半同棲カップル

 メッセージを打ち込みながら相手を目視せず話し、付き合いの長いカップルのような行動にに内心幸福を感じ一生続けば良いのにと思った。


 横を向くと美雪先生は僕の顔を見ており、何となく見つめ合い二人の世界に入る。そしてふと現実に戻ると恥ずかしくなって同時に顔を逸らし、美雪先生は書類を僕はお菓子に集中した。二人の間には暖かな空間が広がり、周りの目なんて全く気にならなかった。


 「何その会話。半同棲でもしてるんですか?」


 そんな良かった空間を土足で踏みにじり、声をかけた不届き者が現れる。正しくは現れたではなく、元々居たのに無視されて勝手に空間を作られたが正解だろう。


 「そんな訳ないじゃないですか!ハルト君の家族に良くしてもらってるんです!昔の事もあって・・・」


 二人の会話を聞いていた周りの先生は、怖い疑いの目からなるほどと口々にし、穏やかな眼差しに変わった。

 美雪先生がロリコンだと思われ児童に手を出した犯罪者から、幼稚園に来る前の辛い過去を支えてくれる人に出会えたのだと、娘への保護者の目線になったのだと思われる。

 そんな中一人ノーテンキな女性は余計な事しか言わない。


 「本当かなー?案外ダンジョンで助けられて好きなったとか?かっこ良かったもんね。あれは惚れる」


 まいん先生はうんうんと首を振り、さも児ポ禁を犯す前提で話をしてくる。身内なら分かるだろう冗談も、事情の知らない人が聞けば危ない会話に変わりない。


 美雪先生はその冗談で済まない事を言われ大激怒した。

 ただその様子は、ほっぺたを膨らまして顔を赤くするだけで怖くなく、可愛くて仕方なかった。先生達もニコニコと笑い焦らず見守っている。

 まいん先生はというと頬が緩み、ほっぺたを触ろうとしており、わざと怒らせたと見て取れた。これは上手に怒れない美雪先生を弄る恒例行事なのだと理解した。

 ただ今回ばかりは神様が見ていたのか、美雪先生はまいん先生へ的確に大ダメージを与える。


 「それはまいんちゃんでしょ!いつも英雄さん英雄さんって!私はハルト君を弟みたいに思ってるの!だからまいんちゃんと違う!」

 「何でそれ言っちゃうのよ!」


 想い人を先生達の前で言われ、恥ずかしい思いをしたまいん先生も一緒に怒り始めてしまった。だが同じく上手に怒れていないまいん先生は、二人で仲良くポカポカと叩きあっており、とても仲良しさんだった。


 美雪先生の児ポ禁容疑が晴れ、丸く収まったように見えるが、愛しい美雪先生に弟と言われ僕は心に大きな傷を負ってしまった。

 皆の前だから仕方なくだよね。

 うん分かってるよ。元々子供に向けて言った冗談だって事は。大きくなったら忘れてるでしょって考えで言ってるの知ってるよ。


 何だか心が締め付けられて苦しいので一眠りしよう。

 職員室の机に合わせた高い椅子から降り、マイ布団に潜ろうと向かうのだが、先生達の人集ひとだまりを作ったダンジョンでの出来事を聞くという本当の目的を忘れており、何も言っていないのでそりゃもちろん解放してもらえなかった。


 「皆さん僕から言える事は特にありません。殆どダンジョン協会から発言を禁止されています。期待に添えることが出来ず申し訳ありません」


 一人一人説明は大変そうだし、大体聞こえる質問はダンジョン協会で公表されているので、全て話す事を禁じらている体で乗り切る事にした。こう言えば誰も聞きに来る事はないだろうから。


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 ハルト君先生と話す時通常はタメ口で、全体は敬語にしています。


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