34_美少女のお帰りなさい
とりあえず、家には着いた。
幸い駐車場が広めなので、難なく駐車できたみたいだ。
ぶつけたら大変なことになってしまう。
栞さんは、自動車を降りた後、色々チェックしたり、鍵をかけたり、指さし確認で何かやってる。
俺は将来、絶対高級車には乗らないだろうと思った。
一足先に俺は、玄関のかぎを開けてドアを開ける。
(ガチャ)玄関を開けるとそこには、ピンクのエプロンを着けたさくらが待っていた。
「お帰りなさい、セリカくん♪」
「お、おう」
玄関で靴を脱ぐ俺。
「ひとりで寂しかったぁ。ねえねえ。食事にする?お風呂にする?そ・れ・と・もぉ、わ・た・し?」
ドラマなどでは見たことがあるが、リアルでやられるとニヤケというか、笑いが出る。
俺は、額に手を当てて、自分のニヤケを抑えるのに必死だった。
そこに『降車の儀式(?)』を終えた栞さ(しおり)んが入ってきた。
「なになに!?新妻?新婚さんプレイ?」
「あ、いや、これは・・・」
俺がわたわたしていると、さくらが畏まり、大きくお辞儀をしてから言った。
「いらっしゃいませ。私はセリカくんの許嫁の堀園(ほりぞの)さくらと言います。今日は、ようこそいらっしゃいました」
満面の笑顔だ。
さくらの『表モード』が絶好調という感じ。
「え?え?え??どういうこと!?あなたがさくらちゃん?一緒に住んでるってこと!?」
明らかに慌ててる栞(しおり)さん。
「どうぞ、中にお入りになってください」
さくらが中に案内する。
「え?セリカくんのことだから、ごみ屋敷になってると思って、来たのにすごく片付いてる!しかもきれい!」
「はい、私が掃除しました」
「嫁か!」
栞(しおり)さんがツッコミ役になっている。
「リビングにどうぞ。あ、もうすぐご飯が出来ますけど、よかったらご一緒にどうですか?」
「え!?ご飯できてるの!?嫁か!」
栞(しおり)さんは、何が起きたのか分からないという感じで、家中確認して回っていた。
さくらが、その後に着いて行っている。
「え?お風呂も沸いてるの!?」
「一応、『お風呂』を選ばれた時のために沸かしておきました」
「あ、あの入り口の・・・コントかと思ってのだけど・・・嫁か!」
脱衣所でもきょろきょろする栞(しおり)さん。
「あ、洗濯物もない!」
「あ、お洗濯は終わって、いま干しているところです」
「嫁か!」
栞(しおり)さんは、2階の方も見に行った。
『後見人』だから、色々と知っておかないといけないのかもしれない。
単に興味のような気もするが・・・
「セリカくん!」
「あ、ただいま。さくら」
「はい、お帰りなさい」
笑顔で迎えてくれた。
さくらの笑顔は癒されるなぁ。
今日一日とにかく疲れた。
家に帰ってきて疲れが安らぐ感じだ。
ほわ~っと、しかかっていたところをさくらに呼び戻された。
「セリカくん!お客様がいらっしゃるなら事前に教えていただかないと!おもてなしの準備などもあるんですから!」
「ああ、ごめん。俺も知らなくて・・・」
(バタバタバタ)
栞さんが走ってきた。
「嫁か!」
「とりあえず、コーヒーでもお出ししますね。リビングにどうぞ」
さくらの案内で、リビングのテーブルについた。
キッチンでは、さくらがコーヒーを準備してくれている。
「なにあれ、さくらちゃん?結婚したの?」
栞さんが不満そうに聞いてきた。
「いや、『許嫁』は本人が言ってるだけで・・・行くところがなくて、困ってたから泊めた」
「猫拾ってんじゃないんだから」
「まあ」
「あんなアイドルみたいにかわいい子を囲っちゃって!いやらしい!」
栞(しおり)さんは、責めるような目で言った。
「べ、別に何もしてないよ」
「はぁーあ、おじさんから頼まれたから来たのに・・・」
「父さんから?なんて?」
「さくらちゃんの手続き色々とセリカくんのこと。急にきて驚かそうとお思ったのにぃ!」
「めちゃくちゃびっくりしたわ!俺クラスでいじめられたらどうすんだよ」
「きれいなお姉さんが高級スポーツカーで迎えに来るなんて、高校生男子の夢かなぁと思って」
栞(しおり)さんが笑いながら言った。
「普通の高校生と、高級スポーツカーに乗ってるお姉さんがどこで知り合うんだよ」
「あーあ、部屋とか汚いと思って、掃除に行ってあげようと思ったのにぃ」
そのために明日は有給取ったということだろうか。
「そりゃあ、ごめん。ありがと」
「せっかく、セリカくんを甘やかそうと思ったのに~、先にとんでもない美少女に仕事全部取られちゃってたぁ」
「後見人は甘やかす人じゃないからね」
「なんか、こう・・・ちょっと見ないうちに、セリカくん男らしくなってるしぃ」
「そう?」
「私の知ってるセリカくんは、片付けが出来なくて、料理もできなくて、放っておいたら1日だらだらしてて、髪はぼさぼさで、服はよれよれ~のイメージだったのにぃ」
「俺、いいとこないなぁ」
「でも、『私が何とかしないといけないっっ』っていう母性的な何か、で『きゅーん』としてたのにぃ」
また変なことを言い始めるやつが現れた。
「あの美少女ちゃんね!私のセリカくんを、こんなにちゃんとした男にしたのは!もう、美味しいところが残ってないじゃない!」
人を噛み終わったガムみたいに言わないでいただきたい。
朝起こされて、ご飯作ってもらって、掃除、洗濯、果ては着るものまで準備してもらっている俺のどこが『ちゃんとしている』のか・・・
苦笑いしかでない・・・
「セリカくんのお世話は私の仕事です」
さくらがコーヒーを3個お盆に載せて持ってきた。
うちにもお盆があったのか。
初めて見たぞ。
(コトリ)「どうぞ」
コーヒーを栞さんに出す。
その後、さくらは俺の隣の席に座った。
「はい、セリカくんはこれ」
いつも通りの牛乳入りのコーヒー、カフェオレだ。
「ありがと」
「何これ!?新婚さん!?独身の私には毒だわ~」
「ふふふふふ。栞さんには、私の後見人にもなっていただけるって聞いています。よろしくお願いしますね」
座ったまま頭を下げるさくら。
「はー、やるわねぇ、この子。勝てる気が全然しないわ」
栞さんが、さくらと何を競うというのか。
「今日は、どういったご用事で?」
「久々に家の掃除と、後見人として一応生活を見に・・・だったんだけどねぇ」
部屋中を見渡して、仕事がないことを理解した栞さん。
「セリカくんのお世話なら、許嫁の・・・将来結婚することになっている私が務めさせていただいていますので、ご心配なく」
ああ、さくらの笑顔が・・・『表モード』の笑顔は何故か怖い時がある(汗)
「ああ、私の・・・純真無垢だったセリカくんはどこ!?もう、あのセリカくんはいないの!?」
「はい、私のセリカくんしかいません」
さくらがにっこり答える。
すいません。
俺は、さくらにダメ人間にされちゃってます・・・
「あ、栞さん、お昼ご飯の準備が出来てます。焼きそばなんですが、召し上がりませんか?」
「そおねぇ。ちゃんと料理できるか見極めないといけないからね。後見人として」
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いっぱいリアクションいただいたので、追加更新しました!
今日中にもう1回更新します!
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