ツンデレ夏希ちゃんは可愛くしか見えない
職員室から特進クラスの教室まで普通の人が走ると、大体三分はかかる距離にある。その距離をお姫様抱っこで走り、二十秒くらいで到着出来た。時計は最終ラインの一分半前を刻んでいる。
これならばもう少しゆっくり出発しても良かったな。
「ハルト君早すぎ!楽しかった!」
見た目とは裏腹に、美雪先生はスピードに恐怖心が薄く楽しんでいたらしい。顔を確認して見ると、白くなっておらず満面の笑みを浮かべていた。意外にもジェットコースターとかも楽しめるタイプだ。
僕は身長制限でジェットコースター乗った事無いから面白さが分からないけど。
「それは良かった。じゃあ入ろうか」
「はーい!」
どっちが子供か分からない可愛い返事を聞き教室の扉を開くと、赤髪でツインテールの女の子が腕を組んで怒っていた。
「遅い!」
目の前にはすごく見覚えのある光景が広がっていた。だがあの時と違ってピリピリとした雰囲気ではなく、和気あいあいと近くの席同士で教え合っている姿が見える。
「まだ遅刻じゃないだろ。カリカリすんなよ夏希」
「そうだけどそうじゃないの!ハルトが幼稚園に来てるのに、顔出さない、から、心配、したのよ」
最初は怒鳴り声のような大きな声だったが、後半に続くにつれ段々と声が小さくなり、最後は聞き取れない程の細い声になっていた。
「心配してくれてありがとう」
僕は感謝を告げて夏希撫でると、大人しく頭を突き出してきて、猫が飼い主に撫でられ待ちをしている時とそっくりで可愛かった。
「そんな訳無いでしょ!心配なんてしてないんだから!」
「いやどっちやねん」
左手で頭を撫で回す掌を払い、夏希は空いている席へ歩いていく。その時の指にはプレゼントした指輪が
それを見て嬉しくなり、早歩きの夏希に追い付き質問する。
すると想定外の返答が帰ってきた。
「指輪嫌だったんじゃないの?」
「別に嫌じゃないわよ」
「でも微妙そうな顔してたじゃん」
「いや、それは何というか、タイミングが急だったから驚いただけで、嬉しかった、よ」
大切そうに指輪を右手で包み込んでおり、気を使ったのかもしれないが、本当に喜んでいるように見えたのであげた側として嬉しかった。
「そっか。ありがとう」
「なんでハルトが言うのよ」
「嬉しかったから」
「そう」
夏希は三席の最後列にある、空席の右端に座り込みその横に僕は腰を下ろした。
「何で横に座るのよ」
「良いじゃん?二人の仲だろ」
「あっそ」
「冷たいなー」
初めて会った時なら絶対にイラついて、受け流す事なんて出来なかっただろう。今では笑っているがそれは夏希が良い子で、ただのツンデレちゃんだと知っているからだ。
だからもう夏希の塩対応で不機嫌になる事はない。
「ねぇ夏希、今日うち来る?」
席に座ってそうそう無駄話を始めた。
帰宅後美雪先生とまいん先生の来るので、友達枠が欲しく呼んだのだ。だが残念な事に断れてしまった。
「行かない。お母さんのリハビリが見るから」
夏希のお母さんは事故の為ずっと寝たっきりで筋肉が衰え、今はリハビリだと昨日説明されていた。そして数日と決めている、リハビリを見に行く日が今日だったらしい。
それならば無理には誘えないな。家族が一番大事だ。
「それじゃ仕方ない。また呼ぶわ」
「ありがとう」
「あっ!そういえばさ」
夏希からリハビリの話を聞いた時、ふと思った事が一つあったのを思い出した。
「何?」
「筋肉の衰えって回復魔法のキュアで治せないのかな?」
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二話 転生特典は「愛情」と「美食」でおねがいします 修正しました。気になる方は読んでみてください。大きく変更はしていません。
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