29_美少女と明日の約束

恐れてはいたが、ベッドに入るとさくらも入ってきた。


「おじゃましまーす♪」


3月後半と言ってもまだ寒い。

確かに誰かと布団に入るというのは温かいが、色々と大変だ。


夜中に3度はトイレに行く必要がある。

そして、しばらく帰ってこれない(汗)


布団の中で、にこにこしながらさくらが見つめてくる。

大きな目がこちらを見ているのでドキドキする。


しかし、改めて顔を見ると、本当にかわいい。

すごく整っている。


そんな中、前髪だけが斜めにカットされていて、ちょっと違和感がある。

そこがまたチャームポイントになっているのだが。


「さくらは前髪が斜めにカットされているんだな」


「あ、これは自分でカットしているんです」


「前髪を?それとも全部?」


「さすがに全部はカットできません。前髪だけです」


「こだわり的な?」


「まあ、こだわりと言えばこだわりでしょうか・・・」


「あと、寝る前でも顔が変わらないけど、風呂あがってもメイクしているってこと?」


「え?私はメイクしませんよ?」


まじか。

この可愛さは、作られたものかと思っていたが、すっぴんだったとは・・・


「高校生だったので、学校にメイクしていくのはちょっと・・・都会ではみんなメイクしているのですか?」


「いや、どうだろう。俺も詳しくは知らないが、メイクの話をしているのは見かけた気がする」


「学校には可愛い子はいるのですか?狙っている・・・みたいな」


「そんな相手はいないよ。別にモテないしな」


「それはクラスの女の子達は見る目がありませんね。でも、そのままでいてください。私にだけモテていたら十分です」


また揶揄(からか)うようなことを言って・・・

目の前にこれだけ可愛い子がいたら、クラスの子に目が行くとは思えない。


「あれ?何か不満そうですね?セリカくんはそのままで十分なのですが、ちょっとだけモテるようにしたいと思ったら、とりあえず、髪の毛のカットをしてみてはどうでしょう?」


「今でも月に1回くらいはカットしてるぞ?」


「いつも同じお店じゃないですか?」


「そうだけど」


「じゃあ、明日は私がカットします!」


「え!?」


「あ、『カットなんかできるのか!?結局坊主にされたりしないか!?』と思っていますね!」


「いや、そんなことは思っていないが・・・」


女の子に髪を切ってもらうってどんな感じなのだろうか。

考えただけでもドキドキする。


「セリカくんの髪の毛は、ちょっと生え方に癖があるので、微妙に切り方を変えることで、すごく印象が変わります」


「そんなもんかね」


「はい、あと、シャンプーはやめて、ボディソープで髪の毛を洗ってみてください」


「それって・・・」


「セリカくんの髪の毛って、かなりやわらかい方(ほう)です。今のシャンプーは固い髪用のシャンプーなので、髪の毛が柔らかくなりすぎて全部寝てしまいます」


「ああ、思い当たる節があるわぁ」


「ボディシャンプーだと洗った時はちょっとキシキシするかもですが、翌日はきりっとしますよ」


「へー。試してみようかな」


「美容室『さくら』もごひいきに」


「じゃあ、お願いしようかな」


「はい、お願いされました。じゃあ、おやすみなさい。セリカくん」


「ああ、おやすみ」


・・・そう言っても、この状況ですぐに寝ることが出来ないのが男子高校生というもの。

色々やわらかいし、いい匂いするし、全然寝るモードじゃない。

むしろ臨戦態勢だ。


かといって、手を出すというのもなんとなく・・・


さくらは、無防備というか、無警戒というか、ベッドで俺の横ですやすやと眠ってしまっている。

他人の寝息が聞こえるというのも変な感じで。


色んな意味で寝付けない。

とりあえず、トイレに行こうとベッドから抜け出そうとすると、パジャマの裾を桜が握っていた。


さくらは変わらず眠っている。

眠る時に握ったみたいだ。


これでは動けない・・・

こいつは俺に何をさせたいというのか!?


今夜は寝付けるのか、俺!?


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