第3話

「…あった!」


 小さな洋服店の角を曲がると、瓦が剥がれ落ちた家があった。


 私の暮らしていた家とは、似ても似つかないくらいぼろぼろだ。


 でも、この場所、庭に置いてある自転車、大きな犬小屋…


 間違いない、私の家だ。


 表札がかすれでいる。『植田』と書かれているはずだ。


 …入ってみよう。


 この世界に私の家があるのは、何か理由があるはず。


 もしかしたら、私の家から現実の世界に帰れるかもしれない。


 玄関のドアに手をかける。


「ただいまー…」


 無意識に言った。


 私は、家の中に入っていた。

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