第18話

 ―ねぇ、起きて。起きてくれないと困るの。


 ―加奈ちゃん?


 そんな声が聞こえた。


 目を開けると、視界の端に蛍光灯が見えた。


「おはよ」


 私の横には、先生がいた。


 ここは、先生の部屋。


 病院にある、あの小さな部屋。


 部屋には、私と先生、二人っきりだった。


 誰も見守ってはいない。


 お母さんすらもいない。


 でも、何十人もの人に見られている中、起きるよりかは気が楽だった。


 …先生は、私のことをよく知っていたんだな。


 そんな風に思う。


「…先生」


 先生は、私の手を取ってくれた。


「良かった。加奈ちゃん、君が初めて治療に成功した患者さんだよ」


「…うん」


「私、ちゃんと助け出したでしょ?」


 先生がにっこりと笑った。


「…うん」


 先生は、私の様子を見て、色々察してくれたらしい。


「大変だったね。今日は、ゆっくり休もうか」


「…うん」


 私たちは、無事生還した。


 この悪夢も幕を閉じた。


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