41_割れるクラス

今思い出しても逃げ出したい。

さくらが、うちの学校に転入してくることを、俺は知らなかった。


俺の周囲の人は、俺に情報を渡すと死ぬ病気なのか!?

何故教えてくれない。

いや、俺が他人の話を聞いていないだけなのか!?


さくらが、俺の許嫁だと暴露したホームルームの後、クラスは真っ二つに割れた。


1つは、男の集まり。

昨日のスポーツカーのお姉さんは誰だ。

堀園(ほりぞの)さくらが許嫁というのは本当か。

概ねこれだけを聞いているのだが、興奮していて話にならなかった。


俺は何故かヘッドロックされたり、アイアンクローされたりした。

全く意味が分からない。

理不尽だ。


覚えている他の質問はこんなだった。


- 『許嫁』とはどうやって作るのか。

そんなの俺の方が聞きたい。


- どこまで行ったのか。

一番遠いのは一番遠かったのは、バスケットコートがある公園かな。

答えを聞いたやつが、何故かガッカリしていたが。


- 家は近所なのか。

まあ、『近い』とだけ答えた。

まさか、一緒に住んでいるとは言えないからな。

きっと俺の命が危ない。


- いずれ結婚するのか

付き合ってもいないのに、結婚する訳がない。


- 三角関係か

誰を含めて三角関係になるんだ。


- 照葉(てるは)はどうするのか

質問の意味が分からない。


- もうキスはしたのか

していない。

されたことがあるが、あれは本人曰くよだれを舐めただけらしいので、ノーカンとした。


とにかく、みんなの目が血走っていて怖かった。

1時間目の先生が来てからも興奮は収まっておらず、見かねた豊田が止めに入ってくれた。


やっぱり、豊田は良いやつ。

身も心もイケメンだった。


女子の方も、さくらがもみくちゃにされていた。

ぐるり1周囲まれて、ワイワイしている感じ。


外から見た感じでは『恋バナ』っぽかったので、男の方のアイアンクローよりも穏やかっぽかった。


後でさくらからどんなことを聞かれたか、尋ねてみた。


- 許嫁ってどういうこと?

お義父さまに見初められて、許嫁になりました。

セリカくんとも結婚の約束をしています。


だから、それはまだ小さい時の話で、俺は覚えてすらいないってのに!


- 鳥谷部(とやべ)くんのどこが好きなの?

全てです。


ホントに!?ほんとにそう答えたの!?

俺、社会的に抹殺されないかな!?


- 鳥谷部(とやべ)くんが最近かっこよくなったのって堀園(ほりぞの)さんが関係ある?

ご想像にお任せします。


- もうキスはした?

ご想像にお任せします。


- その後のこともご経験済み!?

ご想像にお任せします。


大概、ご想像にお任せしちゃいけないところを任せちゃったな!



この日は、5分休憩、中休みと時間があるごとに人が集まってきて大変だった。

さくらの席も何故か俺の隣に設定されていたし・・・


そして、今朝まで「セリカ」と呼ばれていた俺は、中休みの頃には「旦那(だんな)」とあだ名が上書きされていた。

一瞬だけだよな!?

これ定着しないよな!?


さくらは、「嫁(よめ)」と呼ばれていた。

これも定着しないで!


ただ、つかみはOKだったみたいで、さくらはいきなりクラスの女子に溶け込めた。

しかも、その目立つルックスから、かなりにぎやかなグループ、カースト上位のグループと仲良くなったようだ。


処世術も完璧かよ。

『ミス世当たり上手』の称号を与えておこう。



昼には解散だったので、ここで心が緩んでしまい、俺は痛恨のミスをしてしまった。


「はー、やっと終わった。帰ろう。さくら」


「はい、セリカくん」


俺はほとんど何も入っていない鞄を手に取り、帰りの準備をする。


「まだしばらくこの調子だと思うと気が滅入る・・・」


「じゃあ、今夜は美味しいものにしましょうね!」


「ああ、頼むよ」


「あ、セリカくん。玉子を買いに行かないともうないです」


「え?そうなの?じゃあ、帰りにスーパー寄るか。一度帰るともう出たくない・・・」


「ふふ、セリカくんらしいです」


「ちょちょちょちょちょ!ちょっと待ったぁ!」


また本田と鈴木だ。

松田は部活か?


「今のどういうこと!?今のどういうこと!?」


「堀園(ほりぞの)さんがセリカ一緒に帰るの!?家近いの!?そして嫁が夕飯つくるの!?」


しまった。

俺にとって、さくらがご飯を作ってくれることは『当たり前』になっていた!


「しかもなに!?しかもなに!?今の甘々な会話!」


「新婚さんか!新婚さんなのか!?」


「俺達を悶え殺させる気なの!?」


「あ、いや、ほら・・・冗談・・・冗談だから・・・」


「お前!目がめちゃくちゃ泳いでんじゃないか!」


「バシャバシャ泳いでんじゃないか!」


本田にヘッドロックをかけられる。


「痛いから!マジで痛いから!」


さくらも笑っていたから良いのか?

結局、男子の方からも好かれ、女子の方でも好かれているさくら。


本当にすごい。


あと、さくらが俺の家に入り浸っていると思い込んだみたいで、2人は俺の家に遊びに来ると言っていた。


俺の家、トリニダード・トバゴあたりに引っ越したことになんないかな?


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