第18話 やるしかない
僕は昼休みになると、ダッシュで生徒会長室に駆け込んだ。
「葵さん。知ってて黙ってましたね?」
「ここでは会長って呼びなさいって言ってるわよね」
「会長。知ってて黙ってましたね?」
「失恋に一番効くのは、新しい恋なのよ」
「僕を騙したんですか?」
「それは違うわ。桜田君が勝手に勘違いしたのをそのままにしてただけ」
そっか。
悪いのは僕か。
「真央って小さい頃からほんっとに可愛くて、あのオドオドした性格で、しかもゲームとか男の子が好きそうなものが好きでしょ? 『俺にもオトせんじゃね?』って言う感じの馬鹿が一杯近づいてくるのよ。だからバイト先の店長に「ちゃん」づけで呼ぶのを止めさせたし、制服も男物を着させるように言ったわ。家族以外との外出も禁止したし、髪も出来る限り短くさせて、一人称も「ボク」って呼ぶように強制させた。でも、それでも告白してくる馬鹿ってなんなの? 馬鹿なの?」
「馬鹿馬鹿言いすぎだと思います」
「それより聞いたわよ。満天の星空の下、真央に優しくジャケットをかけ「僕がずっと一緒にいてあげる。君の希望の光になるよ」って言ったんでしょ?」
「い、言ってません」
「真央の脳内ではそう変換されたみたいよ」
「そんな……」
「真央はもう、桜田君しか見えてないわよ。今朝からずっと君の話ばっかり」
「ど、どうしたらいいんでしょうか?」
「断ればいいでしょ。そしたら真央は、心の支えをボッキリ折られることになるけどね」
「え、でも。葵さんが支えてくれるって話じゃ?」
「桜田君も知ってるわよね。支えがいくつあったとしても、心の傷は消えない。心の傷が2つに増えたら、もう取り返しがつかないかもしれない」
「……」
「別に真央と付き合え、結婚しろって言ってるわけじゃないのよ。真央が付き合いたいって言ったら適当にあしらえばいいの。ただ、悲しませたら全殺しだけど」
正治さんへの容赦ない正拳突きを思い出した。
「……僕に出来るでしょうか」
「出来る。出来ないじゃないのよ桜田君。やるの」
「……」
「さ、そろそろ行かないとお昼ごはん食べそびれるわよ。私も君も」
キツネにつままれたような気分で、僕は生徒会長室を出た。
その時スマホがブルっと震えて、IMのメッセージが届いた。
【天満梨花:ごめんなさい! どうしても急ぎの用件があって連絡しました!!】
天満さんだった。
【天満梨花:こんな事、他の誰にも頼めなくて!!】
【天満梨花:急なお願いで本当に申し訳ないです!!】
【天満梨花:詳しくは後でお伝えしますので】
【天満梨花:どうかお願いします!!】
【天満梨花:少しの間、私の彼氏のふりをして貰えないでしょうか?】
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これにてBSS事件終幕です。
読み直しになった方には本当に申し訳ありませんでした。
次回からは新章になります。
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