第10話

 建物に着き、螺旋階段を何段も何段も上った。


 化け物もぞろぞろと階段を上る…が、大勢で上ろうとして、一気に崩れ落ちた。


 液体は、階段を上ることなんてできない。


 階段に集まった液体は、一気に広がっていった。


 私は、もう無いはずの体力を使って、階段を駆け上がった。


「…はぁ…はぁ…」


 息を切らしながら前を見る。


 気付けば、もう屋上だった。


 螺旋階段の下を覗く。


 化け物は、まだ上ってこない。


 屋上で一息つき、すぐ隣にある建物の屋上に飛び移った。


 …と


「えっ!」


 屋上からの景色を見て、私は声を上げた。


 建物がボロボロになっている。


 そして、液体が…


 液体がたまってきている。


 もしかしたら、本当に街は沈むかもしれない。


 …どうしよう。


 まだ、現実世界に帰る方法も見つかっていないのに…


 いつか、私の居る建物も崩れるかもしれない。


 …そう思っていると、キシキシ…と音が聞こえてきた。


 隣の建物にひびが入り始めた。


 ここも崩れる…!


 そう思ったとき、ガラガラ…と音がして…


「きゃあ…!」


 私は、建物ごと地面に落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る