43_千早と照葉

授業が終わって、照葉(てるは)ちゃんの教室に行った時、彼女は抜け殻になっていた。

抜け殻、燃えかす、屍(しかばね)・・・


椅子には座っているけれど、天井を見て、口が開いている。

両手は力なくだらんと下がっていて、目の焦点は合っていない。


私、有栖川(ありすがわ)千早(ちはや)は、照葉ちゃんとは中学からの付き合いだけど、こんな彼女を見たことがなかった。


何があったのかは予想がついていた。

今朝、校門付近で女子に抱き着かれていたのは、鳥屋部(とやべ)くんで間違いない。


昨日クラス内のグルチャで写真が回ってきていた。

劇的に変身して、別人の様にかっこよくなったと、クラスメイトが騒いでいた。

その時から、何となく嫌な予感はしていたのだ。


それでも、照葉(てるは)ちゃんはいつも通り。


それが彼女の良いところでもある。


そして、今朝のホームルームの時の騒ぎ。

隣の、うちのクラスまで騒ぎが聞こえてきていた。


美人転入生が誰かの婚約者・・・みたいな話だったと思う。

それでピンときた。


あの、他校の制服の女子が美人転入生だ。

そして、鳥屋部(とやべ)くんの婚約者ということになる。

だとしたら、照葉(てるは)ちゃんは?


休憩時間にはクラスメイトに捕まって見に行けなかった。

放課後、照葉(てるは)ちゃんを見に来てみたら、廃人のようになっていた。


鳥屋部(とやべ)セリカ・・・


私の照葉(てるは)ちゃんにこんな仕打ちを!


あいつは、中学校の時から冴えないやつだった。

照葉(てるは)ちゃんは何でこんなヤツを・・・と思ったけれど、照葉(てるは)ちゃんが幸せなら、それでいいと思っていた。


彼女は本当にいい子。

素朴だし、いつも一生懸命。

そして、一途だった。


好き。

私は、彼女を親友だと思った。


照葉(てるは)ちゃんは小さい時に名前のことで、近所の男に子に揶揄われていたらしい。

それを助けたのが、鳥屋部(とやべ)くんだったと。

この話はもう何度も聞いていた。


私は聞かされるたびに、初めて聞いたように振舞った。

それは、私も小さい時に『アリス』とあだ名をつけられてそれが嫌だったことが原因だ。


照葉(てるは)ちゃんの話には親近感を感じた。

すぐに仲良くなって、親友にもなった。


そんな気持ちが、何年も続いて、最近・・・自分の中で少し違うことに気がついてしまった。


『照葉(てるは)ちゃんを誰にも渡したくない・・・』


私は、人として、照葉(てるは)ちゃんが好き。

でも、私は女としも、女の照葉(てるは)ちゃんが好き。

誰にも渡したくない。

あの鳥屋部(とやべ)くんにも・・・



もしかして、今は格好のチャンスでは!?


転入生の姿を見ることはできなかったけれど、隣のクラスの騒ぎ具合と、照葉(てるは)ちゃんのこの様子を見れば大体わかる。


照葉(てるは)ちゃんは勝ち目がないのだろう。

そして、それを認めたくない自分と、認めてしまっている自分が戦っている。


声をかけたら、『一緒に帰ろう』と元気を装って言っていたけど、足元がふらついているし、まっすぐ歩けていない。


私は照葉(てるは)ちゃんが落ち込んでいるときに、傍(そば)にいるだけでいいのかもしれない。

彼女が自暴自棄になったときに、すぐ隣にいて、私が照葉(てるは)ちゃんの味方だと伝えるだけでいい。


それだけで、彼女が私のものに・・・私だけのものになるかもしれない。

でも、今は、今だけはもう少し心の中に秘めておこう。

ただの親友の有栖川(ありすがわ)千早(ちはや)でいよう。


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