　私は、すぐに食べられるインスタント食品やレトルトものが好きだ。特にインスタントラーメンは、小さいころによく父が作ってくれた。

　父はラーメンや蕎麦などの麺類が大好きなので、母が忙しかったり、不在でご飯を作れないときは、自分でインスタントラーメンを作って食べていた。父がインスタントラーメンを食べるところを見ていると、とても美味しそうに見えて、自分でも食べたくなる。そういうと、父が食べ終わった後に作ってもらえるのだが、同じもののはずでも、父が食べていたラーメンの方が美味しそうに思えた。

　そんなわけで、私は昔からインスタントラーメンが好きだったので、一人暮らしを始めたときに、父が私の家にストックを用意してくれた。ある日、友達がうちに来たとき、晩御飯を食べることになったのだが、あいにくうちにはインスタントラーメンしかなかった。すると、友達はインスタントラーメンを食べたことがないとのことだったので、作ってみようということになり、インスタントラーメンを作って、たまたまあったハムやネギをのせて食べた。その時、友達は美味しいと感動的に食べてくれた。口に合わなかったらどうしようと心配していたので、そう言ってくれて良かったと安心した覚えがある。

　それから何年も経って、先日その友達と会った際、インスタントラーメンの話になった。どのメーカーのラーメンが美味しいかを話していたのだが、その時、友達はあの時のラーメンはほんとに美味しかったと言ってくれた。

　今となっては、どこのメーカーのラーメンかもわからないし、そんなに特別なラーメンでもなかったが、友達の記憶に残っていることが、何となく嬉しかった。

　誰かの日常の味が自分のものになったり、自分の日常の味が誰かのものになったり、そんな風に共有できることは幸せなことだ。