最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ

 平常心を保ち、何も見ていないふりして乙女なラウに、臭くないとフォローを入れる。色気に惑わされずしっかりと大人な対応を貫き、何とか人間としての尊厳そんげんを守りきることが出来た。ラウはそんな姿を白い目で見ている。


 「もしかしてそういう人ですか?」


 せっかくフォローしてやったのに、違う方で変態扱いかよ!


 「人を変態扱いするんじゃない!僕はノーマルだ」

 「ノーマルな変態さんなのですか」

 「違う!変態から離れろ」


 しばらく変態変態じゃない論争をし、内容以外は子供同士がたわむれているように見える。その様子を、お兄ちゃんとラウの後から来たリンは微笑ましく見守っていた。

 そんなこんなしていると、幼稚園へ向かう時間近くなりお母さんがバタバタと慌て始める。


 「ラウちょっとこっち来い」

 「ヒィィィ!変態に襲われる」

 「誰が襲うか!」


 嫌そうに渋々来ました感を出して近寄ってきたラウに、クリーンで汗を排除し乾燥させ清潔な状態にしてあげる。ベタベタだった髪の毛はサラサラになり、美容室帰りみたいだ。


 「濡れたままだと風邪ひくぞ」

 「・・・うん」


 本当はラウの魔力で作ってある服なので、魔法を使わずとも綺麗に出来たのだがこれはついでだ。


 「買い物行くんだろ。これ持ってけ」


 僕は収納魔法から作り終えたばかりの指輪を取り出し、ラウの手に乗せプレゼントした。


 「もう出来たんだ!」


 昨日の夏希に指輪をあげた時欲しがられ、結局全員分作る事になったので一番需要がありそうな人へ優先的に、食後のティータイムでサクッと作っておいたのだ。

 形や色は夢の中で見た物と全く同じにしてある。変更しようか迷ったが、他に良いイメージが湧かなかったのでそのままにした。


 「出来たてだ。ラウは美意識高いからな。物が多いだろうなと考えて、収納魔法を付与して作ったんだ。これで何も持たず買い物出来るぞ」

 「ありがとう!」


 ラウは嬉しそうに左手の薬指にめ、気持ちの良い笑顔を僕に向けてきた。その笑顔はとても可愛く、初めてダンジョンで出会い体で誘惑していた姿よりも魅力的だった。

 

 「やったー!指輪!指輪!」


 指輪がめられた指を見てはしゃぐラウを横で、羨ましそうだが我慢して見つめるリンはお姉ちゃんのようだった。


 「もう少し待ってくれ。デザイン考え中だ」

 「いつでも良いよ。貰えるだけで嬉しいから」

 

 長い間ずっと一緒に居てくれたパートナーだ。心から言っているのが分かる。リンとの特有の理解し合っている落ち着いた空間がとても心地良い。


 「リン、ラウの面倒頼むな」

 「もちろん。ハルトには迷惑はかけないわ」

 「ありがとう」


 感謝を伝えると急に優しく頭を撫でられた。


 「何だよ?」

 「昔は撫でられてたのに、いつの間にか撫でる側になったなって」

 「確かにあのおっさんが五歳児だからな。驚きだよ」


 過去を振り返ると色々な事があった。

 産まれてすぐに家族から森へ捨てられ、何とか生き延びて沢山の生物を救い、複数体の魔王を倒し、道中ドラゴンを助け弟子を拾ったりと。

 他にもまだまだある。

 最後に残った魔王は倒せなかったが、今こうして家族や一人も居なかった友人と生きている。


 最高に幸せだ。もし叶うのならば前世の世界へ戻り、弟子へ謝罪し過去を懐かしみたいがそこまで欲張りはしない。

 今のままでも充分幸せ。これ以上の高望みはバチが当たってしまいそうだ。


 「ハルトはいつまで経っても私のご主人様よ」

 「ご主人様って懐かしいな。最初は王子様だったから恥ずかしかったんだぞ」

 「あの時は小さかったから、王子様に見えたのよ。ちゃんと主人に呼び方変えたじゃない。名前が無かったハルトが悪いのよ」

 「主人も恥ずかしかったんだからな」


 これからもこの愛おしい家族達と世界を守って生きていこう。

 幸せが無くならないように。

 

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 最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。笑

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