「だろうな、また来いよー!」
武器屋から移動し隣にある防具屋へ。
「いらっしゃいませ!ゆっくり見ていってください!」
防具を見て回る、魔法使いならコート辺りを見ようか。
カエデは篭手を見ている、素手で戦う系の人は篭手とかガントレット辺りが防具になるんだったか、機動力の邪魔にならないように軽いアーマー辺りも欲しがるかもしれないな。
「よし、俺はこれにしよう」
漆黒のコートにした、防御力もそこそこあって目立たないし。
「私はこれにする、ご主人様お願いします」
鉄の篭手と鉄の胸当てを持ってきた、胸当てだけでもしっかり防御力は上がるらしいので納得し購入、合計で8000ノルンだ。
「お買い上げありがとうございました!」
ここの店員は前世のような業務的な接客だな…武器屋のドンさんを見習ってほしいね。
道具屋に到着、若いお兄さんがポーション整理をしていた。
「後はここだな、どんなアイテム欲しい?」
「まずはポーション系は必須かな、回復ポーションと魔力ポーションの2つは必ず持っていくこと!後は非常用として魔除けポーションと解毒薬もあると安心だと思う!」
「分かった、俺とカエデに各ポーション3つと解毒薬を1つずつ買っておこう、カエデの荷物はどうする?俺が持ってようか?」
「いえ、アイテム袋あるから大丈夫よ!消費アイテムと魔物から手に入る魔石くらいなら入るから」
アイテム袋はやっぱりあるんだな、みんなストレージとか持ってるわけじゃないだろうし、必需品なのだろう。
ただアイテム袋はだいぶ小さいように感じる、道行く冒険者をチラッと見てみるとカエデの袋より大きいのを身に着けてるように見える、きっと大中小があるんだろうな。
各アイテムを買い、回復ポーション150ノルン、魔力ポーション100ノルン、魔除けポーション100ノルン、解毒薬200ノルン、計2500ノルン。
こっそりとバスケットも買っておく、お昼ご飯を入れるやつだ
「よし、これで準備完了かな?お昼ご飯にはまだ早いし、ギルド行ってクエスト受けてこようか!」
「わかった!」
ギルドに向かって歩いていくと途中で美味しそうな屋台やお店が並んでいた。
焼串肉、パン屋、クレープ屋?、ドリンク屋、ドーナツ屋?的な屋台が見受けられる、食材屋や肉屋さんも並んで店舗を構えていた。
前世のクレープ的な物はここではクレーフ、ドーナツ的な物はドナッツと呼ばれていた。
「見た目割と似てるのに若干呼び名が違うんだな、しっかり覚えておかないと。しかしここまで似た食べ物があると言うことはやっぱりガルムさんの言う通り転生者が広めたんだろうな」
「ドナッツはおやつとして有名で美味しいよっ! ……ご主人様、折角時間経過の無いストレージがあるんだし、お昼ご飯と良ければおやつも買って行きたいと思うのだけど……だめかな?」
「あぁ、折角だしクエストこなしながら外で食べようか!」
「やった!ありがとうご主人様!」
満面の笑みで喜ぶカエデ、ほんと可愛い、なでなでしたい。
ドナッツ屋→パン屋→肉屋→食材屋と巡って必要材料を購入後、焼串屋に向かうと見慣れない肉を焼いているのが見えた、食材も前世にあったような食材と酷似したものが多かったので助かった。
「この肉って何の肉だ?」
「この地域でこの肉質見るにワイルドボア辺りじゃないかな?あんまり詳しくないから分からないけど」
話していると店主から声が掛かる。
「お嬢さん正解だぜ!ワイルドボアの肉だ」
ワイルドボア、きっとイノシシのような姿で突進してくる魔物なんだろうな。
「じゃ6本お願いします」
「6本だな?すぐ焼くからちょっと待ってくれ」
お肉にタレをかけて両面焼いていく、タレが食欲をそそる。
「はいよ、6本お待ち!1200ノルンだぜ」
「ありがとうございます」
6本を受け取り少し離れてからストレージへ入れる、食材とかなら気にせず入れてもいいが、時間経過がないのは珍しいと判断し、屋台系のすぐ食べられる食べ物は隠れてストレージに入れるようにしている。
「よし、今度こそ準備出来たし、ギルドに行こう!」
ギルドに向かってカエデと隣合って歩いていく。
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