27_美少女が作る夕ご飯

夕方のいい時間になってきた。

さくらのファッションショーを見ていたら、時間が思ったより過ぎていた。

至福の時間だった。

私服だけに。


眼福だった。

服だけに。


「セリカくん、そろそろお夕飯の準備を始めますね」


バカなことを考えているうちに、さくらが今日買ってきたばかりのエプロンを身に着ける。


真新しい服に、真新しいエプロンは、新妻感を醸し出していて、実によろしい感じだった。


「ホントにお夕飯、ハンバーグでよかったですか?お昼もハンバーグ定食だったのに・・・」


「うん、ファミレスのも悪くなかったけど、さくらのハンバーグが食べてみたくなって・・・」


「え?さくらを食べてみたくなった?」


上着をめくって、肩を出しながら近づいてくるさくら。


(スパーン)「あふーん♪」


「お前は、エロ親父か」


「さくらはピチピチのJKですよ!?」


「JKが自分のことを『ピチピチ』とか『JK』とか言うか!」


「セリカくんは、どんな女の子だったら、凌辱してみたいと思うんですか?」


「なぜ俺が、凌辱したい前提何だよ」


「私はセリカくんに、一生残る傷を負わされたいです。そして、その傷を一生背負っていくんだなぁと思っていたい・・・」

(スパーン)「あふーん♪」


「猟奇的すぎる!」


「セリカくんが望むなら、さくらは少しずつ食べられてもいいです。セリカくんの血となり、肉となり・・・セリカくんを構成する一部になっていく・・・ああ・・・」


(スパーン)「あふーん♪」


「理解できる人がいないような悦に入るんじゃない!」


「でも、お料理も私が作るものがセリカくんの栄養になって、血となり肉となると思うと・・・ハアハア・・・幸せで・・・ハアハア・・・」


(スパーン)「あふん♪」


完璧な美少女には『表モード』と、残念な『裏モード』があった。

まあ、『裏モード』があった方が、親近感があって好きかな。


『表モード』だけの場合、完璧美少女なのだろうが、俺には少し近寄りがたいかもしれない。


「もう、つれないなぁ。おいしいごはんを作って、セリカくんの胃袋を掴む!」


さくらが力強くこぶしを上げた。

それは、本人には宣言しない方が良いやつでは・・・


1時間ほど、スマホでゲームをしたり、料理中のさくらと話したりしていたら、ハンバーグが出てきた。


せめて料理を運ぶくらいは手伝おう。


「「いただきます」」


「じー」


口で『じー』って言ってこっちを見ちゃってるし。

ちょっと気になっていたのは、焼いているときに肉汁があんまり出ていなかったことだ。

テレビなんかのハンバーグ特集では、焼くときに肉汁が大量に出ていた。


一口大に切り分けたが、切っても肉汁はあんまりでない。

まあ、そんなもんだよね。

さくらは和食が得意だと言っていたので、洋食は程々かもな。


見た目は100点なので、総合的にも高評価のハンバーグということだろう。


そんなことを考えながら1口食べて驚いた。


うまい!

旨味の元である肉汁は口の中で大量にあふれ出した。


「え?これどういうこと!?肉汁が凄いけど!」


「あ、分かりました?それは、私オリジナルです」


「焼いている時肉汁なんてほとんど出てなかったけど・・・」


「そうですね。肉汁はおいしさの元なので、焼いているときに出てしまったら、焼き上がりはパサパサになっちゃうんです」


なるほど。

道理が通っている。


「ちょっとした工夫で肉汁を逃がさないようにすれば、すごくジューシーなハンバーグになりま~す♪秘密は小麦粉と、ゼラチンなんですがぁ・・・」


「すごいな。それにしたって、うまい!」


「牛脂はスーパーにタダで置いてましたから、和牛の良い牛脂を使ってます。脂身の味は和牛と一緒です♪」


なんだか色々な工夫がされているようだ。

表面は肉っぽさがあって、食べ応えがある。

焼き目も綺麗についていて、見た目にもきれい。


さらに、ジューシーだし、油が甘い。

理想のハンバーグの完成形を味わった気がした。


昼間のファミレスのハンバーグも悪くなかったが、言ってみれば普通。

さくらの作ったハンバーグは、お店の味よりおいしいって・・・


「店を出せるよ、これ!」


「お店には出せません」


「え?なんで?こんなにおいしいのに」


「セリカくんのために作ると思うから愛情込めて作れるんですが、知らない人にそこまでできる気が全くしません」


プイと横を向いてしまった。

俺だけの特別ハンバーグだったようだ。

そりゃあ、おいしいはずだ。


「これ、お世辞抜きでおいしいよ!」


「ありがとうございます。作ってよかったです」


しおらしく照れまくるさくら。


「毎日でも食べたい」


「吝(やぶさ)かではないのですが、セリカくんにはもっと色々食べてもらいたい料理がたくさんあります。でも、また作りますね」


うーん、これクラスとか、それ以上がたくさんあるとなると、俺は1日に何食でも食べられそうだ。


「すぐにお嫁さんにしたくなりましたか?」


「なった・・・」


「え?」


真っ赤になるさくら。

攻撃力はあるけれど、防御力はめちゃくちゃ低いみたいだ。


このハンバーグが食べられるのならば、それだけでいいお嫁さんだと言えるほどにおいしかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る