伝う涙と安心

 「あの子が私よりも、自分の命よりも大事なんでしょ。だからあんな事出来たんだよ」


 ベットに向かって言われる言葉は、重厚感あり今の全ての感情を集めたような言い方だった。その姿は丸まって小さい体が、もっと小さくなっていくように感じる。


 そんなふうに思い詰めて発した言葉に、僕は何も答えられなかった。何が正解で何が不正解か、夏希にとってどう言って欲しいのか、全く分からなかったから。


 「ねぇ!そうなんでしょ!何か言ってよ!」


 何も答えない僕に対して感情が爆発し、夏希は背中合わせだったのを辞めて振り返った。そして僕の太ももに乗って、押し倒し覆いかぶさってくる。


 「否定くらい、してよ」


 ぽたぽたと落ちる雫は頬を伝い、僕の顔に落ちてベットに流れていく。口に落ちた涙はしょっぱくなく少し甘みを感じた。


 「ごめん」

 「何が」

 「そこまで考えてなかった。それに自分が危ない状況だとも知らなかった。助けないとって思ったらああなっちゃって、正直夏希の事も邪魔しないでくれって、話を聞こうともしなかったんだ。だからごめん」


 夏希の顔を見ていると、納得させる為の言い訳なんて要らず、何も繕わなくても良い気がしてあの時の事をそのまま伝えた。

 そして何となく、決壊して止まらない涙でぐしゃぐしゃの目の前にある顔を手で拭う。

 すると夏希は驚いた顔をしたが少し笑みが生まれ、僕の手をくすぐったそうにしている。


 涙は止まったが、高まった熱がすぐに引く訳もなく、顔から耳まで真っ赤に染まり続けている。

 夏希はまた口篭り、何かを伝えようとしているがなかなか出ず、結局諦めたらしく言うのを辞めた。そして赤く綺麗な目が僕を見つめる。


 何がしたいのだろうかと見つめ返していると、顔が少しずつ近付いてくる。そのまま止まる事無くひたい同士がコツンとぶつかり、鼻が触れ合った。


 「それを早く言いなさいよ、バカ。こっちはどれだけ・・・」


 暖かい吐息がかかる程の距離でボソボソと話す夏希の表情は見えないが、言葉の発し方から怒っている様子は感じなかった。

 どうしてあんな風に怒っていたか分からないが、何はともあれ落ち着いてくれて良かった。


 背中を撫でてやると、正座の状態で跨いでいた足を真っ直ぐに伸ばし、僕の体の上へ力を全て委ねてくる。

 体に子供一人分の重みが乗り、リンが胸の上で寝いてた時と同じように、固定される感覚がありとても落ち着く。


 肩の上にある夏希の顔は目を瞑り、怒りや涙で疲れすっかり眠ってしまったようだった。少し前までの辛そうな顔ではなく、安心していて幸せそうで心のけがれが浄化されていく気がする。


 そのままの状態で謝罪の意味も込めて、起きるまでそっとしておいた。

 たまに頭や背中を撫でてやると、ふにゃっと笑いただひたすらに可愛かった。

 ずっとこの幸せを守ってあげたい。



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 最近の細かく区切る書き方と、そこそこ文を纏めた書き方どっちが見やすいですか?

教えて貰えると嬉しいです。


 二話 転生特典は「愛情」と「美食」でおねがいします 修正しました。気になる方は読んでみてください。大きく変更はしていません。


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