第4話 私の過去
全く……コウガったらすぐ寝ちゃって、どきまぎしてた私がバカじゃないのよ……まぁ転生してきたばかりだし疲れていたのでしょうね、仕方ないか。
思っていたように私はやっぱりすぐ寝れなくて色々考え事にふけってしまう、奴隷商館に帰ったら私はどうなるんだろう……
ガルムさんが悪い人には見えないし、噂でもガルムさん率いるインカース奴隷商館は奴隷を卑下せず対等に扱ってくれると聞いてる。
売られ先も重犯罪を犯したりした人ではない限り、しっかり買い手を審査して大丈夫だと判断してから取引してるとも聞く。
ここに拾ってもらえたのが不幸中の幸いだったかもしれない、性奴隷とか永久労働、娼婦にされることはないとは思う。
それでも不安はある、奴隷になってしまった以上はせめて優しくて良い人に貰われたいな……
何だかんだ考えてるうちに昨日起こったあの悲劇のことを思い出していた……
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コウガが異世界へ転生する3日前。
あの日、私はいつも通りの日常をいつも通りに暮らしてた。
「カエデ、今から採集行くのよね?気を付けていくのよー!」
「はーい!行ってきまーす!!」
お父さんが村長でお母さんが薬屋さんをやっている、私はお手伝いとして薬の素材採集をやってたんだよね。
狼人だから視力が良くて鼻も利くのを生かして採集を任された。
「今日もいい天気ー!あーこんな日は日向ぼっこしてお昼寝したいなー」
時間が余れば少しお昼寝しようとルンルン気分でいつもの採集場所へ向かってた。
今日はポーションに必要な薬草、MPポーションに必要な魔力草、睡眠導入薬に必要な眠草が採集対象だったかな。
「あったあった穴場の採集場所!薬に必要な素材結構纏まって生えてるんだよねーここ」
「薬草に、あと魔力草……あったあった、眠草はどこかなー?あっ月化草もあるじゃない、あんま見つからないんだよねーこれ、採集してきましょっと」
必要分の素材たちを採集していく、小さめだけどアイテム袋借りてあるから荷物にならなくて便利なのよね。
結構探し回ったけど眠草が見つからない、ここには無さそうかな……やっぱあそこまで行かなきゃダメか……仕方ない行こっと。
眠草を探しに道を駆ける、この辺は魔物は多くないし出たとしてもゴブリンくらいだけど出会いたくないなぁ、そのまま何もなく目的地まで行けたらいいけど
ふと魔物の気配を感じ伏せて辺りを探る。
「なんて考えてたらゴブリン発見、2体か。面倒だけどそこ通りたいし、やるか」
ゴブリンはこちらに気づいていない、速攻決めた方がいいかな。
狼人族自慢の脚に力を溜め、ゴブリンの元へ一気に駆ける。
「ふっ!」
「ぐきぃ!?」
速度の乗せたパンチをゴブリンの頭に入れる、殴られその場に倒れたゴブリンは動かない、1撃だ。
「はっ!」
「ぐぎゃっ!?」
1発殴った勢いのまま流れるように2匹目のゴブリンを殴りつける、こちらも1撃。
「ゴブリンくらいなら余裕かな、ちょっと手ごたえないなぁ…」
ちなみに私のステータスはこんな感じ。
レベル5 狼人族
スキル
体術D級
身体強化
その他スキル
危険察知
STR E
VIT F
INT G
DEX G
AGI D
私ならどれくらいの魔物と戦えるだろう?オークとかもいけそうかな?もう少し強い敵と戦いたいなぁ。
……なんて軽く考えてた、魔物と戦うっていう事を軽く考えてた。あんなことになるなんて思いもしなかったから……
「着いたー!眠草いっぱいだ!」
眠草が生えてる所に到着、これ採集したら終了だ。
お昼寝はちょい時間足り無さそうかな……残念、指定量の眠草をアイテム袋に入れていく。
「さて、帰ろっ……」
「ギャアアアアアアアアアオ!!!!」
「!?」
声のした上空に顔を上げる、するとデカい飛行体が北の山脈方面から南方面へと通り過ぎていく、あれって……まさか……!?
「ド……ドラゴン……!?な、なんでこんな所に……!?しかもあの方角って……まさか村に!?」
皆が危ない!急いで戻らないと!
脚をフルパワーで動かし村へ走る。
「はっ、はっ、くっ……」
全速力で走っている為に息が上がりふらつきそうになる、でも脚を止めるわけにはいかない、みんなの無事を確認して避難しないと……
「もうすぐ村だ……ッ!?」
ドカンとでかい音が鳴った瞬間、村の方で火の手が上がった。
「みんな……っ!無事でいて……!」
村の北入り口が見えてきた、その先でドラゴンが暴れている。
人影は見えない……みんなはどこに……?体を隠しながら村に入り生存者を探す。
「ひっ……」
村人が至る所で傷だらけな状態で倒れている……1つどころではない、……大量に。
「……」
「お母さん、お父さんは……」
幸いにドラゴンは違う方向を向いているので姿を隠しながらお父さんとお母さんを探す。
「いない……?逃げ切れた……のかな」
ドラゴンの死角周辺には居ないみたいだ、いつまたドラゴンがこっちに来るか分からない、逃げたと信じて早く逃げよう。
村に入った所から反対方向、南の出口の方が今だと近い、出口へ走る、お願い気付かないで……
ガラガラガラッ!
「し、しまっ……」
家に立てかけていた木材に足を引っ掛け倒してしまった。
「ギャアアアア」
やらかした……ドラゴンが私に気付き動き出す、こうなったら全速力で逃げるしかない……
村の出口に走る、村を出ればすぐ森だ、森を使って逃げれば逃げ切れる……走れ私。
ドラゴンが私を追いかけてくる。
「来ないでえぇぇぇぇぇ!!」
追い付かれる……いやだ、しにたくない……
「カエデええええええええ!」
ドラゴンに槍が投げられ目に刺さる。
「ギャァァァァァァ!?」
ドラゴンの目がやられた際に後ろによろけ家を押し倒しながらひっくり返る、これで死んだりしないのは分かりきっている。
「!?お、お父さん!!」
「カエデっ!間に合って良かった……」
お父さんに抱きしめられる、でもすぐにお父さんが離れる、お父さんの周りには数人の槍を持った村人が居た。
「カエデは早く逃げるんだ」
「えっ、お父さんも早く逃げようよ!!お母さんは!?お母さんはちゃんと逃げたの!?」
「……」
「えっ…?」
「……すまない」
お父さんの顔が苦痛に歪む、お母さん……そんな……
「……パパはこのドラゴンを足止めする、逃げたみんなが逃げ切れるように……だからカエデも早く逃げるんだ」
「いやだ……いやだ!!お父さん逃げよう!!一人にしないで!!!!!」
「……、くっ……」
お父さんがそう言って口笛を吹くとお父さんの陰から狼の従魔が出てきて私を背負い走り出してしまう。
何故か降りられない、魔法……?
「いやっ!お父さん!!お父さああああああああああん!」
私は泣き叫びながら遠くなっていく父の背に手を伸ばし続けた。
「元気でな…カエデ、お前にはきっと良い出会いが待っている、そう精霊が告げている」
お父さんはテイマーであり精霊すらテイムしている、なので精霊と言葉を交わすことも出来る。
「カエデの花嫁姿……見たかったなぁ……」
「村長……」
「あぁすまない……村の生き残りとカエデが逃げ切れるまで持ち堪えよう、付いて来てくれるか……?」
「……はい村長、お供しますよ」
「……馬鹿野郎が」
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