第5話 私の過去2
運ばれている最中、結構な数の魔物に襲われた。
戦うわけにもいかず逃げ続けたが体を吹き飛ばされたり、草木を駆け抜けた事もあり身体が傷だらけになっていった。
意識がどんどん遠くなる……いつしか何も考えられなくなり意識を失ってしまった。
暫く走ったのだろう、ふらふらになりながらも私を背負い走り続けたお父さんの従魔、限界を超えて無理してしまい力尽きて倒れてしまった。
倒れた衝撃で私は地面に投げ出され、その衝撃で目が覚めた。
「ん……ここは……?」
周りを見渡すと見慣れない森の中、周りがかなり薄暗くなっていた。
馬車の通り道なのか道が整備されているところで倒れていた、整備されているこの道を辿れば何処か人の居る所に辿り着くかもしれない、救助を呼ばなければ……
ふとここまで私を連れて来た近くに居た従魔を見てみる、ピクリとも動かない倒れた従魔がスッと影の中へと消えていく、限界が来たら自動で戻る感じだろうか……?死んでないだろうか……大丈夫かな……?
森の中を従魔に乗せられ駆け抜け、擦り傷や打撲跡でボロボロ。
空腹も限界だった……横になったままアイテム袋に入ってる薬草をそのまま口に入れた、効果はかなり薄くそのままだとかなり苦いが生きる為だから……仕方ないよね……
「あれからどれくらい時間が過ぎたんだろう……早く人里に向かって救助を求めないといけないのに体が動かない、それにどっちへ向かえば……?」
痛みで動けない、薬草だけでは空腹も満たせないし歩くエネルギーにもならない。
「道が整備されてるから人は通るはず……誰か通ってきたりししないかな……?」
身体が動かないので、暫く人が来るのを待ったが誰も来る気配はない。
「あ……やばい、眠気が……」
体力も限界だったのかな、さっきまで意識がなかったはずなのに眠気がやってきた。
「寝たらダメだ……寝たら……だめ……なのに……」
「………」
……?揺れているような気がする……?それに体が痛くなくなってる……?恐る恐る目を開けてみると、女の子数人が私の顔に覗き込んでいるのが見えた。
「あっ、起きたっ!ガルムさーん!起きましたよーっ!」
「起きましたか、気分はどうですか?」
貴族っぽい服装、周りの女の子に付けられている首輪……まさか奴隷商人……!?いや、今はそんな事気にしてる場合じゃない、村の事とドラゴンの事言わなくちゃ。
「あ……あのっ……村が……私の居た村、トーラン村にドラゴンが出現したんです!救援要請したいのですが何処かに街はありませんか!?」
「あぁ……昨日トーラン村の近くを通った仲間から連絡がありましたね、酷な話になりますが……村は全滅だそうです、ドラゴンも姿をくらましたのか、姿はなかったとの報告です」
嘘だ……
お父さん……
お母さん……
みんな……
「………」
お父さんはテイマーとしてかなりの力を持っていたはず、精霊も従魔もいたはずだ……それでもドラゴンには勝てなかったのか……
涙が溢れてくる、そして目頭から溢れた涙が頬を伝う。
周りに居た女の子の1人が私の頭を自分の胸に抱き寄せ頭を撫でてくれる。
「うっ……ひっく……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
泣き喚いた私を静かに受け入れてくれる抱き締めてくれた女の子、もう1人の女の子も背中をさすってくれる。
暫く泣き続け、泣き疲れて眠ってしまった、起きたら夕方だった。
「すみません、また眠ってしまいました」
「いえ、あんな事があった後ですから……落ち着きましたか?」
「あっはい、ありがとうございました」
「いえいえ、気にしないでください。かなり身体がボロボロだったので気を失ってる間に時間は掛かりましたが治させて頂きました」
身体を見回すとボロボロだった身体が綺麗になっている、服装は奴隷が着る服になってるのに気付く、隣に破れ放題になってる私の服が畳まれていた。
そういえば、あれからどれくらい時間が経ったのだろう……?
「ありがとうございます……あの、今って何日の何時ですか?」
「今は21の夕刻5時ですね」
「村から逃げて1日以上過ぎてる……そんなに気を失ってたんだ……」
「朝、出発した瞬間くらいに1度起きて、状況を説明して泣き疲れて寝た感じですね……あっ、申し遅れました、わたくしはトライデント王国を拠点に奴隷商人しておりますガルムと申します」
トライデント王国のガルムって聞いた事ある……かなり優良な奴隷商人、奴隷を卑下に扱わず、買い手もしっかり調査してから取引する……って聞いた事ある。
聞いた話、随分迷惑掛けちゃったみたい……奴隷商人に拾われてここまで迷惑掛けたのなら奴隷として付いて行った方がいいかな。
街に行くにしても1人じゃどうする事も出来ないし……
「私はカエデっていいます。あの……ここまでしてもらったのに、私何も返せません……無一文ですし、今冒険者ギルドカードも村に置いてきたままなので街にも入れません……なので奴隷として私を受け入れて貰えませんか……?」
「……いいのですか?状況上こうせざるを得ないのは分かりますけど、自由は利かなくなりますが難民として街に受け入れてもらうって事も可能ですよ?」
本当は奴隷にはなりたくない、だけど……仕方ない……
街に入れたとしても難民がギルドでカードを発行するのも時間がかかり、すぐに仕事するって事も出来なくて困ることだらけなのを私は知っている。
「……はい、決心しました、ここまでして頂いて何も返せない所か難民になって自由が利かなくなる訳にはいきません、早く街に戻りたいので奴隷としてしっかり働きたいのです」
「……なるほど、色々考えた結果なのなら分かりました。奴隷として1番待遇の良い借金奴隷として扱います、金貨2枚の20万ノルンに相当するまでの労働もしくはお客さんに買ってもらうかどちらかになりますね、あとカエデさんを購入すると決めたお客様に対する拒否権も与えます、しっかり見極めなさい」
「分かりました、ありがとうございます」
奴隷として契約をした。
周りの女の子に付けられている首輪と同じ物が付けられる。
「奴隷になっちゃった」
「私達と一緒だねっ、私はモニって言うのっ!よろしくねっ!」
「メイランよ、ドラゴン族だから戦闘とか好きだわ、何かあったら頼りなさい」
「ソルトって言うッス!よろしく頼むッス!あっ自分は砂狼族で足場が悪い所を走るのが得意っス!よろしく!」
「……レイ」
「改めて私はカエデ、狼人族です、よろしくお願いします!」
人族で明るく接してくれるモニ、見た目からも戦うのが得意そうなドラゴン族メイラン、私と種族が似てる砂狼族で〜っスが口癖のソルト、人見知りなのか控え目なエルフのレイ、みんな奴隷だが絶望してる感じはしない、人見知りなレイちゃん以外はみんな笑顔で接してくれる、きっと大丈夫だ。
みんなと自己紹介をしつつお話していたら、馬車が止まり夕飯の支度する為にテント設営するとの事で手伝いにいく。
この日食べた野菜たっぷりスープが忘れられない味になるほど美味しく感じた、食事しながらもみんなと色んなお話をし、悲しい過去を取り払うようにみんなと笑い合う。
私は案の定夜の寝付きは悪かったが、みんなが私が寝付くまで相手してくれたので不安に囚われることなく寝れた。
次の日、日の出すぐに出発の為早く起きて馬車で移動を行う。
魔物と遭遇するが、護衛の冒険者がどんどん危なげなく倒していく。
時間が過ぎ昼3時頃、私は何気なく外を見つめていると上空から人が落ちてくるのが見えた。
「ちょ、えっ!?人が空から落ちてきてる!?」
みんなが上空を見上げる、みんなびっくりした様子だ。
「あのままじゃいけませんね、カエデ!助けてあげなさい!」
「分かりました!」
急いで落下地点まで走る、一昨日と昨日の治療のおかげで全開で走れる。
間に合って!
これが私と今ご主人様になったコウガさんとの出会う前の話。
こうしてこの数日間の事を思い返してる内に寝てしまったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます