23_美少女とデート(ランチ編)

気付けばもう3時近い。

起きたのが遅かったから朝食も遅めだった。

堀園さんは、家事をしてくれていたから、出かけるのも昼近かったし、気付けばこんな時間だったのだ。


「お腹すかない?」


「そう言われれば・・・」


「楽しくて忘れてました」


また嬉しい事を無意識に言ってくれる。


「何か食べようか」


「そうですね。今から買い物していたら、食べられるまでに夕方になってしまいますね」


そういえば、昨日買った食材は殆ど食べてしまったのだった。

元々そんなに買ってないし。


「堀園さん、何か食べたいものある?」


「そうですねぇ、これまであんまり外食してこなかったので、何がいいのか・・・」


「そっか。見て回って気に入ったやつを食べよう」


「わあ!それいいですね!」


堀園さんと歩いていると、食べ物屋を探すだけでも楽しいな。

まるでデートみたいだ。


俺もいつか彼女ができたら、デートをするんだろうか。

その時は、その彼女を楽しませることができるのか・・・


堀園さんが選んだのは、洋食レストランだった。

今までおばあちゃんと暮らしていたので、洋食率が低かったらしい。

だから、出しているメニューがすごく気になるのだとか。


俺は正直、何でもよかった。

抗うことなく、同意した。


「グラタン久しぶりです♪」


堀園さんがご機嫌で言う。 


「そんなに珍しい?」


「はい、家だとグラタンを焼くのができなくて。トースターだと1個ずつになっちゃって、一人ずつしか出せないんです」


「あー、なるほど。」


「オーブンとかは、なかったので」


「そっか」


うちには全く使ってないけど、オーブンがある。

堀園さんなら使いこなしてくれそうだ。


10分ほどで俺が頼んだハンバーグ定食も、堀園さんが注文したグラタンセットも出てきた。

ちなみに、グラタンセットは、グラタンとパン食べ放題という内容になっている。


堀園さんはフォークを持ったまま、手を合わせて小さい声で『いただきます』と言ってから食べ始めた。

どこで習うの?

この可愛い仕草は!


一口目を口に運んだところで『あつっ』っと言って、慌ててふーふーしていた。

ああ、ニヨニヨが止まらねぇ。

美少女の可愛い仕草は1日見ていても飽きないだろう。


「あ、慌てて食べて意地汚いとか思ってますね!」


「そんなことないよ。仕草が可愛いなぁと思って見てた」


「も、もう!そんなお世辞を言っても、何も出ませんからね!」


ぷいっと横を向いて拗ねてしまった。


「ふふ・・・」


「セリカくんなら、グラタンくらいはあげてもいいです」


チラ見でこちらを見ている。

グラタンセットのグラタンはメインじゃないですか!


それをくれてしまうって、どんだけ心が広いんだよ、堀園さん。


友達に6個入りのピノのうち1個くれるやつはいるが、『いいやつ』だと思っている。

その上に、パピコを1個とか、雪見だいふくを1個くれるやつは『すごくいいやつ』というのがある。


堀園さんは、グラタンセットのグラタンをくれようとしていたので、さらにその上の『女神』認定だ。


「あ、おいしい♪」


本当においしそうに食べるなぁ。

ついつい見とれてしまいそうになるが、見られていたら堀園さんも食べにくくなってしまうだろう。


俺も自分のハンバーグ定食に取り掛かることにする。

うん、うまい。


ファミレスだし、まあ、こんなものか。


「ねぇ、セリカくん、一口交換しませんか?」


「え?いいけど?」


「えへへ、ハンバーグも味をみたくて」


どうぞ、とハンバーグの鉄板を堀さんの方に近づける。


「えー!?そこは、『あーん』じゃないんですか!?」


「堀園さんみたいな可愛い子に、『あーん』ができるなら、俺はもっとモテてるよ」


「あれ?セリカくんモテないんですか?」


「残念ながらね」


俺はサッパリというジェスチャーをした。


「そっか、モテないのか」


堀園さんは何故か、にこにこしながらハンバーグを一口持って行った。


その後、グラタンをフォークで一口『あーん』されてしまったのだが、結局食べることが出来なかった。

世のバカップルのポテンシャルの高さを思い知らされたのだった。

俺には人前でそんなことはとてもできそうもない。


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