70_幼馴染と許婚

ここまで聞いて、照葉(てるは)が立ち上がった。


「そのっ・・・セリカくんが、覚えてないから、堀園さんの分まで私が『幼馴染分』を取っちゃってるってことだよね!?」


『幼馴染分』とは!?


「・・・私は、6年分の『幼馴染分』を堀園さんに返したい!」


照葉(てるは)が珍しく力強く話し始めたので、聞くことにした。


「だから、セリカくんがこっちに来てからの・・・6年分の『許婚分』私にください!」


「チョッと待って。そもそも『許婚分』って何!?」


堀園(ほりぞの)さんはお義父様に許可を頂いて許婚になったんですよね!?


「はい、そうです」


「でも、さっきのお義父様のお話では、私と結婚してもいいと思ってた時期もあったって・・・」


「まあ、そんな事も言ってたな」


「堀園(ほりぞの)さんが、『許婚兼幼馴染』なら、私も『幼馴染兼許婚』になりたい!ずっと・・・小さい時からセリカくんの事が、す、好きだったの!」


照葉(てるは)は俺を見ながら告白した。


そのあとで、『言っちゃった・・・』と小さくつぶやいた。



「お義父様はどうですか?」


テレビに向かっても照葉(てるは)は問うた。


『「お義父様」って呼ばれるのがなんか嬉しいなぁ』


ちょっと待て!それでいいのか!?


『セリカと、さくらちゃんと照葉(てるは)ちゃんで決めなさい。好きなもの同士くっついたらいいし、親が縛るものでもないだろう?』


OKとと荒れたのだろう。

照葉(てるは)が感激して飛び上がって喜んでいた。


『聞きたいことは全部か?じゃあな、セリカ。』


「ああ、休みの日にありがとう」


『いや、色々悪かったな・・・俺の息子でありがとう』


そう言うと、言い逃げのようにビデオ通話は切れた。



■引き続き、リビング


「「「・・・」」」


どうするんだ、これ・・・


「セリカくん・・・私も・・・私も『幼馴染兼許嫁』になりました!」


ソファに座っている俺の目の前に照葉(てるは)が立って、声高らかに宣言した。

さくらは俺の横に座っていて、腕にべったり抱き着いている。


「その・・・照葉(てるは)・・・まずは、座ってくれ」


ふんす、と照葉が俺の隣に座った。

言い方が悪かった。

横に座った人間にする話じゃないんだが・・・


「とても言いにくいんだが・・・俺とさくらは、一緒に住んでいるんだよ・・・」


あまり直接的に傷つけないように、ソフト(?)な言い方にないならないように伝えた。


「知ってます!(ふんす!!)」


「え?」


「だって、この間だって、堀園(ほりぞの)さん、家の中のことを知りすぎてたし、土曜日に来たのに、玄関に堀園(ほりぞの)さんの靴ないし・・・」


ヒントは満載だったか・・・


「それは分かったから・・・」


まあ、そうだよな。

伝わったよな。


「私も一緒に住みます!」


「はあ!?」


「堀園(ほりぞの)さんが一緒に住んでいるなら、私も住んでいいってことだよね!?」


なにその飛んでも理論!!


「いや、住むとか住まないとか、そういう話じゃなくて・・・さくら!お前からも・・・」


さくらは俺の手にしがみついて興奮中だ。


「嫌われてなかった♪嫌われてるんじゃなかった♪」


ああ・・・ダメだこれ。


「さくら・・・さん?」


「は!ごしゅ・・・セリカくん!今夜は可愛がってくださいね♪」


聞いちゃいねえ。

視野全体にピンクのハートが飛び交っているのが見えた。

錯覚だよな・・・


「え!?今夜!?可愛がって・・・!?どう言うこと!?セリカくん!?」


照葉(てるは)が俺とさくらを交互に見て、きょどり始めた。


「あ、それは・・・ね」


「とっ、とにかく!私も一緒に住むからね!」


なにこれ!?ラブコメ!?

ラブコメなのかーっっ!?

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