24_美少女とデート(帰路編)

食事もしたし、買い物もした。

後は帰るだけとなったが、ここに来て問題発生だ。


買い物の時は、カートにかごを乗せて買いたいものをピックアップしていったので、全然重たくなかった。

会計が終わって、ビニールに入れた時点で思ったのだ。


『これは多すぎる』と。


服は大きな紙袋2つ。

これはたいして重くないが、かさばる。


スーパーのがさがさ袋は大きいものばかりで4つ。

こいつがやたらと重い。


1個ずつならまだいいが、4個も持ったら、指にビニールが食い込むレベルに重い。

なぜこんなに買い込んだ!?

普段買い物をしない俺のスキル不足と言えよう。


堀園さんは絶対荷物を持つと言い出すだろう。

彼女の細い指にスーパーのがさがさ袋が食い込むのは、なんか嫌だ。


「堀園さん、帰りはタクシーにしよう」


「そんな贅沢していいのでしょうか?」


「タクシーなら家までそんなに遠くないし、バイト代がもう少しある。次から節約しよう」


「確かに、この量は2人で持っても多すぎましたね」


タクシー乗り場まではカートもあるし、何とかなる。

贅沢にタクシーで帰ることにした。


「ふいー、タクシーは楽ちんらくちん」


俺が後部座席のシートに体重を預けていると、堀園さんが俺の手の上に手をのせてきた。


「タクシー、私のためだったんじゃないですか?」


「いや!俺は普段からタクシーを使い慣れてるから!」


「ふふ・・・そう言うことにしておきます。ありがとうございます」


きっと俺は顔が真っ赤だっただろう。

嘘もバレていたかもしれない。


それはそれでいいのだ。


「今日はいっぱい買い物に付き合ってくれて、ありがとうございました」


「まあ・・・俺も・・・楽しかったし」


「良いデートでしたね」


「え?これってデートだったの?」


「ペットショップに行って、雑貨屋さんに行って、お洋服を買って、スーパーに行って・・・これがデートでなければ、何がデートかって程です」


「マジか、初デートはとんでもない美少女と行ってしまったのか、俺・・・」


次回のデートがあるとしたら、その子が堀園さん以上の子とは思えない。

俺はもう一生、デートを楽しめない身体になってしまったのでは・・・


「また連れて行ってくださいね」


堀園さんが、俺の手を持って、手の甲にキスをした。


なにこれ?

俺達付き合ってるみたいになってない!?


「堀園さん・・・」


「あ、それです!」


「え?どれ!?」


「今日一日一緒に過ごして思ったんです」


なに?お前ってクズだな的な?

それとも、雑魚だな的な?


「私のことは『さくら』って呼んでください!」


堀園さんが片頬を膨らせて不満を言う。

俺と堀園さんが出会ったのは(再開したのは?)まだ昨日の話だ。


昔は一緒に遊んだというが、それは俺たちがまだ10歳の頃。

既に俺にはその頃の記憶があいまいだし。


出会った日の夜には一緒のベッドで寝ていたし(何もしてないけど!)、一緒にご飯も食べた。

そして、今日デートをしてしまった。

いくら何でも距離を詰めるのが早すぎる。

それで、『さくら』なんて下の名前で呼べるはずがない。


「いや~、それはさすがに・・・」


「さ・く・ら」


「え~」


「お客さん、着きましたよ」


「ありがとうございます」


「うまく逃げましたね」


俺は、逃げるようにタクシーを降りて、大量の荷物を玄関に運び込むのだった。


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