28_セリカの買い忘れ

風呂の準備もいつの間にかされていて、普通に風呂に入った。

これまでシャワーの生活だったので、何となく新鮮だ。


朝起こされて、ご飯を作ってもらい、掃除してもらって、洗濯してもらって、昼ご飯も作ってもらう、洗濯物を取り込んでもらい、畳んでもらい、片付けてもらう。

そして、夜には夕ご飯を作ってもらって、風呂を沸かしてもらって・・・俺って完全にダメ人間になっている気がする。


特にごはんは、さくらが作ったものがいい。

昼間食べたファミレスのハンバーグと夕飯に食べたさくらのハンバーグ。

圧倒的にさくらが作ったものがおいしかった・・・


そして、もう一つ俺は失敗したことに気が付いた。

布団を買い忘れた・・・

せっかくショッピングモールに行ったのに・・・


案の定、夜にはパジャマ姿でさくらが俺の部屋に来た。


「あのー、俺がソファに寝るという案は・・・」


「却下です」


笑顔で却下された。


「俺が父さんのベッドで寝るという案は・・・」


「却下します」


「さくら、男と一緒にベッドに入ろうって、どういうことかわかっているのか!?」


「もちろんです!」


「じゃあ、一緒はダメだろ」


「いえ、一緒でないとセリカくんのお世話ができません!」


ベッドの中で、どんなお世話があるというのか。


「あ、お前、俺が困るのを見て楽しんでいるだろう!」


「あは」


(スパン)「あふん♪」


「お前は、自分が美少女だということを、もっと自覚してくれ。俺が困る」


「セリカくんから見て私は『美少女』ですか?」


「そ、そうだと思うけど?」


「ちょっと、ちゃんとよく見てください」


さくらが上目遣いで見つめてくる。

見てと言われたら目をそらすわけにはいかない。


じー ←さくらこっち見てる


じー ←俺、さくら見てる


すっ ←さくら、目をつぶり顎を少し上げキスの体制


ズビシ ←額に俺のチョップがさく裂した音


「ちょっ!ごしゅ・・・セリカくんひどいです!目をつぶった女の子にチョップをくれるなんて!」


「だから、裏で『ご主人様』って呼ぶのもやめれ!」


「な、なんでそんなことが分かるんですか!」


「ちょいちょい漏れてるんだよ!」


「あ」


本当なのか!?

本気で無自覚なのか!?

素で恥ずかしかったのか、さくらは耳まで真っ赤だ。


わからねぇ。

うちの美少女様は言動が読めない。


「色々してくれなくても、好きなだけうちにいていいんだからな」


頭を撫でる。


「・・・セリカくんはずるいです」


何がどうズルいというのか。


「そうやって、キュンキュンすることを言って、私を篭絡(ろうらく)しよとしていますね!」


「いや、そんなつもりは」


「そうはいきませんよ!なぜなら、とっくに篭絡されているからです!」


なんかちょっとズレてるんだよな。

でも、そこが可愛いところでもある。


(なでなで)


「無言!?無言で頭を撫でましたね!」


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