第4話 夜叉月草紙

時は臘月ろうげつ、歳の終わり

北風に揺れる乾涸らびた柏葉がろうがはしい。

おこりの熱で怠い身体を布団に横たえ目をつむる。

病み憑き弱る私の心根は、夜叉の君を呼ぶ。


時は子刻ねのこく、今日の終わり

目覚めるためには眠らなければと君は言う。

花蕊はなしべまつげの瞬きに、朔月さくげつの夜が潜んでいる。

死と眠りは近しい、まるで兄弟のようにね。


時は満ちたり、黄泉よみきざはし

とろうかとらまいか、君は低く淋しく唄う。

死と眠り、おまえに似合いはどちらだろう。

病に熱く弱く脈打つ喉元に触れる氷の指先。


時は過ぎゆき、霜柱の朝

夜叉の君は根の国に、私はまたも残された。

男に成り切らぬ首筋に薬の代わりの一刺し。

紅滴とともに私の死病を吸い取ったものか。


亡き兄よ、何故連れてはくれぬのだ。

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