25_美少女の呼び名

家に帰って、食料を冷蔵庫に仕舞ったら、堀園さんがコーヒーを淹れてくれた。

小休止(きゅうけい)だ。


「ありがとう」


「いえ」


キッチンのテーブルにコーヒーカップを置いてくれる。

俺はいつもコーヒーに牛乳をちょっとだけ入れるので、ミルクも砂糖も必要ない。


堀園さんが出してくれたコーヒーは、既に牛乳が入っているので、既に俺好みに仕上がっている。


「堀園さんはすごいな」


「それです!」


堀園さんが、キッチンからビシリと俺を指さした。


「私のことは『さくら』とお呼びください!」


「でも、久しぶりに会ったんだし・・・」


ずず・・・とコーヒーを飲みながら答える俺。


「私たちは許嫁です!未来の夫婦です!セリカくんは未来の旦那様です!『さくら』と呼ぶのが自然です!」


「でもなぁ、女の子を名前呼びする環境になかったから、抵抗あるなぁ」


「〽きっさまっとおれーとーはーどーきの・・・はいっ!」


「さくらー?あ・・・」


「はい!さくらです」


選曲が渋すぎる。

堀園さんいくつだよ。


座っている俺の後ろに来て、首に抱き着く堀園さん。


「さ・く・らが着ましたよ」


「ほ・り・ぞ・の・さん」


「さくらと呼んでくれないと、キスしてしまいますよ」


俺の顔のすぐ右側で顔を近づけてくる堀園さん。


「照れて呼びないよ」


「じゃあ、私のお願いを1つ叶えてくれたら、『堀園さん』で我慢します」


「言ってみて」


「私がフローリングに仰向けで寝ますので、セリカくんは、私のお腹の柔らかいところに体重をかけて踏んでみてください」


それだと堀園さんの『具』が出ちゃうよ・・・


「グッと行っていただけると・・・ハアハア」


(スパーン)「あふん♪」


「じゃあ、お腹はやめて、体重もそこそこで、顔を踏んでいただければ・・・ハアハア」


(スパーン)「あふん♪」


「一回やってみたら、病みつきになるかもしれないじゃないですか!」


「そんなもの、病みつきになってたまるか」


「では、間を取って『さくら』と呼ぶことで手を打ちましょう」


「どことどこの間を取ったらそうなった!?」


「どうしても、ダメですかぁ?」


「分かったよ。さくら。これでいいだろ?」


(ぶるぶるぶるぶる)


堀園さんが、自分の腕を抱いて湧き上がる何かを押さえている。


「せ、セリカくん、もう一度!もう一度お願いします!」


「さくら」


「ああ・・・」


堀園さんが大きくのけぞる。


「もう一回!」


「さくら」


「あう・・・」


床をのた打ち回っている。

こんな美少女を他で見たことがない。


やっぱり『残念美少女』だった。


「セリカくん、私ちょっとトイレに籠りますので、覗かないでください。いや、覗いてください」


スタスタとトイレに向かう堀園さん・・・改めさくら。

とりあえず、とどめのチョップでツッコんでいくか。


(スパーン)「あふーん♪」


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