21_美少女とデート(雑貨屋編)

ショッピングモールの1階は雑貨屋が多い。

洋服や屋に到達する前に雑貨屋があってしまった。


普段の俺ならば完全に素通りだったろう。

ただ、今日は堀園さんが一緒にいる。


堀園さんは俺の家で暮らすことになったのだが、持ち物がほとんどない。

皿なんかはうちにあるので特に困らない。

だけど、箸やブラシ、歯ブラシなどは自分用が必要だろう。


そして、ここに雑貨屋がある。

堀園さんが興味を持たない訳がないのだ。


手をつないで歩いていても、目が雑貨屋を見ている。

まあ、時間はたっぷりあるんだ。


もう一個くらい寄り道しても問題ないだろう。

雑貨屋で堀園さんが見ている間、単に俺が退屈なだけだ。


「堀園さん、雑貨屋にも寄っていく?」


「い、いいんですか?」


「お箸とか買わないとね」


「はいっ!」


そもそも『雑貨』とは何なのか。

分類がないから『雑貨』なのだろう。


置き時計があると思ったら、コーヒーメーカーがあったり、熱で油の気泡が液体の中をぐねぐねうごく何かがあったり、まとまりがない。

普段の俺ならまず来ない。

まず見ない。

まず買わない。


例えば、コーヒーメーカーが欲しいと思ったら、ネット通販で買うだろう。

『油うねうね』は欲しいとも思わない。


ところが、堀園さんと一緒に雑貨屋にいると、すごく楽しいのだ。

何でこんなに楽しいのだろう。


誰向けの、いつ使うか分からない狐のお面は、堀園さんが被って、『ばあっ』と笑顔を出すだけで、『とても良いもの』に成り上がる。


何、この可愛いものは、絶対買った方が良い。


『ひろし』とか『ゆみこ』とか、ひらがなで名前の書かれた箸は、世の中に不要なものだとすら思っていたのに、堀園さんと『セリカ』と『さくら』を探してしまった。

『さくら』のお箸は買った方がいいよね。


熟したトマトすらもよく切れるという包丁は、堀園さんの料理に磨きをかけるだろうし、すぐに真っ黒になってしまうシルバーの指輪は、堀園さんとペアリングを想像してニマニマしてしまった。


雑貨屋たのしいな。


「あれ?買わないの?」


「はい、どれも可愛いのですが、日常使いするには可愛すぎて・・・」


堀園さんは意外に堅実だった。

俺に任せていたら、この時点でかごはいっぱいになっていただろう。


そんな中、堀園さんが見ている小物があった。

何?何?プレゼントしようかな?


堀園さんが見ていたもの、それはピアスだった。


『18K』と書かれているものの、高校生のお小遣いでも十分買える程度の金額だった。


ただ、イヤリングではなく、ピアスなのだ。


「堀園さん、ピアスの穴開けてるの?」


「いえ・・・でも、これ・・・」


ピアッサー・・・要するに、ピアスを開ける道具。

中に強めのばねが入っていて、耳に固定したら、トリガーを押すだけで針が飛び出し、耳に穴を開ける道具。


うわー、無いわー。

絶対痛いし・・・


「せ、セリカくん・・・わたっ、私にピアスの穴、開けてくれないかなぁ」


息が荒い堀園さん。


(スパン)「あふん♪」


「おしゃれが悪いとは思わないけど、思い付きで身体に傷を入れないように」


「セリカくんがやってくれるなら、私、痛くても頑張れると思うの!痛いのは最初だけって聞くし」


そういうつもりがあってか、なかってか、変な感じになってきた。


「本当に欲しい時は、俺がプレゼントするから、今日のところはまたにしよう」


「ホント!?ほんとですか!?セリカくんがプレゼントしてくれるの!?」


なんか、ピアスの針と血の話をしていたら、手の力が抜けてきた・・・

苦手なんだよ俺。


堀園さんは、その後もにこにこしていたけれど、ピアス平気なのかなぁ。



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