47_美少女のお弁当

昼休みに、みんな昼食を食べようとしたとき、本田が提案してきた。


「なあ、セリカ。お前も弁当なら、みんなで食べないか?」


席を付けて一緒に食べようということだろう。


「みんなって、いつもの俺とお前と鈴木とかじゃなく?」


「ああ、堀園(ほりぞの)さんが、みんなと交流する意味でもさ、堀園(ほりぞの)さんと小鳥遊(たかなし)さんも入れてさ」


「え!?私!?」


照葉(てるは)が驚いた。

きっと事前には聞いていなかったのだろう。

また本田の思いつきだ。


まあ、普段俺が弁当じゃないから、そんな計画すらできなかっただろうが、俺が弁当箱を出すところを見られていたようだ。


とはいえ、悪い話じゃない。

さくらが、クラスメイトともっと溶け込みやすくなるはずだ。


「いいな、それ」


「さくらもいいかな?」


「はい、私は構いませんが・・・」


どうやら、また失敗したらしい。

本田の方を見て理解した。


「お前、堀園(ほりぞの)さんを下の名前で呼んでんのな」 


しまった。


なんとなくうやむやにして、机を付けて、俺、さくら、本田、鈴木、照葉(てるは)の5人席を作り、それぞれ弁当を取り出した。


「あ、小鳥遊(たかなし)さんは、いつも自分で弁当作ってるんだったよな」


本田が照葉(てるは)に話を振る。


「え、あ、うん。お母さんがお父さんの分を作るから、一緒に作ってるの」


「小鳥遊(たかなし)さんは家庭的だなぁ」


「そ、そうだな」


「え?なに?どうしたの?」


なんだこのぎこちない会話。

どうした本田と鈴木。

照葉(てるは)も困ってるじゃないか。


そんな中、照葉(てるは)がお弁当のふたを開ける。

俵おにぎり2個。

これにはふりかけがかかっている。

その上に海苔をカットしたものが敷かれてあり、にぱっと笑ったおにぎりになっていた。


ミートボールが数個。

恐らくこれがメインだろう。


その他、ちくわの中央にカットしたきゅうり詰められたもの。

中央の玉子焼きは斜めにカットしたものを180度回転させて、ハート型にしてあった。

赤、シロ、茶、緑、黄色と5色もありきれいで、可愛い弁当だった。


いかにも、照葉(てるは)らしい。

いかにも、女の子らしいお弁当だった。


「あ、カラフル!女の子のお弁当箱って感じ!」


どうした本田。


「もー、やめてよ本田くん」


「でも、セリカもそう思うだろ?」


「確かに」


「え?そ、そうかな?こんなことなら、もっと気合い入れて作ってくればよかったよぉ」


次に静かにふたを開けるさくら。


「わぁ、堀園(ほりぞの)さんのお弁当きれい!」


これに照葉(てるは)が食いついた。

さくらの弁当は、バランスよく、かつ彩りよく盛られていた。


ごはんの中央には梅干し。

メインは焼き鮭かな。

チーズを肉で巻き甘辛く炒めたものもある。


玉子焼きの黄色、ブロッコリーの緑、きんぴらごぼうの茶色、ニンジンの赤。

中に手が込んでいる。

一体何時に起きて作ったのか・・・


ちょっと待て。

俺の弁当は当然さくらが作ってくれたものだ。

大きさこそ違えど、ふたを開けたら同じ内容で、一緒に住んでいることがバレてしまうのでは!?


「セリカは?」


しまった。

逃げられない。

観念して開けるしかない。


えーい、ままよ!


(がばっ)


「おー、何かすげえな!気合入ってる。自分で作ったのか?」


「ま、まあな」


さくらは、お弁当のレイアウトを変えて、同じ内容だと分かりにくくしてくれていた。

唐揚げやエビフライ、枝豆なども入っているので、随分印象が違う。

さすがだ。


ここで俺は失敗に気づいた。


「あ・・・」


「ああ、ごめんなさい。お箸こっちに入っていました。」


さくらが慌てて箸を取り出し、渡してくれた。


「「あ・・・」」


凍り付く一同。


「せ、セリカの弁当、色々入っていて旨そうだな」


「お、おう、ありがと」


ここで、もう一つ失敗した。


「あ、エビフライ・・・」


「あ、ソースは小袋のを持ってきています」


「「あ・・・」」


傷口は浅い・・・はず。

失敗はこれだけで、弁当を食べ終えた。


「ふー」


「はい、ホットコーヒーです」


「え?コーヒー?」


さくらがコーヒーを出してくれた。


「保温の水筒に持ってきてみました」


「あ、まだ熱い。ありがと」


「カフェオレは、牛乳の菌の繁殖が怖いので、念の為ブラックにしました。ごめんなさい」


「いや、全然いいよ」


「「あ・・・」」


凍り付く一同。


口火を切ったのは本田だった。


「さっきから、なんだその夫婦感!」


「甘いんだよ!甘々なんだよ!」


鈴木が援護射撃してきた。


「そうかなぁ・・・」


俺としては普段通りに振舞ったつもりが・・・


「付き合ってるんだろ!?いつからだよ!?」


「実は・・・昨日から・・・」


バレてしまってはしょうがない。


『一緒に住んでいる』ことを隠すために、『付き合っている』ことを犠牲にした。

肉を切らせて骨を断つ・・・は今、関係あるか?


「はあ!?昨日?その感じで昨日から!?」


「学校帰った後!?」


「青春だ・・・青春野郎がこんな近くにいた・・・」


本田と鈴木が放心状態に近い状態になってしまった・・・


照葉(てるは)に助けを求めようと思ったら・・・


「付き合ってるんだ・・・やっぱり付き合ってるんだ・・・(ぶつぶつぶつぶつ)」


何かをぶつぶつ言い始めてバグってしまっていた・・・


昨日付き合い始めたのに、すぐにバレてしまった。

そんなに雰囲気って変わるものなのだろうか・・・


「セリカくん、きっとそれは違うと思いますよ?」


さくらが俺の思考を読んだのか、何も言ってないのに、ツッコミを入れてきた。

もしかして、俺は分かりやすいヤツなのでは・・・



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深夜のゲリラ更新です。

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