52_青春バスケの利害得喪

俺と本田の1ON1は、後に『青春バスケ』と呼ばれるようになった。

別に勝った方が照葉(てるは)と付き合うという試合ではなかったが、勝者ということで照葉(てるは)の席がクラスメイトによって移動され、俺の隣の席に来た。


照葉(てるは)は最近『賞品』とか『賞品ちゃん』とか呼ばれている。

嫌だろうと持っていたら、何故か、にこにこして嬉しそうだった。

気に入ったのか!?


因みに、本田は『負け犬』の名を付けられていた。

可哀想すぎる。


「チクショー!セリカ憶えてろよ!次こそ、お前に勝って小鳥遊(たかなし)さんを手に入れるからな!」


完全に三下のセリフだ。

しかも、これ、照葉(てるは)への告白になってないか!?

それでも相手にされてない本田に脈はあるのか!?


本田が、俺と照葉に『俺に感謝しろよ!俺のお陰だからな!』と言っていたが、その理由は誰にもわからない。

きっと、本田独特の理論ではないかと予想している。



その後、クラス内では『青春○○』が流行った。

好きな相手に告白する口実に、基本的に自分なら絶対負けない相手を選び、(主に自分の得意な方法で)勝負して勝つというもの。


『青春PK』、『青春水泳』、『青春大食い』、『青春オセロ』などなど。

別にスポーツでなくてもいいらしい。


少なくとも1学期だけで2組はカップルが誕生した。

平和だなぁ、おい。


あとは、『ぷち・ラブレター』が流行っている。

『ぷち・ラブレター』とは、ドラマなどで下駄箱に入っているあれではなく、授業中に回ってくるノートの切れ端の事だ。


折り畳んだ紙の表に『○○くんへ』と宛名を書けば、授業中に意中の相手に届くシステムで匿名可だった。

誰が渡したかを遡れば特定できそうなもんだが、『遊び』なのでそこまで厳格ではない。


この『ぷち・ラブレター』が授業中に俺のところにたくさん届くようになった。

正直、悪い気はしない。


開けてみると『パスケかっこよかった』とか『かっこいい』とか一言しか書かれたいない。


SNSの紙版みたいな感じ?

授業中限定の。


さくらはニコニコしていたが、手元ではシャーペンが真っ二つに折れていた。

芯じゃなくて、本体が!?

『バキッ』っていった、『バキッ』って。


「あれ?寿命だったかな?うふふふふ」


『裏モード』がちょっと出てるから。

漏れ出ちゃってるから!


ただ、バスケットは、さくらから習った3つの技しか知らないし、できない。

たまたま習って、練習していたので、それが役に立っただけだ。


かっこよくなったと言われても、痩せたのは、さくらの食事のお陰だろうし、運動だってさくらがいなければしていなかっただろう。


そういった意味では、さくらの手柄だろう。

俺は、ハリボテだ。

見た目は取り繕えても、中身はない。

とても誇らしい気持ちを持つことなんてできない。



ふと、照葉(てるは)の方を見たら、こいつも『プチラブレター』を書いていた。

誰に渡すのかと思っていたら、黙って俺の机の上にそっと置いた。

 

「お前もか!」


(スパン)「いたっ!痛いよ!セリカくん!酷いなぁ」


しまった。

最近の癖で照葉(てるは)にもツッコミのチョップを喰らわせてしまった。


ただ、照葉は普通の反応だった。

俺も『ごめんごめん、つい・・・』なんて言って普通のフォローした。


俺もさくらのリアクションをどこか期待するようになってる・・・

変態の仲間入りをし始めているのだろうか・・・



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何だよ「青春バスケ」って・・・

キャラたちが勝手に考えて、勝手に命名しました。

「ぷち・ラブレター」とか、プロットにないのに勝手に始めちゃって・・・

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