第11話

「痛く…ない…?」


 瓦礫の上に横たわった私の体は、無事だった。


 怪我一つない。


「あ…」


 液体が瓦礫に集まる。


 このままじゃ…


「マンホール…」


 そうだ。マンホールを何とか開ければ、液体がたまることが無いはずだ。


 でも、もう地面は、液体に覆われている。


 開けるには、この液体に足を入れないと…


 でも…もうやるしかない!


 この液体が何なのか知らないけど、街が沈んでしまえば、逃げ場は無くなる。


 高い建物に逃げれたとしても、その建物が崩れてしまえば、あの液体に溺れてしまうだろう。


 だから、あまりたまっていない今のうちに…!


 私は、恐る恐る液体に足を入れた。


 見た目の割にドロドロしていて、足を取られそうになった。


 こんな時に化け物に気付かれたら…。


 早くしなきゃ。


 確か、この通りは、すぐ近くに…


 手に凸凹の何かが触れた。


 マンホールの蓋だろう。


 くぼみに指をいれて…


「…ううっ…」


 液体がのしかかっている。


 ただでさえ重いのに…液体が開けるのを拒んでいるようだ。


 そうしている間にも、液体はたまり続け、ついに膝上まで来た。


 焦った私は、力任せにマンホールの蓋を持ち上げた。


 ガポッという音がした。


「…開いたっ!」


 瓦礫の上に蓋を置くつもりが、力が有り余って、投げてしまった。


 近くにあった建物に当たった。


 すると、ぶつかったところから液体がこぼれだした。


 でも、液体は、マンホールの中にするする入っていった。

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