50_セリカと本田の1ON1前編
翌日の体育は、本田の情報通りバスケだった。
特に目的のないバスケに誰もモチベーションを見出していなかった。
教師もやる気はないらしい。
みんなダラダラとバスケをしていた。
体育館の中央に張られたネットで2クラス分の男女が分けられていて、向こうもバスケらしい。
さくらもこっちに気づいたのか、下の方で小さく手を振ってくれた。
俺は右手をあげて答えた。
そんなことをしているタイミングで、担当の教師が放送で呼ばれたので、一瞬席を外した。
その時だった。
本田がステージに上がって音量MAXで宣言した。
「小鳥遊(たかなし)さんー!」
急にでかい声を上げたので、それまで体育館はキュッキュッと運動靴の音が響く感じだったが、一気にシンとした。
「ひゃ、ひゃい!」
照葉(てるは)が返事した。
体育館にいる全員がステージ上の本田に注目した。
「俺は今からセリカとバスケで勝負するー!」
そんなでかい声で宣言しなくても。
1ON1ならするよ?
「小鳥遊(たかなし)さん!勝ったら俺と付き合ってくれーー!」
「「「ええー!?」」」
体育館にみんなの声が響き渡った。
「まじ!?まじ!?」
「ひゅー!」
「やるー!」
「なぜこのタイミングで!?」
色々な声が囃し立てる。
みんなは照葉(てるは)に注目した。
こういうのに弱いのが照葉(てるは)だ。
もじもじして、何も言えないでいる。
顔も真っ赤だ。
これは助け舟を出さないと!
「なあ、本田・・・お前・・・」
「セリカ!うるさい!俺はお前に勝つ!」
本田も、もう頭に血が上ってしまっている。
「いいぞ!やれやれ!」
「ああ、俺なんか今、青春のど真ん中にいる!」
「本田、あいつバスケ部じゃなかった!?」
「鳥谷部って帰宅部だろ?ヤバくね!?」
体育館は大騒ぎだ。
そして、この流れをもう誰も止められない。
お祭り騒ぎになったときの高校生は熱い。
男女2クラス分全員がコートの周りに集まっていた。
「「「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」」」
何か変な掛け声で全員の声が揃っている。
「ルールは1ON1で先に10ゴール取った方が勝ちだ」
本田がどや顔でルール説明をする。
しかも、それだけかよ。
「ちょっと待て。お前バスケ部だろ。俺は帰宅部だぞ?ハンデは!?」
「だから、どこから入れても1ゴール1点だ。分かりやすいだろ?」
「それはハンデとは言わん」
そこにさくらが入ってきた。
「あの・・・本田くん、それはやめた方が・・・」
「堀園(ほりぞの)さんは黙っててくれ!第一、堀園(ほりぞの)さんは俺の味方だろ!?」
「え?え?」
さくらが混乱している。
そりゃあ、そうだ。
本田の話はいつも支離滅裂だ。
本人だけは分かっているのかもしれないが、基本的にバカなのだろう。
相手に伝わっているかなんてお構いなし。
「じゃあ、一応僕が審判を買って出るよ」
豊田が前に出た。
いや、ここは止めるべきところだろ。
「本田くん超ウケる。」
いじわるな顔で豊田の横に立っているのは、豊田の彼女、六連星(むつらぼし)朱織(あかり)だ。
長いツインテールをくるくると指で弄びながら、状況を楽しんでいる。
「よし!お前からだ!」
本田がボールをワンバウンドさせて俺によこす。
ここで俺は負ければいいのだろうが、そしたら、照葉(てるは)はどうなるのか!?
ドリブルを何度かして、ボールの固さを確認しつつ、考えてみるが・・・何も思いつかない。
もう、普通にやって、負けたらいいんじゃないだろうか。
「セリカくん・・・あの、やめた方が・・・」
さくらが心配して声をかけてくれた。
本田とも中学からの付き合いだ。
バカに付き合って、バカをするのもいいだろう。
「よし!」
俺も自分に気合を入れるために小さく掛け声をかけて、スタート地点に着く。
本田にパスをして、受け取ったらスタートだ。
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次回更新は本日13時です。
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