第14話

 声のした方を向くと、一人の女性が私に駆け寄ってきた。


 眼鏡をかけた茶髪の女性…あの写真に写っていた「先生」だ。


「…はぁ、随分探したわよ。さぁ、帰りましょう」


 先生は、そう声をかけた。


「え…えっと…」


 上手く話せない。


「あ、あなたは…」


 呂律が回らない。


 先生は、私の顔を覗き込んだ。


「これは、重傷ね。まぁ、致命傷にならないだけ良かった…けど…」


「うーん…記憶喪失?まぁ、説明はあと。ほら、早く帰りましょ」


 先生は、私の手を取った。


 先生が走り出した。


 建物の外階段を上って、建物の中に入る。


 ぼろぼろになった廊下を走って、先生はある部屋のドアノブに手をかける。


「…これは…」


 部屋の真ん中に大きな光がある。


「帰り道が分かるように示しておいてくれたんだ。さ、さっさと帰ろう」


 先生は、私の手を引いた。


 私は、先生と共に光の中に入って行った。


 光の中は、眩しくて、暖かかった。

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