第2話 アンドロイドの魂
「ねぇ
ホントに彼、今日もかっこいいね。あたしもイケメン型アンドロイドにしとけばよかったなぁ」
まったりとした昼休み。クラスメイトの
「何言ってるのよ。美憂にはちゃんと彼氏がいるじゃない」
「それとこれとは別よ。どうせ世話を焼いてもらうならイケメンの方がいいじゃない」
教室の後方には、美憂の〔厳しめお姉さん風〕アンドロイドと、ケインが並んで立っている。生徒と同じ数のアンドロイドたちは、下校時間まで生徒たちの見守りをしているのだ。
中には女性型もあるが、役目上強そうな男性型アンドロイドが多い。顔の形や目の色、髪の色は数種類から選べるが、どれも一目でアンドロイドだとわかるように瞳が硬質になっている。人との区別をし安くする為らしい。
紗香はため息をついて美憂の意見に首を振った。
「あたしは……世話焼きすぎるのは、ちょっと嫌だな」
「そぅお? まぁ確かに、近頃のケインくんはちょっと過保護よね。彼を見てると、人格って言うよりか、魂があるんじゃないかって錯覚しちゃう。そう思わない?」
「魂って……」
答えに困って、紗香は曖昧な笑みを浮かべた。
確かに彼の人間臭さは普通じゃない。学校に居る彼しか知らない美憂でも気づく程なのだ。
チラリ、と紗香はケインに目を向けた。
彼はすぐに紗香の視線に気づき微笑んでくる。
「────クローンはともかく、完全に人工物のアンドロイドに魂はないだろ?」
紗香と美憂の会話に、隣の席の
「ええー、でもさぁ、物には魂が宿るっていうじゃない?」
「付喪神のこと言ってるのか? あれは精霊の類だろう?」
「ええっ! 付喪神って精霊なの? 神ってついてるのに?」
「要するに思念の凝縮だろ? 物に魂が宿るとしたら、あと考えられるのは憑依かな」
美憂の疑問を大樹はバッサリ斬り捨てる。
(────憑依か。なるほど)
紗香はもう一度、ケインの方へ目を向けた。
すぐに視線が合わさり、途端にケインはフッと目を細める。視線が甘い。
やっぱり変だ。今までのケインなら、紗香と視線が合ってもニコリともしなかった。危険を回避する以外は、声をかけられるまで待っている。
他の子のアンドロイドだってみんなそうだ。それなのに、今もケインは紗香の方を見てニコニコ笑っている。
(もしかして、本当に憑依だったりして?)
紗香が眉間に青筋を立てていると、大樹の声が聞こえて来た。
「────なぁ、もうすぐ卒業だし、三人で遊びに行かないか?」
「何で三人なん?」
「別にいいじゃん。あ、おまえの彼氏なら連れて来てもいいよ」
「あーわかった! あんた、紗香を狙ってるんでしょ?」
「べ、別にいいだろ。俺たち、もうすぐ別の大学に行くんだぞ! 紗香はボーっとしてるから、変な男に引っかからないか心配なんだよ」
「だって。どうする紗香?」
「え……」
考え事をしていたせいか、紗香はすぐに反応出来なかった。
美憂と大樹に見つめられて、じわじわと顔が火照って来る。
「あ、あたし……好きな人がいるから。ごめん……」
「えっ、好きな人って誰? この学校の奴? 教えてよ」
机に投げ出していた手をぎゅっと大樹に握られ、紗香はますます顔を赤くした。
「ち、違うよ」
好きな人がいると言っても、美憂と違って紗香のは完全に片想いだ。とても彼の名前を口にする事など出来ない。
紗香は大樹の手から自分の手を引き抜こうとしたが、さらに力強く握られてしまう。
「せめてさぁ、誰のせいで振られるのかくらい教えてよ」
大樹の圧に対抗できずに困っていると、スッと色白の手が伸びて大樹の手首をつかんだ。
「紗香に触るな」
ケインだった。
大樹はヒュッと喉を鳴らして、すぐに紗香から手を放した。
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