第19話

 一年後。


「もう受験シーズン?一年って早いのね」


 先生がカフェラテを飲む。


「どこの高校に行くの?」


「近くの○○高校に行こうと思ってて…」


「ふーん…いいの?もっと遠くの楽しそうな学校じゃなくて」


「うん…だって…」


 私は、声が小さくなった。


「ここなら、先生にもすぐ会えますし…」


 先生は、優しく笑った。


「優しい子ね。ありがとう」


 私は、顔を隠すようにして、カフェラテを飲んだ。


 私、絶対、今顔を赤らめているから…




 病院を後にして、ある霊園にいった。


「夏花ちゃん、元気ですか?」


 花を添える。


「会いたいです…」


 涙がこぼれ、風が吹いて、顔が冷たくなった。


「また来るね」


 私は、歩き出す。


 彼女は…あのような悪夢を見て、あの化け物に捕まってしまったのだろう。


 私は、彼女のために何がしてあげられるだろうか。


 先生は、怖い思いをしていた私を助けてくれた。


 私も先生のようになれば、彼女や同じ病気にかかった患者さんを助けられる…かな…


 何もできないかもしれないけど、努力はしたい。


 そんなこと考えながら、私は家へ帰る。


 吐き出した息は白く、ふわふわと空へ舞い上った。

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